成長の限界を唄う朝日新聞の限界

Twitterで、朝日新聞の「成長の限界」がひどいという話を聞いたので読んでみた。ちょっと驚いたのは朝日新聞の読者は金を払ってあんなブログ並みのエッセイを読まされるのかという驚きだった。思索がまとまらない様はこのブログに似ていて親近感を覚えたほどだ。

あのエッセイにはどんな問題があるだろうか。

第一に、原真人さんが成長に限界を感じるのは無理からぬことである。成長の反対は安定だ。経済的には生産構造が安定していることを意味する。職人は一度覚えた技能に一生依存することができ、地域の米の収量は決まっているので税収も安定しているという世界だ。つまり、それは封建制だということになる。

朝日新聞社は既得権がある。政府からの情報を一番に取ることができる地位を有しており、編集委員の原さんはその頂点に立っている。情弱な読者を相手にするために政府に反対するようなことを言っているが、それは単なるポーズだということを知っている人も多くいる。政府が「けしからんこと」をやってくれるおかげで朝日新聞は毎月庶民からお金をむしり取ることができる。そして、それを届けるのは多分一生結婚できないくらいの低賃金で働く人たちだ。

そもそも、そんな原さんが成長を志向する理由はない。

成長を志向するのは既得権からは利益を得られない人たちである。成長は破壊を伴うので既得権を持っていない人にもチャンスがある。こうした破壊行為は「創造的破壊」と呼ばれている。今持っていない人たちが頑張ることで、より効率的な製品やサービスが作られるのが「成長」である。

これは朝日新聞にとって良いことではない。無料で情報が取れてそれをユーザーが並べ替えたりできる時代に、新聞配達員の低賃金に依存する情報伝達方式は、手紙があるのに狼煙で情報を伝えるようなものである。つまり新聞はネットニュースにさっさと取って代わられるべきなのだ。それが起こらないのは、国民が政府発信の情報を信用しているからだ。

ここまで考えてくるとあの出来の悪いエッセイのもう一つの問題が見えてくる。ちょっと読むと、成長を「GDPが膨らむこと」だとしている。そこからGDPの歴史に話が及んでおり、中央銀行がどうしたとか戦費調達がどうとかいう話に結びつき迷走する。

既得権がある人が考えると「俺がいい思いをしているのに破壊してまで成長しなければならないのはなぜなのだろうか」ということになりがちだ。さらに政府は「成長ってGDPをあげることなんでしょ?え、違うの」というような脆弱な経済感を持っており、それを聞きかじって右から左に流す新聞社もそれを間に受けている。

現在の経済の問題は、成長=お金の流通量が増えることという認識の元に実際のモノやサービスの交換を伴わない金融ばかりが膨らんでゆくという点にある。費用の調達にはコストがあるはずなのだが、それが無効化したために、実体経済の成長なしに金融世界だけが膨らんでゆくのだ。GDPは金融によって生み出される価値を含んでいるので、そもそも「豊かさ」を図る指標ではなくなりつつある。

しかし、それは割と明確なことであり、今さらドヤ顔で語るような筋の話ではない。本来のクオリティペーパーは、明確ではあるが仮説に過ぎない仮説を問題意識を持ちつつ粘り強く検証するべきなのだが、政府から情報を調達してきて情弱な読者を騙すことで日銭が稼げてしまうと、そういう意欲もなくなってしまうのだろう。

れんほーさんとテレビ

うちの家族(ネットしない)がNHKに出てくる蓮舫代表を見て「この人いつもきついわね」と言った。いつも姿勢がよくやせているので首筋が目立つ。この言葉を聞いて蓮舫さんは損をしているんだろうなあと思った。

このところ政治は演劇学の分野に移りつつあると思う。トランプ新大統領はこれをプロレスの興行から学んだようで、ヒールとして人気を集めた。だが、蓮舫さんは役割やルックスがベビーフェイスなのにヒールの役割になっている。これがうまく噛み合っていないのだろう。

