日本人の変な英語を真面目に分析してみる

さっき別のエントリーを書いたばかりなのだが面白いのをみつけたので連投する。

面白いと思ったのは英語が日本語的だったからだ。本来なら、I am against TPP because LDP deceived us to win the 2012 election.となるところである。文章が一文で済む。英語は簡潔を好むのだが、日本語は短い単語数で多くの情報を詰め込めるので、長くなる傾向があるのかもしれない。「嘘をついた」より「騙した」の方がかっこいいので、ビジネス英語ではボキャブラリは大切だ。

もうひとつ言えることは、英語が主題を分析する傾向がある言語ということだろう。つまり、自ずと問題はTPPにあるという認識が生まれてしまう。

しかしなぜ、この日本人の英語の文章は自民党が嘘をついたからという文章が先に出ているのだろう。これを読んで直感的に感じた違和感はそこにある。英語を素直に読むと「自民党が嘘をつかなければこの人はTPPにどういう態度をとっていたのだろうか」という疑問に結び付いてしまう。つまり、TPPは良く知らないのだが、自民党が嘘をついたからダメなのだということになる。つまり、英語は主題を問題にするのだが、日本人は関係性を問題にしていることになる。

この人の政治的バックグラウンドは分からないが例えば民主党が主導したTPPであれば賛成したのかもしれないし、そもそもTPPそのものが嫌だったのかもしれない。もし、自民党が正直に話をしていたらTPPについてどう思っていたのだろうか。

これを英語圏で発言したら変な顔をされるのではないだろうか。実はTPPそのものについては何も言及されていないからである。たとえば「仕事が奪われるからTPPはダメ」だというのはわかる。これは議論の対象になる。ところが自民党の言うことは信頼できないということになると、議論はできない。それはその人の主観だからである。

自民党に視点をを与えて、英語的な構造に直すと次のようになるものと思われる。かなり穴埋めが必要になる。

自民党は2012年の選挙で嘘をついた。地域の有権者にとってTPPには利益がないことを知っているからだろう。にもかかわらず今になってTPPを推進しようとしている。多分、TPPが日本の地域にとっては利益にならないのだろう。だからTPPには反対だ。

だが、下にあるポスターを読むと、自民党が嘘をついたということが複雑な英文で延々と書かれている。だから実際に言いたいことは次のようになる。

LDP have been changing their position frequently. So I can’t trust LDP.

つまり、面倒臭いことをいろいろ分析してきたのだが、本当はTPPは関係がないので全て省かれてしまう。自民党がオポチュニストだから嫌いということになる。もともと自民党不支持なので、それ以外のことをいちいち説明する必要はないのだ。

たまたまこのツイートに目が止まったのは、英訳されていたからだろう。実際にはよくあるツイートだ。日本人が議論ができないのは、実は主題が主題ではないからなのだ。

SNSと時系列情報

今朝地震があった影響で時系列情報について呟いている人がいた。これを中途半端に理解した上でツイートを流したためにちょっとした混乱があったようだ。ちょっと整理しておきたい。

元ツイートは、ツイッターは時系列だがFacebookはそうではないので、ツイッターは時系列を維持して欲しいというものだったようだ。これを流し読みしてツイッターを使っている人でも時系列ではなくなって困っている人がいると思ったの「ツイッターでも時系列にできますよ」という情報を書いた。

普段はほとんど見られていないので、これほどリツイートされるとは思わなかった。つまり、ツイッターのツイートが時系列になるということを知らない人が結構いるようだ。デフォルトではないからだろう。

しかし、元ツイートを正しく読んだ上でFacebookでもできないかという人が現れた。調べたら一応できるようだ。ただしアプリケーションの場合は設定が面倒な上に、しばらくすると元に戻ってしまうのだという。ブラウザ版の場合は左メニューのニュースメニューを「ハイライト」から「最新情報」にすると時系列単位に並ぶ。ただ、Facebookでは他人のアクティビティが割り込んだり、そもそも表示件数に制限があるらしく、完全には時系列にならないということのようだ。

このツイートをするときに少しためらいがあった。それは元ツイートを正しく読めているかというようなことではなかった。アルゴリズムを排除したら「完全に時系列に並ぶのか」という確証がなかったからである。

