避難経路マップを作る

防災をネタにGoogleMapのAPIを勉強している。今回は避難経路マップを作る。HTMLとJavaScriptのプログラミングが必要だが、Googleのサンプルをほぼそのまま使うので、コードを書く必要はほとんどない。

 

まず、近所の避難場所の情報を集めてくる。

住所があれば良いのだが、小学校名や施設の名前でも検索ができる。

次にGoogleMapAPIのページからサンプルを取ってくる。持っていない人はGoogleAPIのキーも手に入れる必要がある。

このページの最初のサンプルはプルダウンメニューから出発点と目的地を選ぶようになっている。このプルダウンメニューのデータを書き換える。valueに入っている値を避難場所の名前(例えば「○○小学校」)などに変更するだけでよい。このままでは車で移動するルートを検索してしまうので、travelMode: google.maps.TravelMode.DRIVINGtravelMode: google.maps.TravelMode.WALKINGに書き換える。

本来であればAとBの位置を割り出し、ルートを検索し、受け取ったデータを地図上に解釈するという手続きが必要なのだが、それはすべてAPIがやってくれる。ズーミングも自動で行われる。つまり、何のプログラミングも必要ないのである。

directionsDisplay.setPanel(document.getElementById(“directionsPanel”));という一文を加え、displayエリアのdiv(idをdirectionsPanelとする)を追加すると経路図も表示してくれる。

出発点の住所を入力できるようにしたければ、プルダウンメニューをテキストボックスに書き換えてやればよいだろう。

このプログラムでは最短距離が自動的に検索される。ユーザーが自分で経路を考えたい場合にはdirectionsDisplay = new google.maps.DirectionsRenderer();directionsDisplay = new google.maps.DirectionsRenderer({draggable:true});と書き換える。すると、経路が動かせるようになる。経路を動かすと自動的に所要時間が再計算される。これもAPIでやってくれるので、自分でプログラミングする必要はない。

map持ち運び可能なタブレット端末がある場合には現地のロケーションを使用することも可能。現地ロケーションを探す機能をジオ・ロケーションと呼ぶらしく、情報取得のサンプルはここから入手できる。ここで取得した値を単にstartに代入すればよいだけらしい。つまり文字列が住所なのか施設名なのかそれとも座標なのかはGoogleで勝手に判断してくれるようだ。

今回は避難経路地図を例題にして勉強したのだが、もちろんこの地図は会社案内の道順案内にも応用が聞く。トラベルモードにトランジット(TRANSIT)という選択肢があり、乗り換え案内にも対応しているらしいのだが、アメリカ国内だけの対応らしい。試しに経路検索したところ、ロスアンゼルスからサンフランシスコまでバスで行けという指示になった。その内に日本でも導入されるかもしれない。

GoogleMapでご近所の災害マップを作る

GoogleMapを使うと写真をマップ上で共有することができる。この仕組みを使うと様々な地図を手軽に作成できる。例えば、防災情報などを集めておくと「近所の災害マップ」を作れる。地域で共有すれば避難経路などを話し合うのに役立つかもしれない。もちろん、旅行の記録を保存したり、ラーメン屋マップを作る事もできるだろう。

最低限必要なものはGPS機能のついたスマホ作業ができるパソコンだ。プログラムが必要のない方法もあるが、JavaScriptとPHPの簡単な知識があればより高機能な地図を作る事もできるだろう。

まず、iPadやiPhotoなどのスマートフォンを使って近所の危険箇所の写真を撮影する。すると、自動的にGeocodeという位置情報が記録されている。ガラケーの場合、写真を撮影したら手動でGPSデータを付加する必要がある。こうした位置情報をGeoコードとかGeoタグと呼ぶ。