蓮舫さんがきつい女に見えるのは、本人の発信方法が悪いというより、テレビのせいだ。安倍首相が「〜しました」というニュースがあり、それを「公平に伝える」ために野党の発言が使われる。それは必ず批判なわけで、いつもきつい顔できついことをいう女という印象がつく。役割としては「ヒール」なのだが、なんかヒールっぽくない。だが、それが民進党のイメージになってしまうわけだ。悲しいのは誰も中身を聞いていないという点だが、これはもう仕方がない。

意外と中の人は気がつかないんじゃないだろうか。なぜなら本物の蓮舫さんは双子の母親であり優しい側面も持っている。定期的にジョギングしていてスタイルを保っている。直接見たことはないがきっと綺麗な人なのだろう。さらに、Twitterでも犬の写真が出てきたりするので、まあいろんな側面があるんだろうなということはわかる。でも、テレビを見ている人って、もっと漠然とキャラ付けしているのだ。

これ、どうやって解消すべきなのだろうかと思った。NHKは公平性を期するために自動的に野党党首の発言を入れているわけで、偏向報道とまでは言いきれない。特にNHKは政治には興味はないので、どこか扱いがおざなりである。だから「こういう扱い方はするな」とは言えない。

一つにはニュースバリューのある活動を政府とはリンクさせずに行うという手がある。多分「もうやっている」のだろうが、伝わってはこない。でも、それをやり続けるしかなさそうだ。結局自分の舞台でしか主役にはなれないからだ。

逆にニコニコ笑いながら会見をすると「実際には容認している」とか「自民党の補完勢力なのだ」などと言われかねないわけで、なかなか難しいところである。あとは呆れた調子で淡々と諭すような論調にするという方法もあるだろう。つまり同じ目線に立たずに上からゆくわけである。このところの安倍政権の政策はどれも行き詰っているので、結構効果があるのではないかと思う。今の民進党は自民党に巻き込まれているのだろう。

そういう意味ではきつく見えない小池百合子都知事はうまいと思う。早くから都議会自民党をヒールに仕立て上げて自分はベビーフェイス側の立ち位置を作った。でも、女性が見ているのはどうやら中身ではなく、服の色やアクセサリーらしい。「ちょっと前に出すぎている」のではないかみたいな印象を持っているようだ。男性は小池さんの発言を聞いており、でっかい首飾りなんかみていないのだが、女性は発言は聞いていなくても、スーツの色なんかをチェックしているのだ。そして、それが投票行動に影響してしまうのである。

右翼は日本語でNHKだけ見てなさい

今は馬鹿な右翼の時代だ。彼らは発言することさえできない。そもそも何も考えていないからだ。だが、間違いなく時代はこの頭の悪い人に有利になっている。煽動家が彼らのニーズを満たしてくれる。

アメリカには神にこの地を任された白人がアメリカを支配すべきだと考える人で満ち溢れいている。彼らの多くは進化論を信じていない。聖書にはそんな風には書いていないからだ。これの日本バージョンの人たちは日本書紀を聖書に選んだようで、天皇の位は日本書紀に由来するなどと言い出している。これが右翼系雑誌ではなく国会で語られているというのが今の日本なのである。

こうした人たちが好んで見るのがNHKだ。NHK史観によれば、選挙前から太いパイプを維持していた安倍政権はいち早くトランプ新大統領との会談に成功したと言っている。安倍首相は未来志向で磐石な日米同盟の重要性を確認し、ドナルド・晋三という関係性を築くのだそうだ。

田崎史郎さんという自称ジャーナリストも「NHK史観」を振りかざしていた。いわゆるアベトモのお一人なのだが、最近旗色が悪い。「俺はトランプのダチ」というひとたちがいきなり沸き上り、テレビの主役を奪われてしまったからだ。トランプのダチたちは、カジュアルなミーティングだからハローだけで良いんだよなどと言っている。

だが、英語版のロイターは全く違った情報を配信している。選挙キャンペーンでの過激な発言で日米同盟に疑問を持った安倍首相が慌ててトランプ氏のもとを訪れたというのだ。

トランプ氏はまだ大統領ではないただの民間人なので、会談の位置付けも曖昧だ。だから会談で何を話し合うのかというような詳細(さらに場所さえも)最後の最後まで決まらなかった。考えてみれば当たり前で、たんなる民間人の金持ちのおっさんの元に一国の首相が会いに行くという異常事態だからだ。しかし、外国(しかも主要国)の要人がいきなり準備もなしに来たので警備は大変だっただろうう。ニューヨークといえばいわばテロのメッカだ。