そもそもツイッター社はなぜ時系列を排除しようとしたのだろうか。それは会社にとって重要なツイートが埋もれないようにしたかったからではないかと考えられる。それは言い換えれば広告を出してくれる人というような意味である。彼らにとって「無意味な」ツイートが広告を埋没させることがあってはならないということになる。Facebookはさらに強硬にスポンサーの利益を守っている。避難する人がいるかもしれないが、営利企業なので仕方がないことだろう。

そもそも「間違えちゃいました」というフォロー記事なので「今後気をつけます」で終わるべきところなのだが、ちょっと考え込んでしまうこともある。

Facebookはなかなか会えない友達に最近何が起こっているかを知るためのツールでライフラインとして使おうとは思わない。Twitterも切迫したときのライフラインではなく「外国製のお楽しみツール」だ。時々刻々と起こっていることを知るためにはテレビなどを使うべきだと思うのだが、テレビを見ていると「意図的に何かを隠しているのでは」などと疑ってしまうので、とても疲れる。

ツイッターが時系列メディアとして期待されるのは、それだけ既存メディアとプロのジャーナリストへの信頼がないということになるんだろう。

トランプ大統領の外交政策が大惨事となる可能性

トランプ氏のツイートを見て、いろんな意味でちょっと背筋が凍った気がした。普段は安倍政権に対する文句とゆるいつぶやきで満たされているタイムラインで背筋が凍るような経験をすることはなかなかない。

このツイートを見ても一瞬意味が分からなかった。ナイジェル・ファラージといえばイギリスがEU離脱を決めた時に「有る事無い事」を吹き込んで離脱派を煽った前科がある人だ。最終的には「もう知らない」と言って党首をやめたのだが、後継者がいないという理由で党首に復帰したようだ。

その人がイギリスの駐米大使になればいいのにと言っている。一瞬「大使が決まったのか」と思ったのだが、そんなニュースはない。つまり、トランプ氏は(認証アカウントとはいえ)プライベートのアカウントから、イギリスに「大使はこの人がいいな」という「ツイッター辞令」を出したことになる。

イギリス人はプロトコルにうるさい国民として知られているわけだし、そもそも内政干渉になりかねない。もし、同じように日本の大使をトランプが指名したらきっと大騒ぎになるだろう。日本人はアメリカの意向を気にするから「向こうからのご指名があるわけだし」という話になりかねない。独立志向が強い(日本はアメリカの属国だからよいとして、イギリスはもともと宗主国なのだ……)イギリス人がこれを許容するとは思えない。

ファラージ氏はいち早くトランプ支持を表明していたという。そういう義理を大切にる人なのだろうということはよく分かる。安倍さんのように後から支持を表明したような人は、外様大名みたいな扱いを受けることだろう。この内と外を分ける感覚はわかりやすく発揮されている。多分、本気で指名しているわけではなく、ファラージ氏を喜ばせるジェスチャー(相手を喜ばす行為)だった可能性はある。

最近共和党の重鎮たちはトランプ氏に対して「ツイッターでの発言を控えるべきだ」と諌めていたようだ。それはアメリカ大統領の発言は国際紛争や金融などに大きな影響を与えるからである。

現に、今朝方ツイッター経由でビデオを発表し、その中にTPPから撤退するという発言が含まれていたために、日本の政治家やマスコミは大騒ぎになっている。これはあらかじめわかっていたことであり「まあ、かわいいな」などと思っていたのだが、同盟国のプライドを平気で踏みにじるようなことをする大統領は早晩大きな問題を起こすに違いない。下手をしたら、Twitter辞令で国際紛争勃発みたいなこともあるかもしれない。

れんほーさんとテレビ

うちの家族(ネットしない)がNHKに出てくる蓮舫代表を見て「この人いつもきついわね」と言った。いつも姿勢がよくやせているので首筋が目立つ。この言葉を聞いて蓮舫さんは損をしているんだろうなあと思った。