最も簡単な方法:Picasa Webを使う

picasaまず、Googleのアカウントを作る。次にPicasa Webに行きGoogleアカウントでログインする。次に右上にある歯車マークにマウスを合わせ[設定]を選択する。設定では[場所]にある二つのチェックボックスを選択しておく。すると写真についている位置情報がサービスに反映されるようになる。これを忘れるとPicasaにアップロードしたデータには位置情報が付加されず、手動で付け直さなければならなくなる。

iPhoneを持っている場合、Google+アプリをダウンロードし[設定]から[インスタントアップロード]をONにする。すると全ての写真がPicasa WebとGoogle Photoにアップロードされる。一度パソコンに取り込んでからアップロードすることもできる。PicasaではGPS機能のないデジカメで撮影した写真にも位置情報を追加することができる。

picasa2

Google+からアップロードした写真は「インスタントアップロード」という場所に保存されるので、アルバムを作り、何か名前をつけて保存する。パソコンから保存した写真はアルバムを作って管理しておく。写真には簡単な説明を付けることができる。写真の下にある[説明を追加]を選ぶと説明を付けることができる。

Picasa Webでアルバムを選択する。右端の[このアルバムへのリンク]に[メールやIMにリンクを貼り付け]という項目があるので、そこにあるURLをコピーする。マップを見るためには[マップを表示]をクリックする。

 

少し複雑な方法:KMLを使う

KMLはいくつかの方法で作る事ができる。Picasa Webの場合[Google Eearthで表示]をクリックするとKMLをダウンロードできる。これをGoogle Mapに持ち込みマイマップに読み込ませるとオリジナルの地図が作成される。

googlemap
ご近所の呟きデータをKMLにまとめてGoogleMapで表示させた例

KMLは簡単なフォーマットなので手描き(あるいはプログラミングで自動的に作成)することもできる。Twitterの呟きにもGeoコードが付加されているものがあるので、GoogleMapに持ち込んで読み込ませることが可能だ。

最も複雑な方法:プログラミングする

GoogleMapAPIを使って地図を作成する。GoogleMapAPIを使うためにはAPIキーを取得する必要がある。APIキーは全てのGoogleサービスで共通。プロジェクトを作ってから必要なサービス(この場合はGoogleMap)を起動する仕組みになっている。

GoogleMapAPIのチュートリアルから適当なコードを拾って最初のマップを作る。Google検索すればチュートリアルがいくつも見つかるが、古いもの(verrsion 2)のコードが多く出回っており、使えない可能性がある。

写真にはEXIFと呼ばれる標準化されたフォーマットがあり、位置データも保存されている。

PHPを使い、写真から位置データを抜き出す。$exif = @exif_read_data( $img );というコードで簡単に抜き出せるが、ここから先が意外と大変だ。場所データが特殊な形をしており、そのままでは地図に使えない。10進法のデータを60進法に編集する必要がある。$data = convert_float( $gps[0] ) + ( convert_float($gps[1])/60 ) + ( convert_float($gps[2])/3600 ) ;というコードを書いてくれている人がいたので、それをそのまま使わせてもらった。南緯と西経はマイナスデータに置き換える必要があるらしい。return ( $ref==’S’ || $ref==’W’ ) ? ( $data * -1 ) : $data ;という式を使うそうだ。

写真からGeoコードを抜き出したら、これを使って地図のセンターポジションを設定する。例えばこんな感じ。

function initialize() {
var place = new google.maps.LatLng($lat,$lng);
var myOptions = {
zoom: 15,
center: place,
mapTypeId: google.maps.MapTypeId.ROADMAP
}

map = new google.maps.Map(document.getElementById(“map_canvas”), myOptions);

複数写真がある場合はそれぞれのGeoコードデータを読み込んだ上で次のように設定することができる。

<img style=”cursor: pointer;” src=”$img” alt=”” />

Googleのチュートリアルにはサーチボックスを使って住所からGeoコードを抽出するためのコードが掲載されている。これを使って、Geoコードを調べるミニアプリを作る事もできる。Geoコードを自動で集めてデータベースに収集するのは規約違反らしいので注意する必要がある。

GoogleMapとTwitterであなたの回り半径3kmで起こっていることを調べる

GoogleMapAPIを使ってみることにした。JavaScriptはよく分からないのだが、Googleが公開しているサンプルコードをそのままコピペしてみるときちんと動作した。GoogleMapはKMLというファイルを読みこんでレイヤー表示することができる。何かできないかなあと思って、以下の要領で試してみた。