その異常事態を日本人は最重要事項として固唾を飲んで注視している。だが、同時にアメリカ人は「日本はよっぽど慌ててるんだろうなあ」と見ているのだろう。多分、中国人も「安倍慌ててるってよ」と思っているだろう。

どっちを信じてもよいのだが「永遠の安定」という物語の中に安住するのも悪くないかもしれない。もうこうなったら日本書紀も書き換えて日米同盟を神勅の一つに加えればいいんじゃないだろうか。

 

朝日新聞の「東京ガスは悪くない」論

豊洲移転問題についていろいろ書いているのだが、正直何が起こっているのかよく分からない。当初は「東京ガスが有毒な土地を都に売りつけて、政治家の一部にキックバックがあった」というようなシナリオを勝手に描いていたのだが、それは違っていたみたいだ。週刊誌2誌と女性週刊誌1誌を読んでみたが「東京ガスは土地の譲渡を渋っていた」と書いている。なぜ渋っていたのかはよく分からない。

週刊文春が仄めかすのは、石原都政下では外郭団体の含み損が表面化しつつありそれを整理する必要があったというストーリーだ。5000億円の損が累積していたが築地の土地を売れば都には莫大な資金が入るというのだ。しかし、他の媒体はそのような話はでてこない。文春の妄想なのか、独自取材の賜物なのかはよく分からない。さらに、東京都は真剣に一等地を売って儲けようという意思は無さそうだ。

誰も書いていないが、wikipediaを読むと石原氏は単式簿記をやめて複式簿記を採用したと書いてある。土地などの資産が認識されるので良さそうな方法だが、複数機関で借金しあったりしているとひた隠しにしていた問題が浮上することになる。同時期に銀行の貸し倒れが問題になっていて(こちらは普通の銀行が課さない中小企業に気前よく融資していた)その損金をどう処理するかが問題になっていた。

もし、築地を高値で売りたいならいろいろな計画が浮上していてもおかしくはないのだが、跡地はオリンピック巨大な駐車場になることになっている。後には「カジノを誘致したい」などという話ものあるようだが、公園(たいした儲けにはならない)を作ってくれという地元の要望もあるようである。もし都営カジノができれば、オリンピックで作った宿泊施設も含めて巨大なリゾート地が銀座の近くにできるわけだが、具体的な計画はなく、幼稚園児のお絵描きのような稚拙さが滲み出ている。政治家の考える「ビジネス」というのはそういうものかもしれない。

もともと、都が累積損を抱えたのはお台場湾岸エリアの開発に失敗したからだ。失敗したのは都市博で人を呼べば他人の金で開発ができ、お台場の土地が高く売れるぞという目算があったからだろう。今回は都市博がオリンピックに変わっただけなのである。ずさんさというか、商売っ気のなさがある。

その中で異彩を放っていたのは朝日新聞の経緯のまとめだ。これがどうにも怪しい代物だった。最初に書いてあるのは「東京ガスは土地を東京都には売りたくなかった」ことと「誰もあの土地が有毒だとは思わなかった」ということだ。東京ガスが土地を売りたくなかったが浜渦副知事がゴリ押ししたというのは半ばマスコミのコンセンサスになっているようだ。浜渦さんは時々殴り合いの喧嘩をする曰く付きの人物だったとwikipediaには描かれている。

いずれにせよ「読者にわかりやすく書かれた」豊洲市場移転問題のまとめ記事では誰も有毒物質のことは知らなかったが、あとで調査をした結果土地の汚染が判明したというストーリーが描かれている。これを素直に読むと「誰も悪くなかったが運が悪かったね」ということになる。日本人の「優しさ」によるものだが、これが集団思考的な問題を作り出しているということには気がついていないようだ。都政担当は記者クラブの中でインサイダー化しているのだろう。

