LINEが日本のアジア差別を次のフェイズに加速させた

LINEをめぐる扱いが日本人の中国人に関する差別意識を色濃く反映しているという話を書く。「誰も語りたがらない」という点に特徴があるように思える。漠然とした不安や漠然とした差別意識は誰も直視したがらないからである。だから却って差別が蔓延する。さらに話が拡散する過程を観察するとデマの広がり方と一緒である。曖昧な情報が不安に乗って拡散しているのだ。




多くの人が使っているメールやチャットサービスは「誰かに覗かれている」つもりで利用した方がいい。いくら暗号化されているからとはいえ人が作ったものは完璧ではないからである。だがLINEを使う層の人たちはそうは思っていなかったようだ。マイナンバーカードやクレジットカード番号とセキュリティコードなどを流していた人がいるという報道を盛んにやっていた。みんなやっているから安心ということなのだろうがそんなことはあり得ない。

事の発端は朝日新聞の報道だったようである。LINEが中国に業務を委託していて個人情報が誰にでも扱えるような状態になっていたようだという報道であった。実際にアクセスした人もいたらしい。朝日新聞の独自記事だった。

その後のIT系の記事を見るとソフトバンクとの統合過程で見つかり対策をとって自主的に報告したということがわかる。これがどのような経緯で朝日新聞に伝わったのかはわからない。あるいは悪意ある伝達だったのかもしれない。

NTT会食疑惑で時期事務次官候補が潰された今、おそらく総務省の中はガタガタになっていて系統的な判断はできなくなっていると見るのが無難だろう。トップ候補がおそらく内輪揉めで粛清されたわけだから総務省内は今疑心暗鬼でいっぱいなのではないかと思う。武田総務大臣に至っては「国会中に意識が飛んで」無意識であらぬことを呟いてしまったらしい。この説明が本当だとしたら心神喪失状態にあることになる。正常な判断は期待できないだろう。

政府総務省のガバナンスがこのような状態にありニュースは思わぬ方向に転がってゆく。TBSの夕方のニュース番組のキャスターが「中国は共産党政権が命令すれば情報提供をしなければならないことになっている」というような前置きを置いて報道したりあるいはフジテレビが「漏れると困る個人情報はなんですか?」というようなインタビューを流し始めた。

根拠なき中国バッシングが始まったのだが「コンプライアンス上」ほのめかすだけに終わっている。曖昧な報道は却って視聴者を怯えさせることになっただろう。こうなると人々は持っている知識で判断することになる。それは多分に偏見を含んでいる。

個人情報が漏れたという事実は確認されておらずおそらく対策もやっている。だから報告したのだろう。だが、マスコミは「中国は何か怪しい」という前提でほのめかすような報道を出し続けた。さらに総務省は色々な問題で叩かれていて総務省も形式違反であっても見逃すわけにはいかないという空気がある。さらに視聴者には十分な知識がない。

「デマ」の条件は整った。

ついには千葉県市川市でLINEによるサービスを停止するという動きがあった。市民からのクレームがくれば「安心安全」の観点からサービスを続けるわけにはいかないだろう。SNSに乗ってニュースが拡散する。

参議院の予算委員会では自民党の山田宏参議院議員がCOVID-19は武漢ウイルスと呼ぶべきだと持論を展開しつつLINEの問題も追求した。これに対応する形で総務省は総務省での使用も中止すると発表した。同時に自治体にも調査を依頼するという通達を出したようだ。

これは明らかに中国差別である。アメリカだったらこんなことにはならなかっただろう。またマイナンバーでも情報は漏洩しているが自治体と政府が最初から防衛的な情報工法をするので「マイナンバー中止」という世論が盛り上がることはない。相手が中国であり一私企業だからここまでエスカレートしたといえる。

だが、それを当事者たちは語りたがらない。色々な人たちがいる。

  • 中国に対して差別感情を持っている人たちがいる。彼らは色々な手段で中国を貶めたい。
  • 漠然とテクノロジについて理解している人たちがいる。漠然と中国は危ないかもしれないと思っている。いわゆる安心安全を求める人たちである。中には一見コンピュータテクノロジーに詳しそうな人も混じっているかもしれない。
  • LINEのコミュニケーションから排除されている人たちがいる。8,400万人とか8,600万人に広がっていると言われている。つまり、ここから排除されている人たちのなかにこれからLINEを攻撃する人も出てくるだろう。

だが、この他にこれから別の層の人たちが加わるのではないかと思う。普段Quoraで中国人と日本人の議論を聞いていると中国人にはかなわないなと思う。彼らはおそらく幼い頃から競争のある社会で揉まれ「理」を大切にする教育を受けている。さらにQuoraにはBNBRという原則があり個人や相手の文化を尊重しなければならないことになっている。だから議論をすると日本人は負けてしまうのだ。

では日本人がこれに納得するかといえばそんなことにはならない。鬱屈した感情が溜まってゆき裏でほのめかすように差別意識を開陳することになる。日本人は裏で色々言い始める。否定されればされるほど裏の顔は陰湿で粘り強くなる。

良識のある人は同胞に差別意識があるということを認めたくないのでこの話題については語りたがらないだろうが、差別としては新しいフェイズに入ったと言える。

当事者たちが対応しているので、中国人に味方する善意の第三者ぶって中国擁護するのも控えたい。彼らは彼らで「日本人は全て中国人に敵意を持っている」と考えているのでこの話題に触れただけで攻撃してくる。

またアメリカのアジア系女性差別やそのほかの差別問題にも言えることである。被差別当事者というのはVictimize(犠牲者化)して哀れみの対象になることを嫌う。

こうして戦狼を化した彼らの味方はいなくなる。

ソフトバンク側は割と冷静に対処しているようだ。外部有識者を含む検討を始めたということである。おそらくあとはほとぼりが冷めるのを待つということになるのだろうがRCSのような次世代のサービスも出てきているのでLINEはこのあたりがピークだったということになるのかもしれない。

Google Recommendation Advertisement



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です