サイコパス型政治と新しい23区像を発明した小池百合子東京都知事

本日は小池百合子東京都知事を批判する記事を書く。「嘘」と書きたかったのだがそれはやめて新しい23区像とした。なぜ気が咎めたかというと都知事自身が嘘をついている意識がなさそうだからである。あるいはこれが現代型都知事の資質なのかもしれないと思う。しかしタグは「サイコパス型政治」にした。罪悪感というものを持ち合わせている人が罪悪感を持ち合わせない政治家に対抗するのはかなり難しいように思える。サイコパスは現在では社会的病質ではなく資質になっているのかもしれない。




吉村大阪府知事が明確な指標を打ち出し、東京都の検査体制が充実していないのは小池都知事に責任があるのではという空気が広がった。

ところが都知事の会見を聞いて「おそらく都知事には当事者意識はないんだろうな」と思った。それどころか、数字がきちんとまとまらないのは区の責任であって自分のせいではないと信じ込んでいるようだ。つまり彼女は全く気にしていない。

フジテレビワイドショーのフィールドキャスター氏が「東京都の検査体制は足りていないのではないか」と質問したのだが言い訳にならない説明をし「東京23区というのはむしろ国とつながっている」と言いだした。記者会見のビデオが上がっていて43分から45分のところにそのくだりがある。はっきりとは言わなかったが「23区は直接国が管理すべきだしそうなっている」と言いたかったのだろう。

これを見て「ああいつもの小池さんだなあ」と思った。小池さんはクールビズなどのキャッチフレーズを作るのは得意だがそのあとの地味な仕事には全く興味を持たない。例えば希望の党も作った時は良かったがモノにならないと見るや見限ってしまった。なんとなくいなくなるのであまり騒ぎにはならないがあとには実現しなかったプロジェクトがたくさん残る。とにかく、その場その場が収まっていればよいと考えるのが小池百合子さんである。

フィールドキャスター氏は反論しなかった。おそらく彼には専門知識はないに違いない。そして都政担当の他の記者たちも「それは違う」と援護しなかった。ビデオを見るとわかるのだがあまりもあっけなく事実と違うことを言うので表情や声の調子から嘘だと気がつかない。

安倍晋三総理大臣はこの「サイコパス度合い」では小池さんより明らかに格下である。総理大臣は理解していないことが多いが、理解している嘘を指摘されると明らかに動揺する。特に自分が格下だと思っている左派や女性から指摘されると啖呵を切って問題をこじらせる。だがおそらく小池さんは「素人ごときにはわかるまい」と思ったのではないかと思う。そして案の定人々は気がつかない。だからこの件は一切ニュースにはならなかった。

なぜ事実誤認かということを説明する。小池さんが言及した23区の制度改革が昭和50年台にあったのは確かである。つまりこれはファクトだ。一時は公選制が敷かれたりしたのだが特別区は自治体ではなく東京都の内部団体として扱われてきた。23区に市町村なみの権限を与えようとしたのが昭和50年の改革だったがうまく進まなかった。だから今でも限定的な権限しかない。つまり、小池さんはファクトに異なった解釈をつけて「その場を乗り切って」いる。

今回の特措法は都道府県単位で自粛要請などをすることになっている。だから、都の権限と責任で方針を決めなければならない。23区がどんな位置付けだろうがやはり現状把握は都の責任である。

おそらく記者たちも視聴者もあまり「誰が何に責任を持つべきか」という経過には興味がないのだろう。結果的に陽性率は出すことにしたようで「結果的に数字が出てればいいじゃん」ということになってしまったようだ。簡易検査キットも承認される。「結果オーライ」になるはずだ。

日本は小池百合子東京都知事にとって住みやすい環境である。好きなだけ彼女が考えるオルタナティブ・ファクトが語れる。小池さんは今日もカタカナを駆使しながらこの環境を謳歌している。政策ベースの競い合いと検証型のジャーナリズムがある国ではこんな政治家は生き残れない。

同じようなサイコパス型の政治家にトランプ大統領がいる。アメリカには検証型ジャーナリズムがありファクトチェックが行われる。だがトランプ大統領はそれを気にすることはない。相手こそフェイクなのだと言って次から次へと新しいオルタナティブ・ファクトを生み出す。トランプ大統領にとってはやりにくい環境である。

最近ABCが毎日ケンタッキー州知事のアップデートを放送している。人口500万人に満たない州でバーボンとカントリーミュージックとケンタッキーフライドチキンが有名なところである。会見を試しに聞いてみたのだが面白かった。

例えば「‘We will get through this together’ | 10 things Gov. Andy Beshear wants Kentuckians to do to beat COVID-19」という極めてわかりやすいガイドラインが示されている。「一緒に乗り越えましょう|COVID-19に打ち勝つためにアンディ・ベッシャーがケンタッキー人にやってもらいたい10の事」という意味である。

中でも面白いなと思った指示が二つある。Apply for Benefits(ベネフィットに申し込みましょう)とReport Non-compliance(従わない人を報告しましょう)だ。

ベネフィットとは「なんとか支援金」の類である。つまり、こういう支援策があるから申し込んでくれと言っている。麻生太郎財務大臣が「さもしいお前らが申し込んできたらくれてやる(そんなことは言っていないがなんとなくそんな態度だった)」に比べると積極的な提案である。この方が申し込みやすい。また従わない人(ノンコンプライアンスというようだ)を報告させるようにすれば自粛警察のような嫌がらせは減るだろう。

自粛警察については英語のQuoraでも質問したが会話がかみ合わなかった。おそらくアメリカでは積極的に報告させているので自粛警察のような嫌がらせが出てこない。自粛警察が出てくるのは政府が曖昧だからなのである。この曖昧さを取り除いて州が責任を持てば自粛警察の介在する余地は減らせる。

ケンタッキー州はダッシュボードという仕組みを持っていて郡ごとに数値を見ることができるようになっている。また、検査場所の地図も公表されている。

そもそもなぜABCがケンタッキー州知事を押すんだろうかと思ったのだが、おそらくは政治的意図がある。ケンタッキー州は11月の州知事選挙で大方の予想を裏切って民主党が僅差で勝った地域である。ABCには反トランプ政権の思惑があるのかもしれない。

州知事は僅差で選ばれたのだからそれなりの成果を出さなければならない。州知事は会見の中で「コロナウイルスがなくなったわけではないので気を緩めてはいけないが一緒に立ち向かって行きましょう」と言っていた。そのためにTwitterで「チームケンタッキー」というハッシュタグまで提案している。「チーム一丸となって」がケンタッキー流のようだ。

おそらく小池東京都知事が「23区は国とつながっている」と軽い気持ちで事実とは異なることが言えてしまうのはフジテレビのフィールドキャスターとその向こう側にいる視聴者を舐めているからだろう。日本人は他人を信用せずチームを作らないから政治のプロセスは気にしない。いわゆるお任せ民主主義の国である。こうなると「やったものがち」である。今回の事例を見て、おそらくお任せ型が進んだ都市部ほどサイコパス型の政治(あるいは気楽な嘘)が蔓延することになるのだろうなと思った。

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