  • まず、GoogleMapAPIを使って任意の場所の座標を調べる。
  • 次にTwitterAPIを使って任意の場所の周辺で呟かれたツイートを抽出した。式はhttps://api.twitter.com/1.1/search/tweets.json?count=100&geocode=35.6625031,139.73192029999996,2kmのように書く。これは六本木6丁目の周囲2kmで呟かれているツイートを抽出せよという意味だ。位置情報を示すデータはgeocodeと呼ばれる。
  • このデータをKMLというファイルに整形する。手作業でやるのは大変なので予めプログラミングして置くとよい。
  • このKMLファイルをGoogleMapに読み込ませて表示する。下記のような画面が得られた。
  • このプログラムはバージョン2でも3でも動作した。2はかなり昔に終っているバージョンのはずだが未だに動かしてくれているらしい。古いAPIを切り捨ててしまうサービス(例えばTwitterやFacebook)もあるので、有り難い限りだ。

googlemapKMLファイルはかなり強力にキャッシュされるらしい。頻繁に情報が更新されるデータなどに使うのはやめた方がよさそうだ。CData形式にしておくと、httpで始まるテキストには自動でリンクが貼られている。

場所付きのデータはかなり多く見つかった。最近流行っていると思われる、スマホを使って場所をチェックインするサービスが普及しているようだ。たいていのデータは「どこで買い物をした」とか「どこで食事をした」などといったたわいもないものだった。イベントなどがあれば参加者の反応を見る事ができて面白いのかもしれない。

意外に思われるかもしれないが、これらのツイートのほとんどが公開されており、誰でも利用することができる。個人情報とか守秘義務などを気にする人はGPS機能を切っておいた方がいいのかもしれない。

KMLファイルは手動で作る事もできるが、最近のスマホカメラ(iPhoneやiPadなど)には最初から場所のコードが添付されている。これをPicasaにアップロードする。PicasaにはKMLファイルを出力するオプションがあり、コメントなども付加することができるので、プログラミングなしで情報の共有地図を作る事も可能だ。災害情報を近所と共有したり、お薦めのお店マップを作ったりと様々に応用できそうだ。

Twitterを使ったお手軽テキストマイニング

Twitter APIを使うと、特定の用語を含むツイート(直近100件)を抽出することができる。式はhttps://api.twitter.com/1.1/search/tweets.json?count=100&q=内閣改造のような形式だ。

本来なら、取得したデータを品詞ごとに分解してネットワーク解析を行う必要がある。Rを使うRMeCabというパッケージが有名だが、最近更新が止まっているらしい。いずれにせよ素人にはなかなかハードルが高い作業だ。そこで「無料ツール」を探したところ、オンラインで形態素解析をしてネットワーク図まで作ってくれるツールを見つけた。どの用語が使われているかを品詞ごとに分解してダウンロードすることもできる。

内閣改造を検索したところこのような結果が出た。もっぱらの噂は新しい農水大臣森山裕氏だ。どうやら暴力団絡みの黒い噂があるらしい。検索したところこのような記事が見つかった。河野太郎氏に期待が集っているように思えたので、ツイートを見てみると「生け贄として囲い込まれた」という記事が人気を集めているらしかった。何かと世知辛い。

他の政党に対するツイートの傾向は下記の通り。維新で検索すると西尾維新という小説家の名前の方が多くひっかかるという難点もある。

もっとも、Twitterで一度に取得できるツイート数の上限は100件なので、これくらいであれば手作業で見た方が早いのかもしれない。大雑把な傾向をテキストマイニングで見つけて、あとはコツコツと元データを当たるというのがいいのかもしれない。

CytoscapeとRでTwitterネットワークを概観する(技術篇)

Twitter APIでデータを集める。APIは JavaScriptや PHPからアクセスすることができる。最新版のRであれば直接アクセスすることも可能だ。今回は安保法制賛成派(右翼)と反対派(左翼)でそれぞれ4人を選びネットワークを作った。

