日本人の変な英語を真面目に分析してみる

さっき別のエントリーを書いたばかりなのだが面白いのをみつけたので連投する。

面白いと思ったのは英語が日本語的だったからだ。本来なら、I am against TPP because LDP deceived us to win the 2012 election.となるところである。文章が一文で済む。英語は簡潔を好むのだが、日本語は短い単語数で多くの情報を詰め込めるので、長くなる傾向があるのかもしれない。「嘘をついた」より「騙した」の方がかっこいいので、ビジネス英語ではボキャブラリは大切だ。

もうひとつ言えることは、英語が主題を分析する傾向がある言語ということだろう。つまり、自ずと問題はTPPにあるという認識が生まれてしまう。

しかしなぜ、この日本人の英語の文章は自民党が嘘をついたからという文章が先に出ているのだろう。これを読んで直感的に感じた違和感はそこにある。英語を素直に読むと「自民党が嘘をつかなければこの人はTPPにどういう態度をとっていたのだろうか」という疑問に結び付いてしまう。つまり、TPPは良く知らないのだが、自民党が嘘をついたからダメなのだということになる。つまり、英語は主題を問題にするのだが、日本人は関係性を問題にしていることになる。

この人の政治的バックグラウンドは分からないが例えば民主党が主導したTPPであれば賛成したのかもしれないし、そもそもTPPそのものが嫌だったのかもしれない。もし、自民党が正直に話をしていたらTPPについてどう思っていたのだろうか。

これを英語圏で発言したら変な顔をされるのではないだろうか。実はTPPそのものについては何も言及されていないからである。たとえば「仕事が奪われるからTPPはダメ」だというのはわかる。これは議論の対象になる。ところが自民党の言うことは信頼できないということになると、議論はできない。それはその人の主観だからである。

自民党に視点をを与えて、英語的な構造に直すと次のようになるものと思われる。かなり穴埋めが必要になる。

自民党は2012年の選挙で嘘をついた。地域の有権者にとってTPPには利益がないことを知っているからだろう。にもかかわらず今になってTPPを推進しようとしている。多分、TPPが日本の地域にとっては利益にならないのだろう。だからTPPには反対だ。

だが、下にあるポスターを読むと、自民党が嘘をついたということが複雑な英文で延々と書かれている。だから実際に言いたいことは次のようになる。

LDP have been changing their position frequently. So I can’t trust LDP.

つまり、面倒臭いことをいろいろ分析してきたのだが、本当はTPPは関係がないので全て省かれてしまう。自民党がオポチュニストだから嫌いということになる。もともと自民党不支持なので、それ以外のことをいちいち説明する必要はないのだ。

たまたまこのツイートに目が止まったのは、英訳されていたからだろう。実際にはよくあるツイートだ。日本人が議論ができないのは、実は主題が主題ではないからなのだ。

なぜ安倍首相の支持率は高いままなのか

安倍首相に人気があるのは世論操作ではない

Twitterで安倍首相の支持率が高いままなのはNHKが世論操縦しているからだというようなことを言う人がいる。しかし、これはあまりにもうがった見方なのではないかと思う。実際には安倍首相は国民のニーズを捉えているのではないだろうか。

トランプが大統領に選出されて日本人はかなり動揺したようだ。トランプが日本を敵視しているということはなんとなく知られていたからだ。宗主の機嫌を損ねれば日本は危ういと考えた人が多かったのだろう。日本人は権力と良好な関係を保持している状態を好むのだと考えることができる。関係性を意識しているのだろう。

日本人のニーズとは何か

日本人が恐れているのは現状が変わってしまうことだ。そのために緩やかな衰退を選択した。変化を起こせば状況が好転するかもしれないが、それが自分のところに及ぶかはわからない。で、あれば相互監視して勝ち組が出ないようにした上で、みんなで貧くなって行こうという選択である。

だから日本人は「今までどおりで大丈夫」と言ってもらえることを望んでいる。安倍首相はこのニーズに沿って行動しているに過ぎない。

実際には日本人は貧しくなっている。一人当たりのGDPは凋落の一途をたどる。先進国と中進国が成長を続けている一方で日本だけが成長していないからである。だが、そのことに日本人は気がつかない。みんなで貧しくなっているからだ。