このところ政治は演劇学の分野に移りつつあると思う。トランプ新大統領はこれをプロレスの興行から学んだようで、ヒールとして人気を集めた。だが、蓮舫さんは役割やルックスがベビーフェイスなのにヒールの役割になっている。これがうまく噛み合っていないのだろう。

蓮舫さんがきつい女に見えるのは、本人の発信方法が悪いというより、テレビのせいだ。安倍首相が「〜しました」というニュースがあり、それを「公平に伝える」ために野党の発言が使われる。それは必ず批判なわけで、いつもきつい顔できついことをいう女という印象がつく。役割としては「ヒール」なのだが、なんかヒールっぽくない。だが、それが民進党のイメージになってしまうわけだ。悲しいのは誰も中身を聞いていないという点だが、これはもう仕方がない。

意外と中の人は気がつかないんじゃないだろうか。なぜなら本物の蓮舫さんは双子の母親であり優しい側面も持っている。定期的にジョギングしていてスタイルを保っている。直接見たことはないがきっと綺麗な人なのだろう。さらに、Twitterでも犬の写真が出てきたりするので、まあいろんな側面があるんだろうなということはわかる。でも、テレビを見ている人って、もっと漠然とキャラ付けしているのだ。

これ、どうやって解消すべきなのだろうかと思った。NHKは公平性を期するために自動的に野党党首の発言を入れているわけで、偏向報道とまでは言いきれない。特にNHKは政治には興味はないので、どこか扱いがおざなりである。だから「こういう扱い方はするな」とは言えない。

一つにはニュースバリューのある活動を政府とはリンクさせずに行うという手がある。多分「もうやっている」のだろうが、伝わってはこない。でも、それをやり続けるしかなさそうだ。結局自分の舞台でしか主役にはなれないからだ。

逆にニコニコ笑いながら会見をすると「実際には容認している」とか「自民党の補完勢力なのだ」などと言われかねないわけで、なかなか難しいところである。あとは呆れた調子で淡々と諭すような論調にするという方法もあるだろう。つまり同じ目線に立たずに上からゆくわけである。このところの安倍政権の政策はどれも行き詰っているので、結構効果があるのではないかと思う。今の民進党は自民党に巻き込まれているのだろう。

そういう意味ではきつく見えない小池百合子都知事はうまいと思う。早くから都議会自民党をヒールに仕立て上げて自分はベビーフェイス側の立ち位置を作った。でも、女性が見ているのはどうやら中身ではなく、服の色やアクセサリーらしい。「ちょっと前に出すぎている」のではないかみたいな印象を持っているようだ。男性は小池さんの発言を聞いており、でっかい首飾りなんかみていないのだが、女性は発言は聞いていなくても、スーツの色なんかをチェックしているのだ。そして、それが投票行動に影響してしまうのである。

右翼は日本語でNHKだけ見てなさい

今は馬鹿な右翼の時代だ。彼らは発言することさえできない。そもそも何も考えていないからだ。だが、間違いなく時代はこの頭の悪い人に有利になっている。煽動家が彼らのニーズを満たしてくれる。

アメリカには神にこの地を任された白人がアメリカを支配すべきだと考える人で満ち溢れいている。彼らの多くは進化論を信じていない。聖書にはそんな風には書いていないからだ。これの日本バージョンの人たちは日本書紀を聖書に選んだようで、天皇の位は日本書紀に由来するなどと言い出している。これが右翼系雑誌ではなく国会で語られているというのが今の日本なのである。

こうした人たちが好んで見るのがNHKだ。NHK史観によれば、選挙前から太いパイプを維持していた安倍政権はいち早くトランプ新大統領との会談に成功したと言っている。安倍首相は未来志向で磐石な日米同盟の重要性を確認し、ドナルド・晋三という関係性を築くのだそうだ。

田崎史郎さんという自称ジャーナリストも「NHK史観」を振りかざしていた。いわゆるアベトモのお一人なのだが、最近旗色が悪い。「俺はトランプのダチ」というひとたちがいきなり沸き上り、テレビの主役を奪われてしまったからだ。トランプのダチたちは、カジュアルなミーティングだからハローだけで良いんだよなどと言っている。