TwitterデータからSIFファイルを作る。SIFファイルはusername1 follow username2のような形式をしている。

Cytoscapeに読み込ませて、並べ替え(Spring Embedなどを使う)て概要を掴む。データが大きくなると並べ替えに時間がかかるので、手作業で1名からフォローしているだけ、されているだけの人を取り除いた。

CytoscapeからGMLファイルを書き出す。

Rで読み込む。予めライブラリigraphを読み込んでおく。library(igraph) と read.graph(,format=”gml”)

コミュニティを調べるために下調べする。edge.betweenness.communityなどを使うが、いくつかの違った分類法を使うことができるが、方法によって精度や計算時間などに違いがあるらしい。

コミュニティを分割する。コミュニティの数が集約するまでNの数を増やして行く。詳しい事は分からないが、影響のないエッジを消していっているいるらしい。community.to.membership(g,data$merge,step=N)

データセットを作成する。data.frame(membership=d$membership,label=V(g)$label,betweenness=betweenness(g),closeness=closeness(g))

データセットを書き出す。write.table(df,file=”data.txt”)

エクセルなどに取り込んで betweennessで並べ直す。数値が大きければ中心にあることが分かる。

属性テーブルに編集し直すと(ID名 = メンバーシップ)Cytoscapeに取り込むことができる。ファイルの先頭に1行加えておくこと。それが属性名になる。

新しいビジュアルスタイルを加える。 Node Shapeを選び、Discrete Mappingを選ぶと属性ごとに色分けができる。Betweennessやclosenessを属性を利用して中心に近い円ほど大きく表示する事もできる。

手作業で並べたもの。大体正しくグループ分けされていることが分かる。ただし、異なるグループが共有されているアカウントはランダムにグループ分けされているらしい。黄色とオレンジが安保法案反対派(左翼)で、残りが安保法制賛成派(右翼)に属する。右翼は結びつきが薄いのでそれぞれ別グループを形成している。

colornetwork1

機械的(Spring Embed)に並べ替えたもの。

colornetwork3

Twitter上の左翼層と政権奪取構想

安保法制議論も一段落したので、Twitter上の右翼と左翼のつながり具合について調べてみた。前回の候補者の選び方を見直して、起点(0)が相互フォローしている安保法案に賛成の意見表明をしている人(右翼)と安保法案に反対の意見表明をしている人(左翼)を選んだ。その人たちがフォローしている人(1)を選んだ。1がフォローしている人を2として4までを辿った。選ぶ際に名前(反対派は「原発反対」とか「安倍を落とせ」などのフレーズを名前に入れている)を参考にしたので、ランダムというわけではない。

twitter_network2

前回と同じく左翼には強い関心の共有が見られた。大抵、反原発・反戦争法案などが見られる。時折、反TPPなどというフレーズもあった。いわゆる「左翼3点セット」だ。一方、右翼にはそれほど高い関心の共有は見られない。1組だけ関心を共有している人たちがいた。2と3の間には複数の共有アカウントがあり、反韓国・中国という話題を共有していた。中には反民主党というアカウントもあったが、彼らから見れば民主党は外国人(帰化はしているが)ばかりの「売国政党」だからだろう。左翼は特定の運動を通じて結びついているが、右翼の結びつきはそれほど強くない。

右翼は共有している政治家のアカウントも少なかった。唯一見られたのは安倍晋三と橋下徹という二大「強い政治家」だ。その他、片山さつきの名前もあった。左翼層は民主党(蓮舫、細野豪志)と社民党(福島瑞穂)などがフォローされている。今回選ばれなかったアカウントの中には「生活の党支持」を掲げているものもあるので、山本太郎などを支持している人もいるのではないかと思われる。

右翼層は、反韓国・反中国などで結びついている。いわば「ヘイト派」である。この人たちが明治憲法への回帰などの復古的な政策にどの程度同調しているのかはよく分からない。と、同時に左翼層の人たちも原発や戦争といった「汚い」ものを忌避しているのだが、それがどの程度共産主義(あるいは社会主義)への支持につながっているのかはよく分からないのである。左翼層は他人に対しての共感力が高いというわけでもないらしい。シリア難民保護や募金などと言った発想は見られなかった。