もちろん、脱落するのも嫌なので手助けはしないで「自己責任」で切り捨てて行くし、学術の基礎研究や企業の国内投資のような未来への投資はしない。凋落してゆくのが分かっているから、未来への投資は合理的な選択肢と考えられないのだろう。

変わらないために政策が首尾一貫しないというのはおかしい気がするのだが、変えてはいけないのはアメリカとの関係なので、日本はアメリカの動向次第で日本の政策を転換しなければならない。だから、国内政策が一貫しないということになる。しかし、これもおおむね国民の合意が得られている。

もっと古層にある変わりたくない人たち

日本の政治をモニターしている人は、安倍首相が基本的人権を否定するような動きをしていると指摘するかもしれない。しかしそれはもっと昔の「変わってはいけない」を代表しているに過ぎない。それは、日本が戦争に負けてしまったという歴史的事実を受け入れないということである。中国や韓国が経済的に台頭したこともこの動きに拍車をかけており「敵」の姿は複雑になっている。

もう一つ安倍首相の支持率が高い理由は、左右対立にあるのだろう。アメリカの二大政党制はアイディアのコンペティションだが、日本の左右対立は、戦後すぐの東西対立が日本に持ち込まれた結果ガラパゴス化したものだ。

東側陣営は1989年に崩壊したので左派は人権や環境に逃げ込んで難民化した。人権や環境は左派のアシュラムだった。さらに厄介なことに、連合が正社員の労働組合であり既得権益化してしまっている。彼らも変わりたくないという点では、典型的な日本人気質を持っている。

さらにその下には非正規労働者の層が広がっているのだが、彼らを代表する政党はない。彼らは自己責任のもとに切り捨てられてしまった人たちだ。だが、もともと何も持っていないので変わりようはない。

対立が相互依存に変わるとき

一方の右派はアメリカに追従して経済利益を守ろうという人たちと、日本の敗戦や相対的な国力の低下を認められない人たちに分離している。中にはこれが一緒くたになっている人もいるかもしれない。1989年に共産主義が崩壊したように自由主義経済も今の形では存続しそうにない。トランプ大統領が「自由主義はアメリカから仕事を奪った」と宣伝したためである。

今、右派は明らかに混乱しているのだが、それを見ないようにしている。便利なことに、左派が繰り出すめちゃくちゃな非難を「デマだ」と言ってさえいれば、自分たちの矛盾を直視しなくて済む。そして「現状維持こそが最善なのだ」とつぶやき、自己肯定ができる他人の呟きを検索する。これは合理的な主張ではなく単なる願望なのだが、これには仕方がない一面がある。他に選択肢が見つからないからだ。

左派は右派なしでは存続できない。文句をいう相手だからだ。しかし、右派も現実に負けかけているので左派なしでは自我を保つことはできない。つまり、左右は敵同士ではなく、相互依存していることになる。

皆様のニーズに応えるNHK

「変わらない」ためにあらゆる無理を重ねているので、真実を直視することはとても難しい。本来なら目の前にある情報を見て、行動を決めればいいだけなのだが、それができなくなってしまう。そこで、言葉を言い換え現状から目を背けるという選択肢が生まれる。その意味ではNHKは政府のプロパガンダを行っているわけではないのではなく、国民の期待に応えているのだ。

日本にも仮想万能感を持っている人たちは多いと思うのだが、トランプのような扇動政治家は現れない。橋下徹が「インテリの敗北だ」と言っていたが関西以外には広まらなかった。東京を置き換えた怒りにただ乗りしようとしたのだろうが、うまく行かなかったようだ。これは日本人が等しく貧しくなっており、置いて行かれたと考える人が少ないからなのかもしれない。

SNSと時系列情報

今朝地震があった影響で時系列情報について呟いている人がいた。これを中途半端に理解した上でツイートを流したためにちょっとした混乱があったようだ。ちょっと整理しておきたい。

元ツイートは、ツイッターは時系列だがFacebookはそうではないので、ツイッターは時系列を維持して欲しいというものだったようだ。これを流し読みしてツイッターを使っている人でも時系列ではなくなって困っている人がいると思ったの「ツイッターでも時系列にできますよ」という情報を書いた。

普段はほとんど見られていないので、これほどリツイートされるとは思わなかった。つまり、ツイッターのツイートが時系列になるということを知らない人が結構いるようだ。デフォルトではないからだろう。