だが、英語版のロイターは全く違った情報を配信している。選挙キャンペーンでの過激な発言で日米同盟に疑問を持った安倍首相が慌ててトランプ氏のもとを訪れたというのだ。

トランプ氏はまだ大統領ではないただの民間人なので、会談の位置付けも曖昧だ。だから会談で何を話し合うのかというような詳細(さらに場所さえも)最後の最後まで決まらなかった。考えてみれば当たり前で、たんなる民間人の金持ちのおっさんの元に一国の首相が会いに行くという異常事態だからだ。しかし、外国(しかも主要国)の要人がいきなり準備もなしに来たので警備は大変だっただろうう。ニューヨークといえばいわばテロのメッカだ。

その異常事態を日本人は最重要事項として固唾を飲んで注視している。だが、同時にアメリカ人は「日本はよっぽど慌ててるんだろうなあ」と見ているのだろう。多分、中国人も「安倍慌ててるってよ」と思っているだろう。

どっちを信じてもよいのだが「永遠の安定」という物語の中に安住するのも悪くないかもしれない。もうこうなったら日本書紀も書き換えて日米同盟を神勅の一つに加えればいいんじゃないだろうか。

 

マーケティングとは何かという夢の話

マーケティングとは何かを考える夢をみた。物語としてはわりと記憶しやすい夢だったがそれでも十分に混乱している。

マーケティングとは何かというシンボルマークを決めなければならないことになった。いろいろ考えた結論はピラミッドに入った一つの目だった。だが、意味がわからない。実態を見に行こうという事で隣のビルに行くと大勢の人たちが夜学に集まっていた。コピーライターを目指しているそうだが、大抵はエリートと呼ばれる人たちが発表の場を独占しており、後ろの方で立っている人たちには出番がないそうだ。うまく行けば電通に非正規で雇ってもらえるそうである。

一人のエリートでない女性がサババッテンについてアイディアを出しているのだが、長くて回りくどかった。サババッテンの歴史や栄養学的考察を一つの文章にまとめようとしている。同行していた人が「これだからアマチュアは困る」と困惑した表情を浮かべた。

彼のアイディアは簡単で、可愛いアイドルにサババッテンダンスを躍らせるというものだった。大衆は難しい事はわからないのだからサババッテンという言葉を連呼した方がよいのだという。みんなでつぶやいてみたらなんだか興奮した。

そもそもサババッテンという言葉が何を意味するのか同行していた人たちは知らないらしい。多分、長崎あたりのサバを使った料理なのだが、きっと醤油と生姜が入っているのだろうという。それではインパクトがないから、刺激を与えるためにカレー粉をたくさん入れないと売れないなという話になった。それをサババッテンというのかはわからないのだが、そんなことはマーケティングにとってはどうでもよいことなのだそうである。

注1:Wikipediaによると、三角の中に入った一つの目は「プロビデンスの目」と呼ばれるそうだ。全知全能を示し、日本ではフリーメイソンの陰謀論と合わせて語られる事も多い。太陽、月、金星の三位一体の姿とされるが、安定した状態では存在しえないという説があるそうだ。

注2:ばってんはよく考えると長崎の方言ではないように思える。熊本が本場である。ちなみにそんな料理はない。

テレビや新聞に接すると不安になるだけじゃないだろうか

田崎史郎という人がTBSやフジテレビにでて「安倍首相は意外とトランプとうまく行っている」とか「パイプがあったからこそ電話会談ができたのだろう」などと言いまくっている。安倍首相が外務省のいうことを鵜呑みにしてクリントンに賭けていたというのは有名な話だし、安倍支持者が「アメリカ様が承認してくれなかったらどうしよう」とおびえているのは想像に難くないわけで、この人ジャーナリストというよりは電波芸人だなあと思った。

でも、まあ電波芸人を信じているうちは「ああ、これまでどおりで安心できるのだ」と思えるわけで、電波芸人さんにはそれなりの需要があるのだと言える。その需要とは「何も考えないこと」だ。

同じく日米同盟維持派の人たちも必死だ。軍事アナリストの小川和久さんは盛んに23兆円という数字を出して日米同盟のほうが安くつくと繰り返し、賛同する人のコメントをRTしていた。

