日本人とお得感

正月に面白い話を聞いた。近所にスーパーマーケットが2つある。西友と国内系である。西友はアメックスのクレジットカードを作っており3%の割引が受けられる。Everyday Low Price戦略を取っており「いつ行っても安い価格で買え、加えて3%の割引が受けられる」という条件だ。一方国内系はレシートデーというものが決まっておりその日に買い物をしてレシートをためると20000円で1000円の金券が返ってくる。

「どちらが人気高いのか」という話である。結果的に選好されているのは国内系だ。いくつかの理由がある。

最初の理由がそれが「割引」ではなく金券のキャッシュバックだという点にある。苦労してその日に買い物しなければならないので「働いた感」が得られる。日本人は「苦労して稼いだ」という感覚が大好きなのだ。このブログでは「わざわざ列に並ぶのはなぜなのだろうか」とか「残業して死にそうになるのはどうしてなのか」などということを考えてきたのだが、苦労して稼いだ感が得られるからなのだろうと考えると納得できる。日本人は一億層マゾヒストなのである。

次に「この日にしか安く買えない」というのが行動のインセンティブになっているようだ。これはファッション業界のセールなどでも一般的だったのだが「節約志向」が一般化するに従って、もっとも強い購買のインセンティブになってしまった。つまり、セールでなければ売れないのだ。Everyday Low Priceにはこのような動機付けはなく魅力が損なわれるようである。アメリカはこうした格安店がカテゴリーキラーとなったが、日本はみんなが一様に貧しくなったために、カテゴリーキラーだらけになってしまったことになる。

さらに「専業主婦」という事情もある。クレジットカードが夫の口座に紐づけられていると3%は夫の管理になってしまう。すると何に使うかについて夫が厳しく干渉する可能性がある。しかし金券はへそくり感覚となり「好きなものが買える」という感覚が得られる。アメリカ人は個人のカードでお買い物をするのでこうした感覚がわからないのではないだろうか。苦労して特定の日付にでかけるという仕事の対価として5%の割引が得られるということになってしまうのである。

日本人はよく管理されているので、好ましい行動を取った時に褒めてあげるという手段がよく作用することがわかる。「いい子にしていると飴玉がもらえる」ということだ。飴玉とは自分だけの利権である。集団の目を盗んで個人に利得を与えることが動機になるのである。

日本人の勤勉さは美徳と考えられるのだが、これには裏面がある。Amazonのように会費をとって「明日届きます」というような施策を取ると、確かに利用頻度は増えるかもしれないのだが、配送が1日遅れただけで腹を立てて運送会社を罵倒したり、逆切れした配送会社が荷物を叩きつけたりすることが起こる。「当然の権利」をお金で買っているという感覚にしてしまうと、主人であるという感覚が過剰に働くのだろう。

よく飼い慣らされているという感覚は裏返すと「主人であれば何をしてもよい」という感情と表裏一体になっている。これは、臣民型の国民に「主人」という感覚を与えてしまうと傍若無人に振舞うというのと同じようなことなのだろう。

 

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