朝日新聞の記事を読んで一瞬「ああ、そうか」などと思ったわけだが、その交渉過程は黒塗りだったという記事がTwitter経由で飛び込んできた。新しい情報が得られるというのはTwitterの良いところだなあと思う。この記事によるとどうやら「あの土地には何か有毒物質があるらしい」ということは知られていたようだ。土地を売る上では不安材料になるだろう。もともとエンジニアたちはあの工場が何を生産していて、副産物として何が産出されていたかは知っていたはずである。東京ガスが全く知らなかったということはありえない。

朝日新聞の記者も東京ガスと都の交渉記録が黒塗りだったことは知っているはずだ。これは「のり弁」資料と呼ばれ問題になっているからである。であるならば、朝日新聞の記者が書いた記事の目的は明らかだ。都当局は炎上中なのでもう抑えられないが、東京ガスに避難の矛先が向くのを抑える「防波堤」の役割があるということになる。東京ガスはマスコミにとっては巨大スポンサーなので非難が向くのは避けたいのかもしれない。

いずれにせよ油断ならない話である。どの媒体も信じることができず、各雑誌・新聞を読み比べた上でネットの読み物まで読んで総合的に判断するしかないということになってしまう。いずれにせよ黒塗り資料が表沙汰になってしまえば、誰が嘘をついていたかが明らかになってしまう。すると大型防波堤でせき止めていた洪水が一挙に街を押し流すようなことになってしまうのではないかと思う。

多分、現在豊洲問題が炎上しているのは、マスコミが「優しさ」故に問題を直視してこなかったからである。にもかかわらず一旦炎上するとそれを商売にしようとする業を持っている。よく倫理の教科書で問題になる「近視眼的な視点が長期的な問題を生み出す」という実例になっているように思える。

NHKが日本の労働環境の破壊を試みる

NHKが長時間労働の規制についてプロパガンダ番組を流している。メッセージはあからさまで、正社員の労働時間を減らせば、女性、外国人、高齢者が働きやすくなるというものだ。これは言い換えれば、企業にしがみついている正社員を減らせば非正規雇用の人たちの雇用機会が増えるということだ。企業は、非正規社員を増やせば人件費の大幅な削減もできるし、儲けがないときにはすぐに切ることができるようになる。

加えて、正社員を家庭に返して子育てや介護という無報酬労働に従事させようとしている。確かに政府としてはいろいろな問題が解決する魔法の杖のように見えるのだろう。

これが実現するためには「とりあえず、正社員が家に帰ればいい」と言っている。正社員が嫌な仕事にしがみついて長い時間職場に居座るのは自分の地位が脅かされないように常に見張るためだ。最近ではメールやSNSが発展しており、正社員は休日であっても通勤電車の中でも、顧客からの注文に応えなければならない。それは転落が取り返しのつかない結果を招きかねないからである。

識者たちはきれいごとを並べて、正社員と非正規雇用をスキルで評価されるべきだなどと言っているが、スマホに張り付いて顧客がクレームを言ってくるのかを待っている時間を労働時間として加算するわけには行かない。つまり、長時間労働は生産性とは何も関係がなく、正社員層の安全保障なのだ。

なぜ、このような理由が生まれたのかは明確だ。企業は人件費の抑制を20年近く続けており、非正規雇用に「堕ちて」しまうと生活が成り立たなくなるからだ。そのため労働者は生産性の向上などを考えている余裕はない。単に嫌なことを我慢しながら縄張りを守っているに過ぎない。恐怖心が生産性を向上させることはない。

それどころか散発的にイレギュラーな処理が要求されるので、生産性は著しく阻害される。例えていえば、常にリセットボタンのないテトリスをさせられているのと同じような状況に置かれているわけだ。

ここから解放されるためには、いわゆる「非正規」という人たちに正社員並みの賃金を支払うしかない。恐怖心が非生産性をドライブしていることが予想されるからである。

「格差を埋める」という言葉には高い方に合わせることと、低いところに合わせることの2種類がある。しかし、企業側のトレンドは人件費削減なので、どうしても「低い方に合わせる」ための改革になってしまいがちだ。そもそも生産性が下がっているので、高い賃金を支払うモチベーションは持ちにくいだろう。