しかし、元ツイートを正しく読んだ上でFacebookでもできないかという人が現れた。調べたら一応できるようだ。ただしアプリケーションの場合は設定が面倒な上に、しばらくすると元に戻ってしまうのだという。ブラウザ版の場合は左メニューのニュースメニューを「ハイライト」から「最新情報」にすると時系列単位に並ぶ。ただ、Facebookでは他人のアクティビティが割り込んだり、そもそも表示件数に制限があるらしく、完全には時系列にならないということのようだ。

このツイートをするときに少しためらいがあった。それは元ツイートを正しく読めているかというようなことではなかった。アルゴリズムを排除したら「完全に時系列に並ぶのか」という確証がなかったからである。

そもそもツイッター社はなぜ時系列を排除しようとしたのだろうか。それは会社にとって重要なツイートが埋もれないようにしたかったからではないかと考えられる。それは言い換えれば広告を出してくれる人というような意味である。彼らにとって「無意味な」ツイートが広告を埋没させることがあってはならないということになる。Facebookはさらに強硬にスポンサーの利益を守っている。避難する人がいるかもしれないが、営利企業なので仕方がないことだろう。

そもそも「間違えちゃいました」というフォロー記事なので「今後気をつけます」で終わるべきところなのだが、ちょっと考え込んでしまうこともある。

Facebookはなかなか会えない友達に最近何が起こっているかを知るためのツールでライフラインとして使おうとは思わない。Twitterも切迫したときのライフラインではなく「外国製のお楽しみツール」だ。時々刻々と起こっていることを知るためにはテレビなどを使うべきだと思うのだが、テレビを見ていると「意図的に何かを隠しているのでは」などと疑ってしまうので、とても疲れる。

ツイッターが時系列メディアとして期待されるのは、それだけ既存メディアとプロのジャーナリストへの信頼がないということになるんだろう。

トランプ大統領の外交政策が大惨事となる可能性

トランプ氏のツイートを見て、いろんな意味でちょっと背筋が凍った気がした。普段は安倍政権に対する文句とゆるいつぶやきで満たされているタイムラインで背筋が凍るような経験をすることはなかなかない。

このツイートを見ても一瞬意味が分からなかった。ナイジェル・ファラージといえばイギリスがEU離脱を決めた時に「有る事無い事」を吹き込んで離脱派を煽った前科がある人だ。最終的には「もう知らない」と言って党首をやめたのだが、後継者がいないという理由で党首に復帰したようだ。

その人がイギリスの駐米大使になればいいのにと言っている。一瞬「大使が決まったのか」と思ったのだが、そんなニュースはない。つまり、トランプ氏は(認証アカウントとはいえ)プライベートのアカウントから、イギリスに「大使はこの人がいいな」という「ツイッター辞令」を出したことになる。

イギリス人はプロトコルにうるさい国民として知られているわけだし、そもそも内政干渉になりかねない。もし、同じように日本の大使をトランプが指名したらきっと大騒ぎになるだろう。日本人はアメリカの意向を気にするから「向こうからのご指名があるわけだし」という話になりかねない。独立志向が強い(日本はアメリカの属国だからよいとして、イギリスはもともと宗主国なのだ……)イギリス人がこれを許容するとは思えない。

ファラージ氏はいち早くトランプ支持を表明していたという。そういう義理を大切にる人なのだろうということはよく分かる。安倍さんのように後から支持を表明したような人は、外様大名みたいな扱いを受けることだろう。この内と外を分ける感覚はわかりやすく発揮されている。多分、本気で指名しているわけではなく、ファラージ氏を喜ばせるジェスチャー(相手を喜ばす行為)だった可能性はある。

最近共和党の重鎮たちはトランプ氏に対して「ツイッターでの発言を控えるべきだ」と諌めていたようだ。それはアメリカ大統領の発言は国際紛争や金融などに大きな影響を与えるからである。

現に、今朝方ツイッター経由でビデオを発表し、その中にTPPから撤退するという発言が含まれていたために、日本の政治家やマスコミは大騒ぎになっている。これはあらかじめわかっていたことであり「まあ、かわいいな」などと思っていたのだが、同盟国のプライドを平気で踏みにじるようなことをする大統領は早晩大きな問題を起こすに違いない。下手をしたら、Twitter辞令で国際紛争勃発みたいなこともあるかもしれない。