左翼層にとっての一番のチャレンジは考えを外に広げて行く事だろう。狭い共同体であることが予想され(検証は必要だろうが)るので、コミュニティとしての広がりはないのではないかと思われるからだ。「あの政治家は嫌いだ」と呟いているだけでは、議員を落選させることはできない。

左翼層は「原発・戦争・TPP」などの反対している。つまり、意識はなくとも「反米路線」と言える。政権を担当した党はどれも、自衛隊を認め、原発を容認するなど政権獲得後に親米・追米に路線転換している。すなわち、共産党が提案する「国民連合政府」がそのまま支持を集めることができるかは、はなはだ疑問である。また、こうした層がどの程度幅広く存在するかはまだ未知数だ。

顕在化した層は「好き」ではなく「嫌い」で結びついている。かつての無党派層が「官僚への敵意」で投票行動を起したのを思い起こさせる。しかし、脱官僚を唱い自民党をぶっつぶすといった小泉政権は官僚を潰さなかった。官僚から利権を取戻すといった民主党政権は後に官僚派に転じ消費税を増税した。中国に厳しく対峙してくれそうな安倍政権が誕生しても中国は依然として世界第二位の経済大国だ。安保法案はアメリカに便宜供与をしているだけなので、特に中国を潰す行動にはなっていない。

政党が「ヘイト」を利用するのは構わない。しかしヘイトには瞬発力はあっても持続性はない。振り向いてもらうきっかけにはなるが、これを積極的な応援運動への参加へ転換してゆかなければならない。積極的な応援運動とは簡単な動作でできる「勝利可能」な行動だ。成功体験を積み重ねてゆけば、やがて大きな目標へ到達することができるだろう。

その為にはまず、行動の受け皿になる政治的な集まりを作り、小さな行動から大きな行動へとつながる行為設計を行わなければならない。離反者が出る事も考えれば、1年未満という時間は決して長くはないことが分かる。

右翼と左翼 – ネットワーク的研究

今回の安全保障関連の議論は「国民を二分した」と言われる。Twitter上では安倍首相を応援する側(仮に右翼とする)と反対する側(仮に左翼とする)に大きく割れた。そこで、ネットワーク上で右翼と左翼になんらかの違いがあるのかどうかを調べてみることにした。まず 10名のアカウントを集めた。ツイートの内容によって、右翼、左翼、そしてポジションなしに分けた。ポジションなしとは特に安保法案に関心のない人たちだ。

TwitterAPIを通じて彼らのフォロワーとフレンドリストを採取する。1度に取れる情報は200件まで(つまり全てではない)だ。それをSIFフォーマットに落とし、Cytoscapeというネットワークビジュアル化ソフトに落とし込んだ。10名の関係先だけで3,000ほどある。これでは扱いにくいので一方的にフォローしているかフォローされている先を削った。これで関係先を500ほどに減らす事ができた。これを主に手作業でまとめると下記の絵を得る事ができた。

twitter_network

当然のように「ポジションなし」同士には細かな連携はない。これは興味の対象があまり一致していないことを示している。しかしながら、全く興味分野が一致しないということはあり得ない。芸能人やニュースサイトなどが重複しているからだ。不思議なことに「右翼」同士にも緊密な連携はなかった。1つだけ目立った連携が見られたのは右翼に属する人とポジションなしに属する人の間に見られたアップル関係の重複だ。たまたま、二人の趣味が一致してたのかもしれない。この2人は相互フォロー関係にある。

ところが左翼サイドは状況が一変する。4人の間には共通の情報ソースが複数ある。試しにいくつか覗いてみたところ同じような内容(脱原発、反安保法案)が書き込まれていた。お互いが納得できる内容を共有し合っているものと思われる。良い言い方をすれば「左翼サイドの連帯は強い」と言える。悪い言い方をすれば彼らの世界は「閉鎖的で狭い」可能性があるだろう。こうした空間から情報を取っていると「全ての人が安保法案に反対している」と考えるようになっても不思議ではない。