しかし、彼が後に明らかにしたところによるとこの見積もりは防衛大学校の教授の試算なのだそうだ。防衛省には競争がなく現在でも高い資材を調達しているのではないだろうか。オリンピック関係者が夢のオリンピックをやるとすればこれくらいかかりますよと計算しているみたいなもので、まったく当てにならないだろう。その上、防衛省は日米同盟維持派のはずで、独自調達コストを高めに設定していることが疑われる。

しかし、多くの日本人は日本語しかできない上に、できるだけ何も考えたくないわけだから、こうした「識者」の言うことを聞いておけばよいと思う。日本のジャーナリズムの存在意義は精神安定剤なのだろう。トランプ大統領が決まってから「意外とできる人だ」などという論評が飛び交うのを見ているとそう感じる。一方で、日米同盟がそれほど磐石でないという潜在的な不安があるのかもしれない。

今朝方見たイアンブレマー氏のビデオでは(早口なので間違っているところがあるかもしれないのだが)おおむね次のようなことを言っている。

NATOは国防費を増やすだろうがリスク分散のために使うのでアメリカへの支払いは増えそうにない。日本は支払う。韓国は大統領の支持率がああいう感じなので……

合理的に考えればリスクヘッジは当たり前である。だが、日本は近隣に同盟国がないのでヘッジのしようがない。防衛省は役に立たない。国を守ろうという気概はなくせいぜい予算が出たら省益を拡大しようくらいの気持ちしかないのではないか。おまけに安倍首相は中国や韓国を挑発しまくっているので彼らと組んで地域の安全保障を担保することもできない。台湾は国ではないし、フィリピンには船をせびられた。アメリカしか頼る国はないから、言い値を支払うしかないわけだ。

アメリカは世界に軍隊を派遣し、それなりに犠牲者も出している。ヨーロッパはロシアと対峙していて移民も問題になっている。それに比べると日本には大きな問題はなく「金くらいもっと出せるんじゃないの」というのは素直な感情なのではないだろうか。

そもそも右派メディアはトランプ大統領の過去の発言に動揺しているようだし、左派メディアは人権の危機だとかガラスの天井が破れなかったみたいな分析しかしないわけで、まったく役に立たない。

小川さんの発言を見ていると日米同盟に依存せざるをえず、まともな分析もしてこなかったので、不確定な要素登場に耐えられない人たちの末路というものを感じる。パラダイムが変わると知見がすべて覆ってしまうのだ。

あとは自分で考えるしかないわけだ。幸い英語で取れる情報は多くあるので、情報ソースには困らない。多分日本語オンリーでテレビを見たり新聞を読んだりするよりはマシな気分になれるのではないだろうか。

「馬鹿」が変えたアメリカ政治

トランプ大統領が誕生したことでTwitterの役割が見直されているらしい。

トランプの手法は暴言で注目を集めるというものだ。これをテレビや新聞が否定的に伝える。しかしTwitterには半匿名の人がたくさんいて、多くは発言せずに閲覧だけをしている。そしてトランプの暴言はこの半匿名の人の気持ちを代表しているのだ。

この結果、トランプがかけたキャンペーン費用はヒラリークリントンを大きく下回るといわれている。逆にクリントンは多額のキャンペーン費用をポケットにしまったのではという疑念を持つ人が出る始末だ。

キャンペーン費用の安さはトランプ大統領の今後の政策に影響する可能性があるという。これまでの大統領はすべて「紐付き」政権だった。ところがトランプ大統領は安くて効率的なキャンペーンができたのでこうした「紐」がない。そのため大衆が喜びそうな政策を自由に展開することができることができると考えられている。

Twitterのようなソーシャルメディアにはいくつかの特徴がある。

  • 興味が短期的にしか持続しない。
  • 因果関係が単純化される。
  • 「隠された」情報に人が集まる。

Twitterのトピックは深く考えられることはなく、何か隠された情報があると瞬間的に人が群がる。「隠れた」といってもそれを作るのは簡単だ。たいていは二次情報なのでテレビなどのマスメディアを使って不完全な情報を流すと大衆が勝手に穴を埋めてくれるわけだ。これが特定の人に向いたのが炎上である。