企業の労働力削減意欲は強い。外国人の導入も多様性をつける方には向かわず、どうしたら海外に行かないで中国のような安い労働力を導入できるかという話になってしまう。地方の製造業や農村などのように、実質的には奴隷労働だと言われる外国人研修制度に頼らないと維持できない業種さえある。

真面目な話をすると、労働改革は非正規雇用が食べて行けるだけの給与を与えることで簡単に実現できる。そのためには蓄積した資本を労働者に開放すれば良い。実際にはその方向での改革は進まず、したがって労働者は自己防衛のために隠れて長時間労働にしがみつくことになるだろう。

政治がこの問題を解決できるとは思えない。最近では富山県の県議会議員が「老後に不安がある」という理由で領収書の捏造をしたのが発覚したばかりだ。こうした慣行は党派を超えて蔓延していた。他人の問題を解決できないばかりではなく、自らも同じような不安を抱えているのだから、問題を解決できるはずなどない。

政治のリーダーシップに期待できない以上、自発的に動くのは損だ。働き方改革はそのまま収入の減少に直結する。

NHKがなぜこのようなプロパガンダに邁進するのかはよくわからない。一部の正規職員が非正規プロダクションを搾取するような構造を狙っているのかもしれない。立派な放送センターの建設を画策する一方で、将来のテレビ離れを心配しており、PCやスマホへの課金を狙っている。実は将来不安に苛まれているのかもしれない。

もし、安倍政権の労働市場改革が成功すれば、正社員賃金は非正規雇用並みに抑えられ、非正規ばかりになった企業の生産性もマクドナルド化するのではないだろうか。生活を維持するためには、スキルが蓄積しないことがわかっていながら複数の仕事を掛け持ちせざるを得なくなるかもしれない。これは現在アメリカで起きていることなので想像するのはそれほど難しくないだろう。

「天皇退位の意向」報道

NHKのニュースを見て驚いた。独自とした上で「天皇陛下が退位の意向」とやったのだ。健康に不安を抱えている今上天皇は5年頃前(ちょうど東日本大震災があったころだ)から退位の意向を家族に伝えていたとされる。だが、皇室典範に退位の規定はなく、実現のためには皇室典範が必要になるという。その後、毎日新聞が伝え、朝日新聞も伝えた。出元は「宮内庁幹部」とのことである。

ところがさらに驚いたことに、宮内庁の次長が「陛下に退位の意向はない」と報道を否定した。そのため、ネット上では様々な憶測が広がっている。多いのは「憲法改正を阻止するために、苦渋の決断をしたのだ」というものだ。陛下は常々平和の大切さを訴えており、平和憲法の改悪には反対の立場であられるだろうという予測に基づく。逆に政府の広報機関であるNHKがリークしたことから「安倍政権が陛下の追い落としを図っているのだ」という物騒な憶測も、少数派ではあるが存在する。

さらに次代への不安が考えられる。天皇を、先代がなくなって始めて継承する地位だ定義してしまうと、実際に天皇に即位したときに経験のあるアドバイザーが誰もいないということになってしまう。政治的に利用されることになりかねないし、お立場上孤立するということにもあり得る。生前譲位することで、継承の時間を取ることができるのだ。これはかなり切実な問題かもしれない。

実際に退位の意向があるとしたら、その意思は尊重されるべきだろう。老後をゆっくりと過ごしたいという気持ちは誰にでもあるものだし、一生激務の中に閉じ込めておくのは人権上問題がある。しかし、国事行為に関連する以上、即位・退位に自由意志を認めてしまうと。それを通じて政治的意思表明をしたり、逆に周りに利用されることにもなりかねない。退位の規定がないのは、政治利用を恐れたからだという話も出始めている。

この件は情報が少なく、確かなことは何も分からない。唯一確かなのは自民党・民主党の両政権が揃ってこの問題を放置してきたということだろう。安倍首相に至っては事前に相談もしてもらえなかったことになり、リエゾンとしての宮内庁の上層部のメンツは丸つぶれである。にも関わらずそうしたリークが出たいうことは、陛下側が政権を信頼しておらず、なおかつ宮内庁内に深刻な意思疎通の問題と孤立があるということになる。

報道によると、陛下は近々ご自身のお立場を説明されたいという意向だと言う。お立場上「譲位」を言わない可能性もあるということだが、もしそうなればきわめて不自然なものとなるだろう。

