Twitter上の左翼層と政権奪取構想

安保法制議論も一段落したので、Twitter上の右翼と左翼のつながり具合について調べてみた。前回の候補者の選び方を見直して、起点(0)が相互フォローしている安保法案に賛成の意見表明をしている人(右翼)と安保法案に反対の意見表明をしている人(左翼)を選んだ。その人たちがフォローしている人(1)を選んだ。1がフォローしている人を2として4までを辿った。選ぶ際に名前(反対派は「原発反対」とか「安倍を落とせ」などのフレーズを名前に入れている)を参考にしたので、ランダムというわけではない。

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前回と同じく左翼には強い関心の共有が見られた。大抵、反原発・反戦争法案などが見られる。時折、反TPPなどというフレーズもあった。いわゆる「左翼3点セット」だ。一方、右翼にはそれほど高い関心の共有は見られない。1組だけ関心を共有している人たちがいた。2と3の間には複数の共有アカウントがあり、反韓国・中国という話題を共有していた。中には反民主党というアカウントもあったが、彼らから見れば民主党は外国人(帰化はしているが)ばかりの「売国政党」だからだろう。左翼は特定の運動を通じて結びついているが、右翼の結びつきはそれほど強くない。

右翼は共有している政治家のアカウントも少なかった。唯一見られたのは安倍晋三と橋下徹という二大「強い政治家」だ。その他、片山さつきの名前もあった。左翼層は民主党(蓮舫、細野豪志)と社民党(福島瑞穂)などがフォローされている。今回選ばれなかったアカウントの中には「生活の党支持」を掲げているものもあるので、山本太郎などを支持している人もいるのではないかと思われる。

右翼層は、反韓国・反中国などで結びついている。いわば「ヘイト派」である。この人たちが明治憲法への回帰などの復古的な政策にどの程度同調しているのかはよく分からない。と、同時に左翼層の人たちも原発や戦争といった「汚い」ものを忌避しているのだが、それがどの程度共産主義(あるいは社会主義)への支持につながっているのかはよく分からないのである。左翼層は他人に対しての共感力が高いというわけでもないらしい。シリア難民保護や募金などと言った発想は見られなかった。

左翼層にとっての一番のチャレンジは考えを外に広げて行く事だろう。狭い共同体であることが予想され(検証は必要だろうが)るので、コミュニティとしての広がりはないのではないかと思われるからだ。「あの政治家は嫌いだ」と呟いているだけでは、議員を落選させることはできない。

左翼層は「原発・戦争・TPP」などの反対している。つまり、意識はなくとも「反米路線」と言える。政権を担当した党はどれも、自衛隊を認め、原発を容認するなど政権獲得後に親米・追米に路線転換している。すなわち、共産党が提案する「国民連合政府」がそのまま支持を集めることができるかは、はなはだ疑問である。また、こうした層がどの程度幅広く存在するかはまだ未知数だ。

顕在化した層は「好き」ではなく「嫌い」で結びついている。かつての無党派層が「官僚への敵意」で投票行動を起したのを思い起こさせる。しかし、脱官僚を唱い自民党をぶっつぶすといった小泉政権は官僚を潰さなかった。官僚から利権を取戻すといった民主党政権は後に官僚派に転じ消費税を増税した。中国に厳しく対峙してくれそうな安倍政権が誕生しても中国は依然として世界第二位の経済大国だ。安保法案はアメリカに便宜供与をしているだけなので、特に中国を潰す行動にはなっていない。

政党が「ヘイト」を利用するのは構わない。しかしヘイトには瞬発力はあっても持続性はない。振り向いてもらうきっかけにはなるが、これを積極的な応援運動への参加へ転換してゆかなければならない。積極的な応援運動とは簡単な動作でできる「勝利可能」な行動だ。成功体験を積み重ねてゆけば、やがて大きな目標へ到達することができるだろう。

その為にはまず、行動の受け皿になる政治的な集まりを作り、小さな行動から大きな行動へとつながる行為設計を行わなければならない。離反者が出る事も考えれば、1年未満という時間は決して長くはないことが分かる。

何が分からないのかすら分からない人たち

Twitterで政界再編と政権交代を熱望している人を見かけた。政界再編を望むはいいのだが、何も重要な法案の成立前にやらなくてもいいだろうと思って突っ込んだところ、返事が返って来た。政界は「ガラガラポン」が必要なのだそうだ。

政界再編は結局のところ邪魔者はずしだ。維新の党は大阪系が邪魔だと考えており、民主党の中には旧社会党系や帰化外国人(あるいはハーフ)が邪魔だと思っている議員がいるのではないかと思う。そこで「誰を排除すべきなのか」と聞いてみた。

返って来た答えは意外なものだった。名目経済・リフレ・マクロ経済がいけないのだという。「名目経済」という用語はないので、学生かなんかだろうと思った。「金融緩和を起してもインフレ率だけが上がるだけで、国民は豊かにならない」くらいの意味なんだろうなあと解釈した。

しばらくすると、各党の平和と経済に関する採点表が送られてきた。経済の項目で合格点のついた政党はなく、民主党と共産党だけが空欄になっていた。多分、実体経済に直接働きかける政策を持つ政党がないのがお気に召さないのだろう。

ここで気になるのは、現在の政党が実体経済に直接働きかける政策を持っていないのに、どうして政界再編するとそうした政策が出てくるのかという問題だ。尋ねてみた。

するとまた意外な答えが返って来た。小泉・竹中路線がいけないというのだ。実体経済を無視し、資本経済に走ったことを責めていた。

この人は明らかに質問に答えることを避けている。つまり、どうしたら自分の考える理想の経済状態を作ることができるのかが分からないのだ。そこで、政党さえ組み替えれば、そうした状態が出てくると思っているのだろう。合理的に考えれば、政党が組み変わっても議員は同じなので、新しいアイディアが出てくる可能性はないことが分かる。例えていうならば、大吉が入っていないおみくじを引き続けるようなものだ。

そもそも経済政策理論についての理解がないようだ。リフレ政策は名目経済成長率をあげる政策だが、小泉・竹中路線は(少なくともこの人の考えに基づけば)資本経済に働きかけている。それぞれ対義語は実質経済成長率と実体経済だ。この2つ(実質と実質)がごっちゃになっているのだろう。

政府が直接働きかけて給与や需要を決定する経済を「計画経済」という。つまり、この人が指向しているのは多分共産主義だろう。だが、自分が共産主義者という自覚はないに違いない。日本では戦時中に革新官僚のもとで実施された戦時経済がそれに近い。野口悠紀雄は「1940年体制」と呼んでいる。

問題は、この人が何が分からないか分かっていないという点だ。にも関わらず豊富に情報が流れてくる(しかも新規情報探索には中毒性がある)ので情報に溺れてしまうのだろう。

もしこの手の人たちの目の前に「速効性のあり」「誰もが分かる」経済政策が出てきたらどうなるだろうか、と考えてみた。多分、多くの人がこうした政策に飛びつくに違いない。しかし、こうした「分かりやすい」政策はおそらく詐欺だし、国民を騙してでも政権につきたい政党は独裁政権に違いない。

気になってこの人のプロフィールを見たところ、学生ではなく経験豊富な経営コンサルタントということだった。たくさん本を読んでいそうな人でも、こういう考え方をするんだなあと考えた。そして、心底恐ろしくなった。