電通叩きとか収奪とか

オリンピック贈収賄疑惑は「電通叩き」の様相を呈してきた。だか、電通は特に悪くないと思う。そもそも電通は広告を売っている会社ではない。企業に様々な利便を提供するのが主な仕事だ。発注権限を持つと、クライアントは「何でもいうことを聞いてくれる奴隷のような」人を求めるようになる。そのあれこれに応えてやるのが電通の仕事で、別にクリエイティブなんかどうでもよいのである。その延長にあるのが、オリンピックのとりまとめだ。もともと「偉い人の汚い仕事を引き受けてお金をもらう」のが電通の仕事なのだ。

もともとオリンピックは貴族が新しく始めたビジネスだ。彼らは「働かずに庶民から搾り取る」にはどうしたらよいかを常々考えている。貴族にとって働くというのは庶民がやることで、奴隷みたいなものだ。もともとは地代収入、権益、徴税で食べてきた人たちなのだが、それだけでは食べてゆけなくなったので、庶民に感動を売るようになったのだ。

安倍首相や森元首相がどんなに偉くても彼らにとっては「庶民の代表」にしか過ぎない。本当にメンバーになれるのは竹田家のような貴族だけなのである。ということで、電通は貴族にお友達がいる庶民の小間使いくらいの位置にいる。彼らを叩いてもあまり意味はないのではないかと思う。

ちなみにディアク氏はスポーツマン出身だ。奴隷階層みたいなものである。ディアク氏は「やり過ぎた」のだろう。不正なお金を手にするしかなかったのだ。貴族はそんなことはしない。正当な手段で搾り取るのだ。だから庶民は「搾り取られて喜んでいる」ことになる。庶民は「国」に所属しているという幻想を得ることで、気分を高揚させる。そのためにはいくらでも支払うのだ。

そもそも「何が賄賂か」という問題がある。もともとはロシアのドーピング隠蔽が発端だったようだ。ロシア人は「奴隷階層が健康を壊して人生を台無しにしても」別に構わないと考えるわけだが、それはヨーロッパ基準では「ルール違反」だとされた。そこでロシアはディアク氏に隠蔽を依頼した。ラミーヌ(ラミン)・ディアク氏はそれに失敗したので、ロシアから「金を返せ」といわれ、表沙汰になった。ディアク氏の資金の流れを解明する段階で、電通や日本当局からの「巨額資金」が表沙汰になったのである。多分ヨーロッパ基準では「賄賂」なのだが、これが世界基準ではなくなりつつある。

もともと、日本人は口利きをそれほど悪いことだとは思っていないようだ。口利きは日本の文化に根ざしているからだろう。例えば甘利元大臣が役職を利用した役所への口利きも大した問題にはならなかった。日本人が口利きをいけないことだと考えるのは「他の人たち(ヨーロッパやアメリカ)がそう思っているから」に過ぎない。だから「他の人」がやっていれば自分たちもやるのだ。

同じような感性を持っているのが中国人だ。役職にある人が私腹を肥やし海外に資金逃避させることが当然だと見なされている国である。アフリカにもそのような国が多い。ということで、中国に対抗意識を持っている安倍政権は自分たちも賄賂を支払い、国民もそれをそれほど悪いこととは思わないのだ。

例えば最近の話題ではトルクメニスタンへの2兆円の「投資」がある。実際には日本企業が大型プロジェクトを受注する。こうすると都合のよいことがいくつもある。税金を投入して海外に流す。トルクメニスタンは独裁国家なので、現地の政治家にキックバックさえすれば、確実に投資を回収することもできる。そして大企業がプロジェクトを受注する。これを海外法人の儲けということにして税金の安い国に投機した会社の売り上げに勘定できれば(していないかもしれないが)合法的に資産の移転ができるのだ。大企業はそのうちの一部を「寄付」として自民党や政治家に移転すればよい。

トルクメニスタンの投資には違法性がないというところだ。文句を言いそうな人は排除せずに「抱き込んでやればいい」のだ。

オリンピックの問題に戻ると、あとは商品価値の問題だけである。オリンピックでは汚い金がうごめいていると多くの人が考えるようになれば、オリンピックの商品価値が毀損される。問題になるのは放送権が高く売れるアメリカとヨーロッパの人たちの価値観だろう。また、借金だけが残るということになれば招致都市がなくなる。するとオリンピックが実施できるのは、比較的大きな金が動かせる独裁国家だけということになる。すると貴族たちは困るわけで、それなりの改革策を打ち出すことになるだろう。

一方で新興国を介した資金逃避はよりおおっぴらな形で温存される可能性がある。これは国家財政の私物化という意味で、国家の持続可能性を大いに毀損する。多分、本当に怒るべきはこうした問題なのではないかと思う。

だから、電通叩きには大した意味はないわけだ。

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