れんほーさんとテレビ

うちの家族(ネットしない)がNHKに出てくる蓮舫代表を見て「この人いつもきついわね」と言った。いつも姿勢がよくやせているので首筋が目立つ。この言葉を聞いて蓮舫さんは損をしているんだろうなあと思った。

このところ政治は演劇学の分野に移りつつあると思う。トランプ新大統領はこれをプロレスの興行から学んだようで、ヒールとして人気を集めた。だが、蓮舫さんは役割やルックスがベビーフェイスなのにヒールの役割になっている。これがうまく噛み合っていないのだろう。

蓮舫さんがきつい女に見えるのは、本人の発信方法が悪いというより、テレビのせいだ。安倍首相が「〜しました」というニュースがあり、それを「公平に伝える」ために野党の発言が使われる。それは必ず批判なわけで、いつもきつい顔できついことをいう女という印象がつく。役割としては「ヒール」なのだが、なんかヒールっぽくない。だが、それが民進党のイメージになってしまうわけだ。悲しいのは誰も中身を聞いていないという点だが、これはもう仕方がない。

意外と中の人は気がつかないんじゃないだろうか。なぜなら本物の蓮舫さんは双子の母親であり優しい側面も持っている。定期的にジョギングしていてスタイルを保っている。直接見たことはないがきっと綺麗な人なのだろう。さらに、Twitterでも犬の写真が出てきたりするので、まあいろんな側面があるんだろうなということはわかる。でも、テレビを見ている人って、もっと漠然とキャラ付けしているのだ。

これ、どうやって解消すべきなのだろうかと思った。NHKは公平性を期するために自動的に野党党首の発言を入れているわけで、偏向報道とまでは言いきれない。特にNHKは政治には興味はないので、どこか扱いがおざなりである。だから「こういう扱い方はするな」とは言えない。

一つにはニュースバリューのある活動を政府とはリンクさせずに行うという手がある。多分「もうやっている」のだろうが、伝わってはこない。でも、それをやり続けるしかなさそうだ。結局自分の舞台でしか主役にはなれないからだ。

逆にニコニコ笑いながら会見をすると「実際には容認している」とか「自民党の補完勢力なのだ」などと言われかねないわけで、なかなか難しいところである。あとは呆れた調子で淡々と諭すような論調にするという方法もあるだろう。つまり同じ目線に立たずに上からゆくわけである。このところの安倍政権の政策はどれも行き詰っているので、結構効果があるのではないかと思う。今の民進党は自民党に巻き込まれているのだろう。

そういう意味ではきつく見えない小池百合子都知事はうまいと思う。早くから都議会自民党をヒールに仕立て上げて自分はベビーフェイス側の立ち位置を作った。でも、女性が見ているのはどうやら中身ではなく、服の色やアクセサリーらしい。「ちょっと前に出すぎている」のではないかみたいな印象を持っているようだ。男性は小池さんの発言を聞いており、でっかい首飾りなんかみていないのだが、女性は発言は聞いていなくても、スーツの色なんかをチェックしているのだ。そして、それが投票行動に影響してしまうのである。

右翼は日本語でNHKだけ見てなさい

今は馬鹿な右翼の時代だ。彼らは発言することさえできない。そもそも何も考えていないからだ。だが、間違いなく時代はこの頭の悪い人に有利になっている。煽動家が彼らのニーズを満たしてくれる。

アメリカには神にこの地を任された白人がアメリカを支配すべきだと考える人で満ち溢れいている。彼らの多くは進化論を信じていない。聖書にはそんな風には書いていないからだ。これの日本バージョンの人たちは日本書紀を聖書に選んだようで、天皇の位は日本書紀に由来するなどと言い出している。これが右翼系雑誌ではなく国会で語られているというのが今の日本なのである。

こうした人たちが好んで見るのがNHKだ。NHK史観によれば、選挙前から太いパイプを維持していた安倍政権はいち早くトランプ新大統領との会談に成功したと言っている。安倍首相は未来志向で磐石な日米同盟の重要性を確認し、ドナルド・晋三という関係性を築くのだそうだ。

田崎史郎さんという自称ジャーナリストも「NHK史観」を振りかざしていた。いわゆるアベトモのお一人なのだが、最近旗色が悪い。「俺はトランプのダチ」というひとたちがいきなり沸き上り、テレビの主役を奪われてしまったからだ。トランプのダチたちは、カジュアルなミーティングだからハローだけで良いんだよなどと言っている。

