i-dioとNOTTV

無料モニターに応募していたi-dioのwifiチューナーが届いた。携帯電話にアプリをダウンロードして使うのだそうだ。3月に放送開始ということで今は何もできない。普通、本格放送前にベータテストくらいやるものなので、本放送開始がそのままテストになるのだろう。開始一ヶ月前を切ったのにアプリもまだ完成していない。なんとものどかな話である。

CIMG7990i-dioのサービスはそれでも先の失敗に学んでいるらしい。失敗とはNOTTVのことだ。NOTTVはVHFアナログ放送の跡地を独占するためにNTTが始めたサービスだった。外資の参入を怖れた政府がNTTに引き取らせたと言われている。結局、コンテンツプロバイダが表れずにNTTと民法連が作った会社が運用することになった。

しかし、加入者が伸び悩み、累積赤字を貯め込んだ結果潰れてしまったのだ。どんなサービスを後継にするかは全く決まっていないらしい。NOTTVのチューナー入りの携帯電話端末を買った人は何も見られなくなってしまうようだ。

i-dioはこの失敗から学んでいるようだ。まず端末を無料で配る事にした。モニターと言っているが実際はベータテストではなく無料配布なのだろう。50,000人に配るそうである。さらに、コンテンツ事業者とインフラの事業者を分けた。そしてコンテンツ事業者を地域ごとに分割した。

i-dioは無料でコンテンツを配信するらしい。NOTTVは有料コンテンツだったのだが、加入者が集らなかった。不思議なことに日本ではお金を払ってコンテンツを買う文化が根付かない。TVには必ずBS/CSチューナーが入っているが、スカパーの加入者は350万人程度なのだそうだ。NHKのBSですら2,000万人の加入者しかいないそうである。有料どころかTVはNHKしか見ないという人も多いのではないだろうか。BS/CSアンテナですら付けるのが面倒だという国民が、わざわざNOTTV対応の端末を買って有料放送なんか見るはずがない。

このように失敗から学んでいるように見えるi-dioだが、懸念もある。wifiを切り替えて使うようなのだが、使っている間は既存のwifiが使えなくなる。携帯電話を想定しているようなので、携帯の電波を使ってwebにつなぐ構想なのかもしれないが、wifi専用のi-padなどではネットにつなげなくなるし、通信料も高くなるだろう。

さらに、ブラウザーではなく専用のアプリを使うようだ。なぜか日本のメーカーは自社技術でユーザーを囲い込みたがる。ブラウザーにHTML5で動画配信するということならばPCでも対応できたはずだが、そのつもりはないのではないかと思う。

ハードウェアも一から作り直す。VHF帯の電波をwifi変換できる機械があれば汎用的に使えるはずだが、細かく分けた上で専用機器を作るのだ。i-dioの他に自治体用に緊急放送を送る機械を作るということである。

ユーザーはいろいろな機械を買わなければならない。デジタルTV、ワイドFM用のラジオ、i-dioチューナー入りのナビゲーションシステムなどなど。汎用タブレットで全部できればそれでよさそうだが、どうしても専用機を作りたいみたいだ。

一連の話を調べていて不思議だったのは、未だに通信と放送が完全に分離されているということだ。法律が違うのだそうだが、実施にはどちらも電波にデジタルデータを乗せているだけなのである。技術的には放送電波にYouTubeを乗せて、それをwifi変換してパソコンで見るということもできるのだが、法律の体系だけはラジオが登場したときと同じ区分を使っているのである。

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