Twitter向けの才能があるとすれば、それは決して自分が攻撃対象にならないことと、絶えずどのように注目を集めることができるかを考え続けることだ。あるいはベッドの中で何か考え付いたら、後先考えずに発信できるほどにしておかねばならない。これを365日繰り返せば、Twitterでスターになることができるかもしれない。

Twitterは「馬鹿発見器」と呼ばれることがある。見落としがちなのはこの「馬鹿」が集まってしまえば正義になるのが民主主義だということである。

ではどんな馬鹿が政治を動かしたのだろうか。今回の投票率は実は50%ちょっとしかなかったそうだ。前回よりも400万票ほど低いそうだが、それでも大きくは変わっていない。しかし電話調査で調査しても浮かび上がらなかった。支持を表明することが恥ずかしいと思っているのである。だが結局のところ「行動する馬鹿」が政治を変えてしまったのだ。

自分で考えることができる人は「経済界と癒着する政治家」と「ワイドショーで有名になった素人」という二者択一に嫌気がさして投票に行かなかったのだろう。この人たちは政治から排除されてしまうことになる。

今回トランプに先導された人たちに利益が還元されれば「馬鹿こそ正義」ということになるのだが、実際には搾取されて終わりになるのではないかと思う。トランプの政策は減税で政府を小さくすることなのだが、これで排除されるのは実は貧困層だ。

しかし、代わりに外国などが攻撃されている限り、この人たちは搾取されていることにすら気がつかないかもしれない。これが「トランプ大統領になると戦争になる」といわれるわけである。争いを仕掛けて自分だけは安全なところにいられると考える人だけが、大統領になれる国になってしまったのだ。

「フィーチャーフォンがなくなる」問題

先日、ガラケーがなくなるというようなニュースを耳にした。スマホに変えるつもりはないのでちょっと慌てたのが情報がなく自分の使っているサービスがどうなるのかよくわからない。

結論からいうとすぐに何かをする必要はないのだが、日本人が他人に情報を伝えるのがいかに下手なのかがよくわかるので、詳しく書くことにした。コミュニケーションが混乱する原因は用語の混乱にある。短く言うと「ドコモはバカ」なのだ。ではどのようにバカなのだろうか。

きっかけはこのリリースだ。

ドコモ ケータイ(iモード)出荷終了について

2016年11月2日

平素は、弊社商品・サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。

  • ドコモ ケータイ(iモード)は2016年11月~12月を目途に出荷終了し、在庫限りで販売終了いたします。ドコモ ケータイをお求めのお客様にはドコモ ケータイ(spモード)をご用意しております。
  • ドコモ らくらくホン(iモード)については当面出荷継続いたします。
  • iモードサービスは今までと変わらず引き続きご利用いただけます。

弊社は今後もお客様への一層のサービス向上に取り組んでまいりますので、何卒ご理解を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

これ、意味がわからなかった。わかったのはiモードはすぐにはなくならないので、情報はスルーしてもよいということだけだった。

情報が混乱する直接の原因はこのほかにいくつかの定義が曖昧な言葉があるからだ。それは「ガラケー」「二つ折り電話」「フィーチャーフォン」という言葉だ。

  • FOMA – 電波の名前(古い)。
  • Xi – 電波の名前(新しい)。
  • iモード – FOMAに乗るネットサービスの名前。
  • spモード – Xiに乗るネットサービスの名前。
  • ドコモスマホ – パソコンのように使える新しいタイプの電話機でXIとspモードで使う。iPhoneを含む。実際には明確な定義はなく、アンドロイドとiOSを基幹ソフトとして使っている電話機の総称である。
  • ドコモケータイ – スマホではない電話機をケータイと言っている。一般にはスマホもケータイなので混乱する。フィーチャーフォンとかガラケーなどと呼ばれることが多いのだが、実はspモードが使える二つ折りの電話を含んでいる。また、旧来型のドコモケータイもXIが使えるものがある。スマホに定義がないので、ドコモケータイにも定義がない。
  • ガラケー – 国産電話のうちOSも自前のものを使った機種を示す俗称。ゆえにドコモケータイとらくらくフォンを含むものと思われる。ガラケーのなかにもspモード対応(もしくは専用)のものがある。
  • ドコモらくらくフォン – 高齢者や障害者向けに作られたスマホに似た電話機なのだが、spモードとiモードを含む。