だが、英語版のロイターは全く違った情報を配信している。選挙キャンペーンでの過激な発言で日米同盟に疑問を持った安倍首相が慌ててトランプ氏のもとを訪れたというのだ。

トランプ氏はまだ大統領ではないただの民間人なので、会談の位置付けも曖昧だ。だから会談で何を話し合うのかというような詳細(さらに場所さえも)最後の最後まで決まらなかった。考えてみれば当たり前で、たんなる民間人の金持ちのおっさんの元に一国の首相が会いに行くという異常事態だからだ。しかし、外国(しかも主要国)の要人がいきなり準備もなしに来たので警備は大変だっただろうう。ニューヨークといえばいわばテロのメッカだ。

その異常事態を日本人は最重要事項として固唾を飲んで注視している。だが、同時にアメリカ人は「日本はよっぽど慌ててるんだろうなあ」と見ているのだろう。多分、中国人も「安倍慌ててるってよ」と思っているだろう。

どっちを信じてもよいのだが「永遠の安定」という物語の中に安住するのも悪くないかもしれない。もうこうなったら日本書紀も書き換えて日米同盟を神勅の一つに加えればいいんじゃないだろうか。

 

保守という欺瞞

櫻井よしこという「有識者」がとんでもないことを言っている。訳すると次のようになる。

天皇は個人としていろいろやっているみたいだが、そんなのは趣味みたいなもんだ。ただ、黙って存在していればいいわけで、体が悪くなったからといって途中で逃げ出すことなどあってはならない。そういうこともあるから、明治政府は天皇が退位できないようにしたのだ。

櫻井さんは家族に対して倒錯した考えを持っているのだろうと思い調べてみた。お父さんが早く家を出て母親に育てられたそうだ。父権というものに過度な幻想を持っているか、敵意を反転させているのではないかと思う。

だが、この意見自体は、いわゆる「保守」といわれる人たちの総意のようなので櫻井さんを攻撃したいとは思わない。前回のエントリーで「人権派」と呼ばれる人たちが実は人権を信じていないということを考察したので、日本人は右派も左派もイデオロギーというものを信じないという特性があるのだなあという乾いた感想を持った。内的な怒りをぶつける先になっているのかもしれない。

右派の特徴は、個人の徹底的な排除である。天皇すらその例外ではなく、家のために殉じるべきだという考えなのだろう。面白いのはその中で「自分だけは例外である」と考えている点なのだが、もしかしたら自分に価値を見出せないからこそ他人の価値を剥奪したがるのかもしれない。

このように都合よく考えられなければ、自分も「殉じる」側に回る可能性を考えるはずである。逆に天皇のことをなんとも思わないからこそ「利用できる」と考えることになる。そう考えると右派というのはイデオロギーではなく病気あるいは認知のゆがみなのだということが分かる。

もし日本をひとつの家と考えるなら、その家長である天皇がいなくなったらどうしようということを「わがことのように考える」はずだ。しかし、いわゆる皇室擁護派の人たちにはその意識が希薄だ。実は天皇家は題目のようなものであって、なくなったら次の題目を持ってくればよいと考えているのかもしれない。日本は天皇を中心とした家であるなどといいながら、実際には心理的に乖離しているのである。

どうして右派保守はこういう人ばかりを吸い寄せるのだろうと考えたのだが、やはり天皇制に問題があるのではないかと思った。天皇は政治的権能を有しないことになっているので政治的発言を避けてきた。しかし、何も言わないからこそ「それなら代わりに何か言ってやろう」という人をひきつけることになる。なぜ、天皇の権威に行き着くかというと、それ以外では言うことを聞いてもらえなかったからなのだろう。別の成功体験(例えば経済的に成功した)などがあればそれが拠り所になっていたのではないだろうか。

これを防ぐためには次の天皇は積極的に情報発信すべきかもしれない。政治的な権能がないからといって何も発言をしてはいけないという決まりはない。まずはTwitterあたりからはじめてみるのがよいのではないだろうか。イギリスの女王も政治的には中立でなければならないので投票などはできないようだが、確かTwitterアカウントは持っていたはずだ。