よく考えてみれば、有名な人(例えば政治家や学者)を例外にして、右翼と左翼の一般人が罵り合う(もしくは議論する)という図式は見られない。右翼同士はフォローしあっているにも関わらず、共通の情報源を持っていない。つまり、お互いに議論をしあっている形跡も見られない。これは当然の話かもしれない。右翼は中国や韓国への蔑視つまり「ヘイト」で結びついているだけで、特に何らかの運動を共有しているわけではないからだ。

ここから得られる仮説は単純だ。いわゆる左翼と呼ばれる人たちを動員するのは簡単だろう。彼らの運動に同調すればよいからだ。同じ情報源を共有しているので考え方は同質だと考えられる。一方、右翼と呼ばれる人たちは既に自民党(ないしは次世代の党)などが中国や韓国と対峙してくれるものだと信じているので、特に働きかけをしなくても自民党を支持してくれるだろう。右翼層は民主党や社民党は売国奴の外国人に操られていると信じているのだが、最初からターゲットではないので気にする必要はない。

ここで問題になるのは、こうした人たちが全体でどれくらいいるのかが分からないという点だろう。いわゆるネトウヨと呼ばれる層は、実はそれほど大きくないことが分かっている。今回安保法案に反対した人たちも声は大きく、ネット上では固まって見えるが、どれくらいの人数がいるのか、実はよく分からない。多数派を占めると思われるポジションなし(あるいは無関心)層がどのようなメッセージに反応するかは分からない。全く政治に興味がない可能性もあるし、意思を表明していないだけということもあり得る。

安保法案についての議論が白熱する期間にはシリア難民の問題が起きた。左翼を人権に敏感なリベラルな層だと仮定すると、左翼層からシリア難民に対する同情や「日本も移民を受け入れるべきだ」という議論が起こっても不思議ではない。しかし、そうした議論は全く聞かれなかった。人権に対して進歩的な考え方を持っているというよりは、自分の価値観に合わないものを排斥しているだけ、なのかもしれない。

LINEはずしと嫉妬心

LINEをはじめとしたいじめについて考えている。本来、一部を除いた人間には他人が苦しむ姿を見たいという遺伝的欲求はないのだが、ある条件が整うと他人の痛みは快感に変わる。

私達は無視されたときに痛みを感じる場合がある。これは抽象的な痛みではなく、脳の痛みを感じる部位で感じているらしい。すぐに返事を返さないと「無視された」と誤認して痛みを感じる。これに報復するために、返事を返さなかった人を仲間はずれにすることがあるようだ。こうしたリアクションは「誰でも忙しくて返事ができない時があるのだ」と教育することで防ぐことができる。「相手の身になって考えなさい」というわけだ。

ところが、教育ではカバーできない痛みがある。それが嫉妬だ。ある研究によると人間は良く似た属性を持った人間が自分よりも優れていると感じた時に嫉妬を感じるそうだ。嫉妬は痛みとして捉えられる。ところが、その対象者が失敗したり、不幸な目にあったりすると快感を感じるのだ。嫉妬が強ければ、その後の快感も強くなるのだという。

また人間は不公平を感じた時にも嫌悪感を感じるのだという研究もある。嫌悪感を感じると合理的な判断が阻害され、自分が何も得る事ができなくても、相手が得をするのを防ごうという気持ちになるのだそうだ。

自分と良く似た人に嫉妬心を感じた人は、痛みを排除するためにその人を仲間はずれにしたり攻撃したりする。そして、その人が痛みを感じて不幸になると、それを見て快感を感じてしまう。その行動を合理化するために、仲間を監視して、排除に巻き込む。窮屈な人間関係はそのようにして生まれるようだ。スマホによる「監視機能」があれば、その閉鎖的な人間関係は24時間365日続くのである。

「他人と比べなければいいではないか」という反論もありそうだが、そもそも人間の脳は絶対的な幸運の量を計るようには設計されていない。他人との比較によって自分の幸運や不幸を決めている。

不公平さや嫉妬に囚われると、本来なすべきことを忘れてその怒りを解消することに意識が集中してしまう。これを防ぐには自分が感じている怒りを言語化・意識化するのが良さそうである。ところが、こうした情動は古い脳が関係しているので意識化しにくい。無理に言語化すると、合理化されてしまい、却って事の本質が分からなくなることも起こりそうだ。