つまり、ドコモケータイ=ガラケーではないわけで、ガラケーには明確な定義がない。二つ折りの中にもガラケーでないものがあるのだが、ドコモのURLはfeaturephoneという名前になっている。この中には、iモードでないものも含まれている。リリースの第一項でわざわざドコモケータイ(spモード)と書かれているのはそのためなのだが、知らないと読み飛ばしてしまうだろう。

わかっている人(ドコモの広報、オペレータ、マスメディア)はこの言葉の定義がなんとなく分かっている(だが説明はできない)ので、違いをなんとなく感じながら使い分けている。しかし、それを知らない一般の人と話をするとなんだかわけがわからなくなってしまう。オペレータになんども「それはどこに書いてあるのか」と聞いたが、誰も答えられなかった。

わからないのだが「バカにもわかりやすく話してやろう」という気持ちがあるようだ。そこで「二つ折り電話がなくなる」という新たな定義をぶち込んできて話を複雑にしていた。スマホは二つに折れないのでわかりやすいと思ったのだろう。実際には二つ折り電話の中にもなくならないものがあるし、そもそも二つ折りという概念は形態による区分けだ。概念がわからない人に別の区分けをぶつけるから喧嘩になるのだ。

日本人はすべての人が同じコンテクストを共有しているという前提で話をする。多様性を前提としていないので、コミュニティの外の人とは基本的に会話ができないし、相手がどのような概念マップを持っているのかということが想像できない。そしてコンテクストを共有しない人を「バカ」だと思う。だが、顧客のほとんどは彼らからすると「バカ」ということになるので、顧客をバカにする奴は「バカ」ということになる。

さて、混乱の原因は実はNTTの広報の情報操作の結果のようだ。日経新聞の記事を読んでみよう。

「iモード」ガラケー出荷終了へ NTTドコモ

 NTTドコモは2日、ネット接続サービス「iモード」の機能を搭載した従来型携帯電話(ガラケー)の出荷を年内で終えると発表した。対応機の部材の調達が難しくなってきたため、在庫がなくなり次第、販売を終える。iモードは一世を風靡したが、スマートフォン(スマホ)の普及に押されて利用者が最盛期の3分の1に減っていた。今後のガラケーはスマホ向けのネット接続サービス「spモード」に対応した機種に統一する。

 iモードのサービス提供は続ける。高齢者向けの「らくらくホン」や法人向けの一部機種はiモード搭載機の出荷を当面は維持する。

 iモードはドコモが1999年に始めた。携帯電話で銀行の振り込みや飛行機の座席予約など様々なサービスを手軽に使える利便性が受け、2010年3月には契約者が4899万に達した。

 しかしスマホの普及でここ数年は利用者が減少。9月末時点で1742万契約に減っていた。

この記事を「正しく読んだ」人は、ガラケーのうちiモードを使ったものがなくなるということが理解できるのだろうが、「iモード」がガラケーのあだ名であるという理解もあり得るということを想定していない。またガラケーはスマホの対立概念だと考える人も多いのはずなのだが「ガラケーはスマホ向けの」という記述が出てきた時点でわけが分からなくなる。らくらくフォンが継続するというのは結局iモード対応機種はなくなりませんよという意味なのだが補足情報になっているので関係性がよくわからない。

わけのわからない情報はスルーされる。

多分、NTTの広報は「スマホだけになる」という印象をつけたかったがクレームも怖いのでいろいろ補足情報を入れたのだろう。それを忖度した日経の記者もその筋で記事を書いたものと思われる。そのためiモードは時代遅れというニュアンスを含んだものになっている。だが、実際にはiモード対応機種はなくならないので、単なる印象操作にすぎないのだ。

混乱の原因はドコモの広報が、業務上のお知らせをプロパガンダに利用しようとしたことに起因しているらしい。かといってスマホしにろとも言い切れないので、結果的にわけのわからないことになったのだろう。