櫻井さんを見ていると、保守というのは、成功体験がなく認知機能に問題がある人なのだということになってしまう。だからこそサイレントマジョリティが安倍政権を支持するのかもしれないのだが……

リベラルを抜けだした人権派だけが生き残る

誤用されるリベラルという用語

前回はリベラルという言葉が誤用されているというようなことを調べて書いた。リベラルとは「〜からの解放」という意味であり、もともとは小さな政府派を指している。これを修正する動きが出てソーシャルリベラリズムという概念がうまれ、それが日本の左派に輸入された。彼らはすでに革新派を自認していたので、リベラル=左派=革新ということになった。

少し厳しい言い方をすれば共産主義が否定されてしまい支持が集まらなくなったので、人権、戦争反対、環境などに逃げ出したのが今の左派だと言える。

そのまま差別用語になった

戦前の日本人は、西洋から「支配するもの・支配されるもの」という概念を輸入した。白人は支配する人だ。日本人はいち早く西洋化してアジアを支配すべきだと考えるようになった。その眼差しを修正しないまま中国や朝鮮半島に向けた。これがシナとかチョンという言葉の元になっている。中国が経済的に成功しだした頃から、反動として「中国は支配されるべき劣等民族」なのだという価値観が復活した。日本人はアジアの台頭が素直に喜べなかったのだ。

ところが、これが左派と結びついて、劣等民族としての左派が日本の体制を転覆しようとしているというような歪んだ考え方が生まれる。中国は実質的には共産主義国ではなくなってしまったために代替するイメージが必要だったのだろう。

政治の世界ではこの考え方は意外とメインストリームとして生き残っている。世界を支配するのはアメリカであって、日本はその代理者としてアジアを教化するのだというシナリオがTPP推進の動機になっているようだ。キリスト教的価値観が理解できず、アメリカはお金持ちだから偉いという点が強調されているのが悲しいところだ。なんとなくカーゴカルトっぽい感じがある。

実は家も名前もない日本の人権派

さて、さまざまなブログを観察していて別の「誤用」を見つけた。リベラルを人権派と自己規定している。以下、引用する。

それは、リベラルがリベラルとして理想を容易に語れなくなったということであり、理想の理念の代表格である「人権」ですらその波には逆らえず、トランプ的「ホンネ」の前ではこれまでのように無防備に理想主義としての「人権」が語れなくなってしまった。

アメリカで起こっていることを思い切り誤解しているなあと思ったのだが、この「リベラル=人権」というのもよくある用法だよなと思った。誤用とも言い切れないのはリベラルには「偏見から解放された」という意味合いもあるからだ。確かに進歩的な人たちをリベラルということはある。

敢えて誤用だといったのは、彼らが何から解放されるべきなのかということを考えずに、リベラルというラベルを使っているという点にある。伝統的な左派政党は国家の社会保障などは肯定しつつ、国家が人権を侵害することを嫌う。多分企業の自由な活動にも否定的なのではないかと思う。だから国家が経済活動を規制すべきだと言えば、賛成するだろう。

だが、なぜ解放されるべきなのかを考えない限り人を説得することはできない。日本の人権派がそのことを考えてこなかったのは、実は彼らが人権を単なるお題目だと考えているからなのだろう。

人権はなぜ擁護されるべきなのか

そもそも人権はなぜ擁護されるべきなのだろうか。2つの柱がある。

1つ目の柱はキリスト教の考え方による。人は神の前では平等なので、すべての人は同じように愛されなければならないというのが、キリスト教的な人権擁護の意識だろう。だが、多くの日本人は聖書を読んだこともないし、キリスト教の価値観を共有していない。だからこの線で人権を擁護することはできそうにない。

だが、人権擁護には別の柱がある。

アメリカで人権派といえば民主党だ。民主党は都市型政党であり、政府が人権擁護のために介入することには反対しておらず、アンチリベラルと言える。共和党はリベラルな政党で、強者(彼らの認識によれば能力があり頑張った人たち)が報われるべきだと考えている。

だが、実際には経済的強者は民主党を支持し、負け組になっていて政府のサポートが必要な人たちが共和党を支持するという逆転した図式がある。経済的に余裕ができるほど他者に優しくなる。すると優秀な人たちが集まりさらに発展するという好循環が生まれる。多様性は富をもたらすから、善なのだということだ。もともと自由都市に集まった人たちが経済的に成功したというヨーロッパの歴史が元になっている。

