山本一郎氏が炎上している。知っている人は知っていると思うのだが、ぜんぜん知らないと言う人もいるのではないだろうか。つまり、騒ぎは局地的に起きている。
「山本一郎氏はIT関連の投資をしているみたいだけど、本当は何をしている人なんだろうね」という人だ。もともと別のハンドルネームで知られていたのだが、いつのまにかフジテレビのコメンテータになっていた。コンテンツ業界のどろどろを面白おかしく書く作風はなかなか面白かったのだが、最近Twitterでおかしな言動を繰り返すようになった。
山本一郎氏はTwitter界隈ではとにかく評判が悪い。例えば豊洲では大方が「豊洲移転は無理だろう」という見方をしているのだが、それに逆らっている。のんさんが改名騒ぎを起こしたときも事務所は悪くないという側についた。体制側の弁護を買って出ることで1%の代弁をし、99%の不興を買うのである。
この山本氏に経歴詐称疑惑が持ち上がった。映画評論家の町山智浩氏が「追い込み」をかけたからだ。過去のプロジェクトや留学先を「盛っていた」らしい。これに小田嶋隆氏が参入した。ネット上ではすでに「病的なうそつき」とういう評判になっている。ネットにはこの手の揉め事のウォッチャーがおり頼みもしないのにこれを拡散する。山本氏本人は反論せずスルーしようとしている。今回の件について本人のコメントはこちら。訴訟をほのめかしていると言う話もある。しかし、いつもの作風だと「ああいえばこういう」はずで、スルーはちょっと不自然な印象だ。
この揉め事自体は言論プロレスの一種なので特に興味はないのだが、この人がフジテレビのコメンテータをしているのは問題だなあと思う。フジテレビはショーンK氏を司会にしようとした報道番組が頓挫したばかりだ。ショーンK氏は華やかな経歴を持ったイケメンハーフだったが、実際には整形した日本人で経歴も大方が嘘だった。
どうして山本氏が経歴を詐称したのかと考えてみたのだが、テレビではそっちのほうが受けがよかったからだろう。しかし、テレビの視聴者に受け企画を立てる人は企画書にインパクトのある経歴が書きたいのではないだろうか。だが、実際に企画書が通ってしまうとそれを確かめる必要はなくなってしまう。
そう考えるとフジテレビが凋落していった意味が分かる。フジテレビは何が受けるかより社内でどのような企画書が受けるかということを基準に番組を作っているのではないだろうか。受け手が何を求めているのかが分からないのに視聴率が取れるはずはないわけで、これが全体的な凋落につながっているのだろう。
こうしたことは経営コンサルの世界でも起きているのではないだろうか。経営コンサルの中には経営者向けの芸者さんが混じっている。重用されるのは美貌ではなく経歴書の美しさだ。多分、本当にアメリカの有名大学のMBAを持っている人もいるだろうし、そうでないのに偽装している人もいるかもしれない。しかし経営コンサルをありがたがるような会社の社長がMBAの知識を持っているとは思えない。本物と偽者の区別がつかないわけだ。そうしたコンサルを導入した会社の中には社員の意向や現実を無視して経営者に受けそうな「改革」を実行するところが出てくる。そういう会社は経営が傾いてゆくことになるだろうが、社長は気にしない。その痛みは一時的なものだと思い込んでいるからだ。
山本氏のキャリアが本物か偽者かは分からないのだが、そもそも自由を目指してフリーランスや経営者になったはずなのにテレビの要請に応えて自分の経歴をつまびらかにできないのだとすると本末転倒と言えるだろう。と同時に、昼間の世界にのこのこと出てこない限りは芸者さんの化粧を剥いではいけない気もする。
多分、もうテレビはまともな世界ではないのだ。