オペレータと話をして思ったのは、ドコモはしばらくiモードを止められないだろうなあということだった。らくらくフォンは障害者対策という意味合いがあるようで、これをなくすと困る人が出てきそうだからだ。そもそも、ガラケーユーザーは情報にさほど関心がないわけで、このような広報の職人芸的なニュアンスが理解できるとも思えない。多分、iモードがなくなるとか安い通話サービスい対応する電話がないと聞いたときにはじめて騒ぎだすのではないだろうか。

ロードサイド店の荒廃

Macbookが発表された。キーボードに若干変更が見られるだけで目新しさがなかったところから、失望の声も大きかったようだ。「Surfaceの方が感動した」という声があり、逆にSurfaceってそんなにすごいのかと思った。よく分からなかったので、近所のロードサイド店に見に行った。

SurfaceそのものはiPadみたいなものだった。こういうのがいいという人がいるのかと思った。Macはお金持ちの道具なので、タブレットはタブレットで買って、そのほかに3年ごとにパソコンを買い換えてねというような発想で作られている。一方マイクロソフトは、パソコンもタブレットも1台でというコンセプトのようだ。どちらがいいのかは正直分からない。

ここで驚いたのはパソコン売り場の荒廃ぶりだった。売り場には店員があふれているのだが、みんなソフトバンクなどから派遣されているようでインターネット回線を売っている。

一方、店員たちは少ない人員でいろいろなことをやらされているらしく、このぶらぶらしている回線販売員が店員を呼び出す仕組みになっているらしい。だが、店員は呼び出されたことに明らかに腹を立てていた。Surfaceなんかたいしたことはないと言い放ち「では何が売れているのか」と聞くとパソコンなんか売れないという。もはや売る気がないわけだ。最新機種はこんなところに来ませんよ、とのことだ。「パソコンを買う人はアキバに行きます」というのだ。何か売りたいものがあるのかなあと思ったが、とにかくふて腐れていて早く開放されたいようだった。

この姿勢は理解できる点がある。パソコンを電気店で買う人はいないのだろう。Amazonか直販で買うのではないだろうか。店頭に来る客は冷やかしばかりなのだろう。いわゆる「ショーウィンドウ化」だ。

そこで、店側は人員を削減して、インターネット回線を売りつける人たちに貸すことにしたようだ。不動産業態になっているわけである。最近トレンドになっているようだ。松坂屋は銀座から撤退し専門店に店を貸すことにしたというニュースを目にした。「小売はリスクがある」ということで少ないスタッフで定期収入があるほうがよいのだろう。リスクとはすなわち販売員を抱えることを意味する。労働者はリスクなのだろう。

インターネット回線はそんなに売れるのかと思ったのだが、係りの人に聞いてみると、NTTから回線を借りているので違いはないという。あとは値段とサービスなのだが、サービスにもそれほど差がないし、値段もある点に収束している。つまり、基本的に売ることができないわけだ。そこでビンゴ大会をやっていたが、あとできる努力と言えば年寄りをだますことくらいだろう。だますというより必要のない人に光回線を押し付けて、あわよくば付帯サービスも買ってもらうというのが彼らの「努力」になるのだろう。

アパレル店をいくつか見て「ああ、荒れているな」と思った。アウトレット店はまだマシなのだがデパートはかなり荒廃しているようだ。荒廃ぶりが分かるのは立ち姿とおしゃべりだ。

電気はそれ以上に荒廃しているようである。そんな中で店員は「どうせ売れない」と考えており、いやいや土日を潰しているわけだ。

メーカーはそれなりに「おお、これはすごい」といえるものを出しているはずなのだが、それはもはや伝わらない。多分、Macのようにメーカーの発表をインターネットで見るような人でもなければ新製品の良さを発見することはないだろう。つまり、それだけものが売れなくなるということになる。

今回訪れたケーズデンキはそれでもまだましな方だ。ヤマダは本業をあきらめて住宅販売に力を入れている。売り場が荒廃してしまったために誰も寄り付かず、余った売り場に生活雑貨や食品を扱うようになった。多分そのうちにロードサイド店は淘汰されてゆくんだろうなあと思った。