こうした違いはすでに表面化しつつある。ニューヨーク。シカゴ、ロスアンジェルスなどの諸都市は不法移民を保護するという宣言を出した。これらはすべて民主党が強い地域だ。

人権擁護は単なる建前ではない

先ほどのブログの分析によると都市の市長たちは「建前」を口にしているだけだということになってしまうのだが、実は建前ではなく、競争力の源泉になっている価値観を擁護しているのだ。

人権を守るということは多様性を確保するということで、それは経済的な強みを維持するということだ。だから、人権は重要なのだという結論が得られる。

いわゆる日本の人権派と言われる人たちが「人権など建前なのだ」と考えてしまうのは、皮肉なことだが人権擁護という価値観を信じていないからなのである。それは日本が総じて共和党が勝った側のアメリカと同じような状況にあるからだと分析することもできる。そこから脱却しない限り、日本の人権派が成功することはないだろう。

 

トランプ大統領は世界の終わりなのか

トランプ大統領が誕生したのを受けて、ロイターがベルリンの壁が崩壊してから27年後に資本主義社会が崩壊したと書いていた。選挙日とベルリンの壁が崩れた日が同じだったそうである。「それほどのことか」とは思わないのだが、否定することもできないので、今回も星占いに頼ってみた。

チャートを再掲載していいのかはわからないが、一応ロゴは貼っておく。日付を入れると自動でホロスコープを作ってくれるサービスがあるのだ。

なお、星占いは科学的には否定はされていないが、統計学的な優位性は全くと言っていいほど証明されていないそうである。つまり、あてにならないということになっている。あらかじめお断りしておく。くれぐれも大地震などを勝手に予知しないように。

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ドイツでナチス政権ができた頃のホロスコープ。それほど顕著なことが起こりそうな気はしない。だが、足の早い星が水瓶座にあることがわかるかもしれない。緑色のゾーンに星が多い気がするがこれは月があるせい。月は30日弱で一周する。
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ということで、こちらが国会が放火された時のもの。今回ポイントになるのが木星(乙女座にある)である。太陽と180度の角度を形成している。徹底的な破壊や死を示す冥王星(だが人間は感じ取ることができない)と太陽は120度を形成している。このハードアスペクトとソフトアスペクトの組み合わせがあることと、ある程度星が固まっていることがポイントになるようだ。
19411208

日本がハワイで特攻攻撃を仕掛けた頃の図。時差があるはずなので月の位置は微妙だが、間もなく火の星座入りする。木星と太陽はまたもや180度を形成してはいる。冥王星と太陽は同じ火の星座にいる。攻撃を示す火星も火の星座にあり(これをグランドトラインなどという)一般的には吉兆とされる。だが、これで日本が破滅することになった。
19891109
さて、誰でもパターン認識できますよね。木星と対峙するのは太陽ではないというところが、これまでのパターンと違っているところ。月が参加して水の星座でグランドトラインができている。これも吉兆のはずなのだが、組み合わせとしてはかなり破壊的な出来事だった。これがベルリンの壁の崩壊だ。これがきっかけになり、最終的にすべての東側陣営が崩壊した。
19911225
こちらはソ連の崩壊。事実上崩壊してしまっており、顕著な破壊のパターンは見えない。実実情崩壊過程が進んでいて、最後の宣言だけだったということが言えるのかもしれない。
20010911
意外とばらけているこの配置。だが、この日「世界の終わり」を感じた人が多かったかっもしれない。木星はまだ火星と対峙していない。水の星座にグランドトラインができている。一方で冥王星は土星と対峙。つまり、木星と火星は外れていることになり、それ以外の星座がソフト・ハードの組み合わせを作っていることになる。ニューヨークのビルに飛行機が突入し、のちの湾岸戦争に続く緊張が生まれた。

無理矢理に解釈すると、民主的に起こった動きはある程度の星のまとまりを必要とするが、少数人数で起こせることは、それほどのエネルギーを使わないのだと解釈することができる。もちろん、星占いにそれほどの力がないとすれば、それはすべて偶然の産物だ。
20170120