一方で安倍首相に近い楺井会長が安倍政権にこのニュースを上奏しなかったとは考えにくい。可能性は2つある。NHKの内部でスタッフの叛乱のような動きが起きているか、安倍政権側が天皇退位の既成事実を作りたかったというものである。もし後者であれば本物のクーデターだ。とんでもない話だが、全く否定しきれないところにもどかしさがある。

天皇陛下は憲法上政治的な意見を表明しないというだけであって、自由意志は存在する。現在の自民党の憲法改正案は「天皇中心の政治に戻すべきだ」と考える人たちの意向を受けながら、天皇への政治的権限強化は唄われていない。引き続き「お人形」として利用しようとしているだけだ。今上天皇に地位を巡る意向があるということだけでも、こうした動きに影を落とすだろう。

多様性の排除に加担するNHK

NHKがひどい洗脳報道を流していた。編集段階で多様な検証がなされなかったことを示唆しておりきわめて危険である。ニュースは次のように展開した。

  1. 上司の「とりあえずこれやっといて」が分からない人がいる。
  2. これはコミュニケーションの問題だ。
  3. そうした人にはASDと呼ばれる「障害」が多い
  4. 発見するためには機械にかけると良い。まだ開発途上だが……
  5. 障害だと認定されたら特殊支援学級に入る。他の才能があるかもしれないけど、効率的な教育には耐えられないので仕方がないのだ。

これを読んでも「なんだ当たり前じゃないか」と思う人がいるかもしれない。とても危険だ。既に洗脳が相当程度進んでいると言ってよい。

第一に「とりあえず、これやっといて」と漠然とした指示を出す上司はマネージャー不適格だ。指示は明確であるべきである。これは上司が無能であるという描写でしかない。NHKにはそういう上司が多いのかもしれないが。

次にこれを即座に障害に結びつけることには問題がある。事例の中には会話の意味が読み取れない重度のASDの人が出てくるのだが「漠然とした上司の指示が分からない」こととコミュニケーション上の障害(グラデーションがあり一続きなのかもしれないが)には大きな隔たりがある。イントロとしては不適切である。

さらに「障害があれば機械で発見して取り除け」というのは、工場で製品を製造する時に使う考え方であって、人の育て方に当てはめるのには問題がある。これに何の疑問も持たないということは、後発工業国型のマインドセットにどっぷりと浸っていることを意味する。

また、効率的な(大勢の生徒を一人の教師で見るというような意味だろう)教育になじまない人は「とりあえず」特殊学級にという姿勢にも問題がある。多分、普通教育の方を見直すべきだろうが、それには予算が必要になりそうだ。もしくは特殊学級で才能を発見したら、それを伸ばせるようにすべきだろうが「とりあえず社会の片隅で生きてゆけるようにする」という姿勢には問題がある。

ここまでで十分グロテスクだ。本当に誰もこの報道方針に疑問を抱かなかかったのだろうか。NHKは多分「右から左に業務を流すこと」をジャーナリズムだと考えているのだろうということは伝わってくる。

この話の一番の問題は多様性の排除だろう。漠然とした空気が読めない人は「障害がある」として排除される。話の中に該当者が数字に興味を持つ子供が出てくる。母親としては「この特性をうまくいかせないか」と考えるのだが、医者は「普通学級にはなじまない」としてしまう。この子に数学の才能があるかどうかは分からないのだが、試してみる価値はある。実際に、資産のある家であれば、充実した教育を受けさせることもできたかもしれない。つまり「何が優秀か」ということは一つの尺度では図れないはずで、多様な価値観があってはじめて才能が生きることになる。

しかし教育費がかけられなくなると、こうした多様性に配慮ができなくなるわけだ。つまり、NHKは多様性を排除し、この国をよりいっそう退屈でつまらない国にするのに加担していることになる。

記者としては「かわいそうな両親や空気を読めずに苦しんでいる人を助けたい」とよかれと思って報道しているのかもしれないのだが、視聴者はこの姿勢を大いに非難すべきだろう。

 