本来、多くの情報に触れることができれば、状況を正しく認識してよりよい判断ができるようになるはずである。しかしながら、状況によっては痛みに囚われ、他人の不幸を探すようにも使われるのである。

女たちはなぜLINEはずしをやめられないのか

LINEいじめについて考えている。今回までの結論は非自発的に作られた閉鎖的な空間では人間関係の単純化が起こるというものだった。しかし、このモデルは選択的にグループを作る母親同士の息苦しい「カースト化」は説明ができない。

もともと、人間の社会は伝統によって体系化されていた。しかし、伝統的な社会は解体し「個人の価値観が」価値体系を決めるような社会が作られた。伝統からは解放されたものの、個人は自由への不安に苛まれるようになる。さらに、選択肢が増えると「他者の動向」を規範として採用するようになった。テレビや雑誌といったメディアによって「他者」は拡大した。選択肢は爆発的に増えたが、選択が難しくなり、不安も増大した。

女性の価値は何を持っているかで決まる。どの街に行き、何を選択するかによって価値が決まるのだ。ところが、その価値を自分で決めることはできない。他者の評価がその人の価値を決める。こうした選び取る力を「女子力」と呼んでいる。何が正解なのかは分からないが、それは確実に存在する。

さらに、ママの価値は「持っている」夫や子供の価値によって決まる。つまり、人がモノのように扱われるのだ。子供に何を着せているか、清潔に保たれているかなど、すべてが評価の対象になる。そのように考えると「どんなママと付き合うか」が評価の対象にならないはずはない。

ぞっとする話だが「ユニクロのシャツが気に入らない」というのと「あのお母さんが気に入らない」というのは同列の話なのだ。ユニクロのシャツについて悪口を言う人が「ユニクロのシャツをいじめている」という意識を持つ事はないだろう。従って、LINEで悪口をいう母親も実は「それが悪口だ」という認識を持っていないのかもしれない。

もちろん、これだけで事態が息苦しくなるはずがない。女性はいつも品定めされているが、自分で価値を決めることはできないし、正解が何なのかもよく分からない。それは価値を決める他者が不特定多数に広がっているからだ。そこでグループを限って、そこで価値基準を決めれば良い。価値基準のはその場にいる人たちや話し合いの成り行きで決まる。最終的な結果が大切なのではなく、話し合いの過程こそが重要なのだ。そこで、そこに集った人たちの選択が正当化されるように物事が決まって行くだろう。集団の状況や成り行きのことを「コンテクスト」と呼ぶ。

妻たちは夫に事細かな状況を話した挙げ句「私は悪くないわよね」と承認を求めることがある。夫はなぜながながとした話が問題と関係があるのかは分からない。女性はコンテクストを相手と共有することで共感を得たいと思っているのである。

ママ友はコンテクスト依存の高い文化なのだと言える。

コンテクスト依存の高い文化では「ユニクロのシャツが気に入らない」と公言している人の仲間が「ユニクロのシャツを着る」ことは裏切り行為だ。そのコンテクストの選択を批判することは、そこにいる人たちの人格を否定し、それまでの話し合いの過程を否定することになるからだ。だからそれは全人格をかけた戦いなのだ。

この時点で、女性たちは、不特定多数の他人からの拘束を受け、さらにママ友たちの拘束を受けている。拘束しているのは他ならぬ本人たちだ。なかには子供が仲間はずれになるからといって、息苦しい拘束から逃れられない人もいるのだという。

スマホの登場で拘束は24時間続くようになった。マルチタスク化の効果で合理的な判断力は鈍り、やりとりは感情的になる。新しい情報は、その人の脳につかの間の報酬を与える。するとやり取りは過激化することになるだろう。

問題の根幹は「選択」と「選択した個人の価値」が不可分に結びついているという点だ。なんとかしてここから抜け出す事ができれば、苦しみを減らすことができるだろう。

しかし、テレビでは無数の企業が「正しい選択」をと迫ってくるし、ランキング番組は常に新しい正解を問い掛けてくる。そこから抜け出すのはそんなに簡単なことではないのではないのかも知れない。