さて、これだけが未来のチャート。トランプ大統領が当選した時のチャートも見てみたがそれほど顕著な形は見られなかったのである。現在の緊張は木星が天王星と対峙していることによる。天王星は改革とか最先端技術などを示すのだがこれが逆行していた。しかし年明けごろから順行に入る。木星は順行している。今回は取り上げなかったが「世界の終わり」では木星は逆行していることが多い。木星と冥王星が90度なので何か起こるとすれば今でなくこの頃である。だが、グランドトラインなどはないので、人々が大きく動くということはなさそうである。

ハードなアスペクトはどちらかといえば降着を意味するはずなので「これからどうなるのだろうか」みたいなことは起こりそうだが、それほど破壊的なことは起こらないのではないかと考えられる。

正直星占いが当たるとは思わないのだが、長期的な視野を得るのにはよいのではないかと思う。

勘のいい人は、オレンジのところに星が集まったらどうなるのだろうと考えるのではないか。ハードなアスペクトとソフトなアスペクトの組み合わせができる。この場合月が重要な働きをするので、日付単位で要注意日がわかることになる。

パククネ・トランプ・安倍晋三

パククネ大統領に抗議する人々の群れを見ながら、これアメリカや日本と何が共通して何が違っていたのだろうかと考えた。割と共通するところがあると思える一方で、アウトプットはかなり異なっている。

トランプの図式が一番わかりやすい。人々はある理想を追いかけたがそれは叶わなかった。そこで変革したいが、人々は解答を持っていない。そこで全てを総とっかえしてやろうという機運が生まれて大衆が殺到した。

ということで、これをパククネに当てはめてみる。日本で伝わっているのはパク大統領が有権者から攻撃されているという点だけなのだが、実際にはそれを扇動している人がいるのではないかと考えられる。自然発生的に集まったものではないのだろう。そして、そこには「裏切られた理想」があったはずである。それが何だったのかはあまり伝わってこない。

日本の場合はもっとわかりにくい。「裏切られた理想」は民進党が担っている。つまり先導者(煽動者)が安倍晋三である。つまり、民進党が何かをやればやるほど安倍首相に支持があつまるという仕組みになっている。ところが韓国のようなリアルな世界での反発は起こらない。代わりに人々が集まっているのがTwitterだ。炎上が繰り返されている。実は日本はトランプ後の世界であると言える。煽動者が機能している限り、怒りは何か別のアウトプットを求めるのだろう。

アメリカではすでに非白人にたいして「国に帰れ」などという動きが出ているそうだ。日本の場合には社会秩序や一般常識といったものが攻撃材料になっているのだが、アメリカの場合には「白いアメリカ性」が問題になるのだろう。

変革は「リベラル」で括る事ができる。つまりまだ見た事がない理想の世界の追求だ。そしてその理想の世界を形にしたのが「イズム」だ。その反動には名前がない。保守というのとも違っている。保守はある意味世界(イズム)でそれを表明して恥ずかしいという事はない。今起こっている運動はイズムではないので人々はそれを表明したがらないのである。

トランプ大統領は自分の政策を表にしたが矛盾だらけで全てを実現できるとは思えない。それを気にしないのは、それぞれの発言はその時々の思いつきの集積だからだろう。だからこそ、受け手は好きな発言だけを受け入れる事ができる。トランプは「マイピープル」全てが喜ぶ政策を実現したいと真摯に考えている。ただ、そんなマイピープルはどこにも存在しない。

例えばヒトラーはドイツ人は東方に進展する権利があると主張して多くのドイツ人の支持を受けた。しかし、その主張にヒトラーイズムという名前が与えられる事はなかった。この「形にならない感じ」が大衆を動かす。もしヒトラーがこれをイデオロギー化していればそれほどの支持を集めなかったかもしれない。それは変革の一部になってしまうからである。人々が「失った」と考えているものが人々を熱狂させるのだが、実際にそれを持っていたかはわからない。

そのように考えると韓国が一番悲惨だなと思った。彼らが怒っているのは民主主義と法治主義が機能していない事だ。だが、実際に韓国に民主主義が機能した時代は一度もない。さらに悲惨な事に彼らは自分たちの力で民主主義を手に入れた歴史もない。でも、だからこそ純粋に怒る事ができるのだろう。

そう考えると、なぜ名前のないイズムがTwitterで蔓延するのかがわかる。一人ひとりがつながっていないので、それをまとまった形にする必要がないし、無理にまとめればどこかにほころびができて崩れてしまうだろう。この繋がっているようで実は分断されているものが煽動を容易にしているように思える。