NHKが朝鮮中央テレビ化しているのだが……

ある日のNHKのニュースが酷かった。その日にはこんな出来事があった。グアムで米軍機が墜落し、エジプトに向かう飛行機が消息を絶った。高速道路の工事現場が崩落した。そして、大阪でも殺人事件が発生した。スリランカでは大洪水が起きて30万人が家を失うというニュースがあった。

だが、NHKが時間を裂いたのは安倍首相がサミットにむけて何を準備しているかということだった。選挙向けにはバラマキと消費税増税延期が必要なので、そのための雰囲気作りをする必要がある。そのために「力強い政治リーダーとして、世界経済を牽引するために各国に要請を行っている」という絵を作りたかったようだ。いわばG7を国内政治に利用を幇助していたのである。

野党側はこれを見越して「自分たちが消費税減税を先に言った」という実績作りに熱心だ。アンチ野党の人たちが「財政再建はどうするんだ」などと騒ぎ始めているのだが、早晩に状況は変わるだろう。

各国のリーダーの思惑もだいたい分かっている。アメリカはヨーロッパと日本に支出を増やしてもらいたいと考えている。自分の政府はもう借金ができない(なにせ政府の閉鎖寸前まで追い込まれているのだ)からだ。ドイツは「やりたきゃ勝手にやれば」と思っているようだ。

だからNHKが作る絵は国内向けのプロパガンダにしか過ぎない。「北の指導者が経済活性化の為に尽力した」というのと似ている。全世界の人は、北朝鮮が経済的に圧倒的に南に負けていることが分かっていてあの絵を見ているから、アナウンサーたちの大仰な声がこっけいに見えるのだ。

安倍政権が圧力をかけているとは思わない。多分NHKの人たちは頭がいいので、与えられた状況でどうしたら出世できるかがよくわかっているのだろう。風向きが変われば、また変えればいいだけの話である。

と3日前くらいに考えたのだが、朝起きてどうでもよくなった。ふと「なぜ、自分はこれだけたくさんの出来事が起きているのか」知っているのだろうと考えたからだ。明らかにそれはネットがあるからだ。ニュースに興味があればYahooニュースかなんかを覗くか、Twitterのタイムラインを眺める。それだけでたいていのことは足りてしまうのである。

そもそもNHKのニュースをみて「安倍さんがんばってるなあ、誇らしいなあ」などと思っている人はほとんどいないだろう。「一億総活躍プラン」みたいなものが作られているのだが「財源は決まっていません」の一言で「ああ、また詐欺かよ」と思った人がほとんどなのではないだろうか。これはさすがにNHKも扱っており、財源が決まっていないこともきっちりと伝えていた。

高齢者はNHKに騙されるだろうと考える人がいるかもしれないのだが、朝日新聞を隅から隅まで読んでいて、有り余る時間に舛添さん問題などについて熱く語り合っているわけで、NHKを鵜呑みにして「安倍様は世界の首脳からの熱烈な要請を受けて力強い消費税増税延期を決断なされた」などと言えば笑われるだけだろう。

「このような政権追従の報道を続けていれば、そのうちにNHKは信頼を失うだろう」と書きたいのはやまやまなのだが、そもそも最初から信頼などされておらず、人々は好きな情報を好きなように解釈しているだけなのだ。

NHKが印象操作を試みるもあえなく失敗に終わる

安倍首相がメルケル首相を訪問した。NHKのニュースによると概要は次の通り。

  • 安倍首相はお城に招かれた。(特別待遇がほのめかされている)
  • 安倍首相はドイツにさらなる財政出動を要請した。
  • メルケル首相は、ドイツに移民が流入しており内需は喚起されていると語った。
  • 財政出動については、引き続きG7で協議することにした。
  • メルケル首相は日本のリーダーシップのもとで力強いメッセージを発することに賛同した

ところが、事前に様々な情報が出回っている。総合すると次の通り。報道の中で何がぼかされているのかがよく分かる。

  • 安倍首相はメルケル首相は、ドイツは難民の流入もあり、既に十分に財政出動していると主張し、安倍首相の提案をやんわり断った。(あるいは、両者は認識に違いがあることが分かった)
  • メルケル首相は、G7では代わりに規制緩和や財政規律などについて話し合いたいと語った。
  • メルケル首相は、競争的な通貨切り下げには勝者はなく、為替相場の安定が重要との認識を示した。
  • メルケル首相は、日本にNATOのメンバーシップをオファーし、フランスやイギリスを説得できると語った。

