AbemaTVで「Produce X 101」を見ていた。番組が進むにつれて「この人は絶対に入るだろう」となっていた候補生が脱落するのを見て「ああ、事務所との調整がうまく行かなかったんだろうなあ」と思っていた。つまり、ある程度操作はあるだろうなと考えて見ていた。
だが番組はプロデューサーの逮捕という衝撃の結末を迎える。民意を弄んだツケは大きかったと言える。番組を押し上げたのも民意だったのだが、逮捕のきっかけになったのも民意だった。韓国は日本と違い共和制国家なのだなと思った。よく「国民情緒法」などど言われるが、それが本来の民主主義国のあり方なのである。このため民意を味方につけると支援が得られやすくなるが、それにより葬られる可能性もある。民意というのはつくづく恐ろしい生き物だと思う。
前のグループWanna Oneは活動期間が短かったのだが、今回のX1は活動期間が長くなることが予想されていた。事務所としては、人気がそこそこのタレントはグループに預けた方が露出が増えるわけだが人気がある人は自分のプロダクションで抱えた方が良い。これくらいの算数は誰にでもわかる。例えばイ・ジニョクは非常に人気が高く、最終的に脱落したのちにバラエティなどでも人気になっているようだ。この程度の操作であれば多分外に漏れることはなかっただろう。
だが、韓国ではなぜかこれが詐欺事件となってしまい逮捕者が出てしまった。発端になったのは「投票結果が不自然に揃っており怪しい」という疑惑だった。ファンの中から「真相究明委員会」が作られ、まずはケーブルテレビ局MNetへの告発運動が起きた。これが7月のことだった。番組は名前の通り練習生を101名集めるところから始まる。大勢の中から選ばれているから優れているということなのだから、脱落者を集めなければならない。参加プロダクションも多かったことから操作が大掛かりになったようだ。つまり最終調整ではなく、最初から調整が行われていたことになる。
一連の番組はMNetというテレビ局の制作なのだが、実際に制作を担当しているのはCJ ENMという会社である。そしてタレントはそれぞれのプロダクションから出てきている。どうやらプロダクションがCJ ENMのプロデューサを性接待しているらしいという疑惑が出てきた。そして、CJ ENMのプロデューサらが逮捕されてしまい疑惑は本物だったということになってしまった。今のところどのプロダクションの関係者が接待する側に回っていたのかはわからないのだが、過去の練習生の中からは「あらかじめ曲を教えてもらえていた練習生もいるだろう」などと囁く声も出ている。
KStyleによると逮捕されたアンプロデューサはX1とIZ*Oneが選抜された番組での投票操作疑惑を認めたそうだ。日本円にして1,000万円程度の接待もあったという。そしてテレビ局MNetは告発側に回っている。何も知らなかったというわけである。逮捕容疑にはテレビ局への業務妨害・背任などが含まれる。つまり、形式上は国民を裏切ったということではなくテレビ番組をきちんと制作しなかったことが罪になっている。
制作会社と企画会社などを家宅捜索した警察は、彼らについて詐欺と業務妨害、背任などの容疑を適用した。
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日本であればここまで厳しいことにはならないだろうと思う。なんとなく裏でまとめてしまい表向きは何もなかったことにした上でシリーズを廃止するというような措置をとるだろう。騒ぎが大きくなればテレビ局の管理責任が世論から追及されるからだ。
韓国ではネット世論の影響が強い。さらに88民主化運動が草の根で盛り上がったという独自の歴史があり「庶民が政治を動かす」という世論が徹底しているようだ。今回も「国民プロデューサ」という世論で作られたアイドルというコンセプトなので、騙されたと感じた世論の怒りは、誰かの逮捕というところまで行かなければ収まらなかったということになる。
真相究明委員会は「本来のランキング」の公開を求めているそうだ。脱落者の中にも実力者がおりその実力者を集めてBy9という別グループを作って欲しいという声まで出ていたから、これは当然の要求かもしれない。
今後はX1とIZ*Oneの活動に焦点が移る。ファンは練習生はこのことを知らなかったことにして欲しいと思うのではないかと思う。プロダクションが接待していたとしてもタレントに罪があるわけではない。当初あからさまに推されていたのに実力が伴わずデビュー組に入らなかった人もいる。つまり実力がなければデビューはできていないのである。
実際にIZ*Oneの活動には影響が出ており新曲発売(韓国ではカムバックという)が中断されているようだ。X1は予定通りスケジュールをこなすという。X1は疑惑がわかってから活動を始めたので地上波への露出はそれほど多くなかった。そのため「放送の可否を判断」などと報じられているIZ*Oneの方が見かけの影響が大きい。
投票結果が操作されていたとはいえ、X1が実力のないチームであるということにはならないのだが、MNetは操作の間中「これといった立場はない」と慎重な立場を示していた。つまり、今後X1が早期解体される可能性もなくはない。MNetが応援してもCJ ENMがなくなってしまえば活動は難しくなるかもしれない。中にはデビューしても売れなかったためにオーディション番組に何回か参加してやっとデビューできたというメンバーもいるようなので、気の毒な話である。
CJ ENMは日本では吉本興業と組んで日本版のProduce X 101を放送中だ。こちらはソフトバンクグループのGYAOで放送されていて12月にメンバーが決まる予定である。だがCJ ENMが絡んでいる以上「無傷」ではすまないかもしれない。不幸中の幸いというべきか日本では番組自体があまり中もされておらず、したがって韓国本国の一連の騒ぎとはリンクされていない。韓国の番組を見ていた人は国民プロデューサーというコンセプトを理解していると思うが、日本の番組だけを見ている人には何のことだかわからないかもしれない。