まず、人は自分にしか興味がないことを知るべき。つまり、相手を直接コントロールすることはできない。また、人は敵対的な態度にリアクタンス(心理的抵抗)を覚える。逆に共感的な態度は賛同を得やすい。つまり、他人は変えられないが関係性や空気はコントロールできる。あいてに好ましい影響を与えるためには、相手を直接コントロールするのではなく、間接的な方法をとるべきだ。
こうした手法は昔から提案されている。第二次世界大戦前に書かれたデール・カーネギーの『人を動かす』などが有名で今でも読み継がれている。『人を動かす』や最近の読み物などを参考にして他人をコントロールする方法をまとめてみた。『人を動かす』には『マンガで読み解く 人を動かす』もある。
他人をコントロールするにはまず自分が変わる
『人を動かす』の中には「聞き手になる」など受身の方法が多く書かれている。カーネギーは主にセールスマンなどに向けたセミナーを行っていたからだ。だが、現在では聞き手に回ると「この人はなんでも聞いてくれる」などと期待されたり、いやな役割だけを押し付けられたりしがちだ。セールスマンと違ってその場にとどまらなければならない人が多いからだ。閉ざされた空間では、まず自尊心を持って、相手に支配されないようにするのが重要なのではないかと思う。偉い人に認めてもらいたいなどと思うと卑屈になりがちだが、状況をコントロールしてくらいのだという意識を持つことが大切だろう。ボディランゲージや姿勢などで状況を動かすことができるようだ。人を変えるためにはまず自分から変わらなければならない。
人間は共感と社会的承認を求めている
人を動かすためには、まず、他人が何を欲しがっているのかを見極める。見極めたらそれを惜しみなく与える。また、他人がそれを得られるように援助を申し出るのもよい。多くの人は社会的報酬を欲しがっている。相手の成功を「おめでとう」と評価する・思いがけない賛辞を送る。重要感を持たせる。期待をかけるなどが効果的だ。直接与えるだけでなく、援助の気持ちを表すのも効果的だろう。相手が望むものを得られる方法を提案してみるのも良い。
協力的な態度は重要だ。名前を覚えたりして、相手に誠実な関心を寄せて置くと人から尊敬されるようになる。人を非難する代わりに理解している姿勢を示す。つまり、心理的リアクタンスはできるだけ取り除いてやると良い。
相手に影響を与えたければ自分から話してはいけない。聞き手に回るべきだ。相手への共感を示し、議論を避ける、間違いを直接指摘しない。自分の間違いは素直に認める。何かやらせたいと思ったら提案せずに相手に思いつかせる。相手に信頼して欲しければ、相手にしゃべらせるのがよいという科学的な知見もあるようだ。まずは、質問すると相手は話しやすくなる。
人間は空気に支配される
相手の美しい心情に呼びかける。相手を優遇するとそれなりに返礼しなければならないと考えるようになる。相手にうなずいていると、相手もイエスと言いやすくなる。肯定には肯定で、協力には協力で対応する態度をミラーリングという。アメリカでは相手を触るとチップが多くなるという研究があるらしい。日本では親しみを込めた態度をとるとよいのかもしれない。
特には意外性や演出も大切
ただし、相手を褒めてさえいればよいというものでもない。例えば賞賛しなれている人は褒められてもあまりうれしいと感じないだろう。国会議員を褒めてもコントロールできないだろう。意外性のある方法を考えるべきだ。つまり、演出も大切だ。肯定的な雰囲気を作り、穏やかに話し、笑顔で接し、イエスと答えられる質問を選ぶと相手は協力しやすくなる。逆に、対抗意識に訴える方法も効果的だ。相手同士を競争させて効果を上げる方法がとられることもある。
もっとも相手が協力的かどうかはわからない。ためしに視線を変えてみて相手が同じ方法を見たらリベラル(共感的)である可能性が高いそうだ。そうでなければ保守的だ。共感的で協力的なほどリベラルということになる。社会的承認を得られている人をほめても効果的ではないかもしれない。
聞き手に回ることと服従することは違う
聞き役に回っていると、相手は「話を聞いてもらえて当たり前だ」と感じるようになるかもしれない。すると相手をコントロールすることは難しくなるだろう。うつむくと服従的な態度だとみなされるので避けた方がよいらしい。体や手足を大きく広げると重要な人に見える。また、一歩手前に出ると会話を支配できるようだ。聞き手に回ることと服従的になることとは違う。