TBSでは「メルケル首相は財政出動について明言を避けた」としていて「課題が残った」としている。このラインがぎりぎり公平と言えるのではないかと思う。NHKのニュースだけを見ると、日本のリーダーシップにメルケル首相が賛同したという印象が得られる。だが、事前に様々な情報が入っている人から見ると、安倍さんはメルケル首相に相手にされていないことが分かる。それどころか安倍さんの政策や主張に釘を刺す発言もある。すると、却ってしらけた印象になってしまうのだ。

情報ソースは主に2つある。一つはクルーグマン教授の「東京で話し合われたこと」というものだ。安倍首相は「ドイツに財政出動させるにはどう説得すればいいか」とたずね、クルーグマン教授に「外交は専門外」だとやんわりと断られている。ノーベル賞学者を呼んでもこの程度のことしか聞けないのかと国民をあきれさせた。もう1つの情報ソースは外国の通信社などである。こちらはグーグル検索すれば簡単に手に入るし、Twitterでも情報が飛び交っている。特に専門知識は必要がない。

特にNATOの下りは重要だろう。第一に日本は集団的自衛権を行使できないので、NATOには加盟できない。しかし、日米同盟は別口と考えられている。「だったら、NATOにでも入れますよね」というのは、日本のダブルスタンダードに対する皮肉だ。次に、安倍さんは今回の旅行でロシアを訪問することになっている。ロシアとヨーロッパは緊張関係にある。NATOはロシアに対抗するための装置である。そこで、メルケルさんは「あなたはいったいどっちの側なの?」と迫ったわけである。

安倍さんのコウモリのような態度(日米同盟に臣従する態度を見せつつ、ロシアにも接近する)は警戒されているし、平和憲法を空文化してアメリカとの集団自衛にコミットする姿勢もあまりよくは思われていないのではないかと考えられる。

各社ともメインで伝えていないところを見ると、NATOの件は、何かのついでにほのめかしただけのようである。

よくNHKは大本営だという人がいるが、大本営が成り立つためには情報が遮断されていなければならない。ところが実際には様々な情報が飛び交っているから、大本営発表は単なる道化にしかならない。日本のマスコミはそのまま権威を失ってゆくのではないかと考えられる。

また、NHKだけでなく、特定の情報を鵜呑みにする(これは、NHKだけでなく、左派や右派、ないしは自分の専門だけの情報ソース)ことの危険性も示唆している。

NHKは薩摩川内の震度情報を隠蔽したのか?

先日「NHKは鹿児島の震度情報を隠蔽した。薩摩川内市には稼働中の原発があるからだ」と書いたら、多くのアクセスを貰った。すこし罪悪感を感じた。当初の印象だけで隠蔽と決めつけてよいのかと思ったからだ。そこで震度情報を改めてみてみた。結論は書かないので図をみて判断していただきたい。もし隠蔽ではなければ図こそがNHKの公平さを証明することになるだろう。

NHK側に立って擁護すると、当初は震源が熊本市近辺にあったので、鹿児島まで入らなかったという仮説が立てられる。

fig1

当初の震度情報。鹿児島が表示されていない。薩摩川内市は震度4だった。五島列島は震度2だが表示されている。鹿児島だけがない。fig2

八代市付近で起きた地震の情報。震度3以上が表示されている。上の図では震度2でも表示があったよなあと思う。よく分からない。どの地域を表示するかは恣意的に決められるのかもしれない。震源地は図のほぼ中央(ただし南北だけ)にある。詳しい震度(Yahoo!)はこちらから。

fig4

よく分からないので、最初の震度7の地震と5強の地震を比べてみた。これによると鹿児島県西部(薩摩地方)の震度は頭だけが出ていたはずで、やはり意図的に消されていたことが分かる。善意に解釈すれば中途半端に出ていたので消したことになる。だが、宮崎県南部にもすべてが表示されていないものがあり、中途半端に出ていただけで消したという解釈は少し難しいかもしれない。