スマホ脳 – あなたとあなたの子供に起こっていること

前回、 LINEはずしといういじめについて考えた。組織や集団の失敗という分析だった。閉鎖的な集団に非自発的に参加させられると集団内に緊張が起き、それを緩和するためにいじめが起こるというような筋書きだ。しかし、このアプローチだとスマートフォンがどのようにいじめに影響しているのかは分からない。そこで、Why the modern world is bad for your brainという記事をガーディアンで見つけた。以下は全文ではなく抜粋だ。

マルチタスクはコルチゾールとアドレナリンを増やし、脳に霧がかかったような状態を作り出す。ドーパミン中毒の状態も作られ、外部刺激を求める続けるようになる。前頭葉には新しい刺激を求め続けるクセがあり、注意力が犠牲になる。新寄刺激は脳内麻薬を増やす。何かに集中するよりも新しい刺激に興味を向ける方が楽しいのだ。続けざまにマルチタスクをやっているとコルチゾールが分泌されて不安な気分になる。攻撃的な気分になり衝動性が増す。

マルチタスクは認知力に悪い影響を与える。これをインフォマニアと指摘する学者もいる。未読のe-mailが横にあるだけでIQが10ポイント落ちるという研究がある。マリファナの成分カンナビノイドには記憶と集中力を阻害する働きがあるが、マルチタスキングの害はマリファナを吸うよりも大きいという。

テレビを見ながら勉強をすると記憶情報は長期記憶を形成する海馬には送られず線条体に入ってしまう。線条体は新しい技術や手続きを学ぶ場所だ。人間の脳はマルチタスクをこなすのは慣れていないのだ。

メールに返事を返すたびに、ほんの小さな達成感が得られる。TwitterやFacebookに新しい記事を見つけるたびに社会的につながっている感覚が得られて、またちょっとした報酬ホルモンが得られる。しかし、こうした刺激は快楽を司る大脳辺縁系を刺激しているだけで、前頭前皮質による高度な思考領域が刺激されているわけではない。Twitter、Facebook、e-maiなどによってもたらされるのは単なる神経性の中毒なのだ。

スマホを持っていると、常に仲間からの連絡を気にしなければならない。メールを読みながらニュースをチェックしたりするので、マルチタスク化が進行する。マルチタスクは脳の認知機能に悪影響を与えるだけでなく、中毒性もある。これは英国の記事なので LINEについては扱っていないが、情報交換の頻度はメールよりも多いのではないだろうか。

LINEそのものが緊張感を増すことは確かなようだが、このことだけでスマホやLINEがいじめを誘発するとは言えない。他人が苦しむ姿を見ると社会的報酬が得られるのではないかと思って調べたところ、ニューヨークタイムズのThe Brains of a bullyという記事を見つけた。この記事によると他人が苦しむのを見て楽しむ人がいることは確かだが、全員がそうというわけではないらしい。小人数を集めた調査であり、原因や割合などは分からない。LINEいじめの参加者は意外と「ちょっとしたイベント」の一つとしてターゲットの言動を楽しんでいるだけかもしれない。社会学的な考察だけでなく、科学的な解明が待たれる。

いずれにせよ、スマホを24時間持ったまま生活するのは脳には良くないらしい。スマホを使わない(つまりつながらない)時間を作り「いつでも連絡が取れるわけではないのだ」ということを学ばせるもの手かもしれない。

しかし、慢性スマホ中毒に陥っているのは子供ばかりではない。大人たちも出先や電車の中で常に「情報収集」に勤しんでいる。新しいニュースに接しているだけで、脳に報酬が得られるらしい。しかし、それはネコが獲物を追っているような状態で、じっくり考えることとは違っている。ニュースの目的は意思決定するための情報を得ることだが、ニュースハンティングが自己目的化していることになる。

より多様な意見に触れることにより、より良い判断ができるものと期待されたインターネットだが、使い方を考えないと、単なる「バカ製造装置」になってしまう。