NHKが印象操作を試みるもあえなく失敗に終わる

安倍首相がメルケル首相を訪問した。NHKのニュースによると概要は次の通り。

  • 安倍首相はお城に招かれた。(特別待遇がほのめかされている)
  • 安倍首相はドイツにさらなる財政出動を要請した。
  • メルケル首相は、ドイツに移民が流入しており内需は喚起されていると語った。
  • 財政出動については、引き続きG7で協議することにした。
  • メルケル首相は日本のリーダーシップのもとで力強いメッセージを発することに賛同した

ところが、事前に様々な情報が出回っている。総合すると次の通り。報道の中で何がぼかされているのかがよく分かる。

  • 安倍首相はメルケル首相は、ドイツは難民の流入もあり、既に十分に財政出動していると主張し、安倍首相の提案をやんわり断った。(あるいは、両者は認識に違いがあることが分かった)
  • メルケル首相は、G7では代わりに規制緩和や財政規律などについて話し合いたいと語った。
  • メルケル首相は、競争的な通貨切り下げには勝者はなく、為替相場の安定が重要との認識を示した。
  • メルケル首相は、日本にNATOのメンバーシップをオファーし、フランスやイギリスを説得できると語った。

TBSでは「メルケル首相は財政出動について明言を避けた」としていて「課題が残った」としている。このラインがぎりぎり公平と言えるのではないかと思う。NHKのニュースだけを見ると、日本のリーダーシップにメルケル首相が賛同したという印象が得られる。だが、事前に様々な情報が入っている人から見ると、安倍さんはメルケル首相に相手にされていないことが分かる。それどころか安倍さんの政策や主張に釘を刺す発言もある。すると、却ってしらけた印象になってしまうのだ。

情報ソースは主に2つある。一つはクルーグマン教授の「東京で話し合われたこと」というものだ。安倍首相は「ドイツに財政出動させるにはどう説得すればいいか」とたずね、クルーグマン教授に「外交は専門外」だとやんわりと断られている。ノーベル賞学者を呼んでもこの程度のことしか聞けないのかと国民をあきれさせた。もう1つの情報ソースは外国の通信社などである。こちらはグーグル検索すれば簡単に手に入るし、Twitterでも情報が飛び交っている。特に専門知識は必要がない。

特にNATOの下りは重要だろう。第一に日本は集団的自衛権を行使できないので、NATOには加盟できない。しかし、日米同盟は別口と考えられている。「だったら、NATOにでも入れますよね」というのは、日本のダブルスタンダードに対する皮肉だ。次に、安倍さんは今回の旅行でロシアを訪問することになっている。ロシアとヨーロッパは緊張関係にある。NATOはロシアに対抗するための装置である。そこで、メルケルさんは「あなたはいったいどっちの側なの?」と迫ったわけである。

安倍さんのコウモリのような態度(日米同盟に臣従する態度を見せつつ、ロシアにも接近する)は警戒されているし、平和憲法を空文化してアメリカとの集団自衛にコミットする姿勢もあまりよくは思われていないのではないかと考えられる。

各社ともメインで伝えていないところを見ると、NATOの件は、何かのついでにほのめかしただけのようである。

よくNHKは大本営だという人がいるが、大本営が成り立つためには情報が遮断されていなければならない。ところが実際には様々な情報が飛び交っているから、大本営発表は単なる道化にしかならない。日本のマスコミはそのまま権威を失ってゆくのではないかと考えられる。

また、NHKだけでなく、特定の情報を鵜呑みにする(これは、NHKだけでなく、左派や右派、ないしは自分の専門だけの情報ソース)ことの危険性も示唆している。

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