最近、北方領土返還運動に2つの動きがあった。1つは北方領土が返還されてもロシア人の権益は守りますよという条件提示で、もう1つはロシアとの経済協力だ。いろいろ考えたのだが、北方領土返還を中心において考えるとなんかモヤモヤする。このモヤモヤの原因は何だろうか。
安倍首相を取り巻いている右側の人たちが、日本に居留する外国人の権利を容認するはずはない。在日韓国人・朝鮮人に「国へ帰れ」などという人たちなのだ。ゆえに実現可能だと思うならば、支持者たちから大きな反対運動が起きていただろう。
一方でロシアへの経済協力を見ても「日本側の大企業が得をしそうな話」ばかりだ。欧米各国はロシアと対峙しており経済的なサンクションができている。特にウクライナとの関係が悪化しクリミア半島がロシアに組み入れられから緊張は高まっている。逆にいえば、ここに抜け駆けのチャンスが生まれているのだが、サンクションに抜け穴があると効果が薄れるので、何か理由がないと経済協力がやりにくい。
ロシアがソ連だった時代、一番密接な関係を持っていたのは共産党なのだろうが、ソ連が解体してからは権益上の空白地になっている。安倍政権はロシア権益を取り込みたいのだろう。現在、ロシア権益に一番近いのは鈴木宗男氏だから、彼を復権させたいのも当然といえば当然のことなのかもしれない。
何の理由もなくロシアに利益供与すれば野党が追及する理由を与えかねない。しかし「北方領土を取り戻そう」という大義名分さえあれば、いくらでも投資することができると安倍政権は考えたのではないだろうか。政府の関与が強まれば、政治家たちがうけるキックバックも大きくなるし利権の分配を通じて国内の権力基盤も確固たるものになる。
反対の立場に立てばわかるのだが、韓国が「経済援助してやるから対馬をよこせ」などと言っても国内世論が応じるとは思えない。ロシアは北方領土を第二次世界大戦で勝ち取った正当な領土だと信じているのだから、経済協力くらいで領土について妥協することはないだろう。小クリルと呼ばれる人もあまりいない二島くらいは返してくれるかもしれない。さらに、向こうから見れば自民党がロシア権益を欲しがっていることは明白だろう。相手(つまり自民党)にいい思いをさせた上にお土産まで渡す義理はない。交渉上の主導権はロシア側にある。欲しがっているのは日本だからだ。
自民党はロシア権益が欲しいだけで、北方領土はそのためのエクスキューズに過ぎないと考えると全てが落ちるわけである。分からないとモヤモヤとするニュースだが、一度わかってしまうと、なんてことはない問題だということになる。