日本語には不思議な現象がある。例えば稲(いね)は別の言葉(例:穂)を付けると、なぜか「いねほ」とは読まずに「いなほ」と言葉の形が変わる。これを母音交替と呼ぶ。特に多いのが、名詞の語尾の「え」が「あ」に変わるものだ。「あめ」と「あま」のどちらが原形なのかは議論があるそうだ。
- 雨 => 天の川、雨雲、雨足、雨傘、雨乞い、雨ざらし
- 風 => 風向き、風上
- 眼 => 瞼、目の当たり
- 手 => 掌
- 胸 => 胸騒ぎ、胸元
- 声(こゑ) => 声色、声高
- 金 => 金気、金物
- 稲 => 稲穂、稲妻
- 上(うへ) => 上着
- 酒 => 酒樽
- 家=>家並、家捜し
このように名詞を足して新しい名詞を作る場合には連濁という現象を伴うものも多い。例えば「あまのかわ」とは読まずに「あまのがわ」とよむ。「か」が濁って「が」になる。声色のようになぜ「わ」が出てくるのか分からないものもあるが、旧かな遣いではこゑ(we)なのだそうだ。
なぜこのような事が起こるかは定かではない。なんとなく読みやすいからそうなると言いたいところなのだが、例えば「稲刈り(いねかり)」のように変わらないものがある。稲刈りは連濁も起さない。また腕(前)、店(先)、壁(際)のように、全く変わらない単語もある。「かべぎわ」のように母音交替はないが、連濁はあるものもある。つまり、ルールらしきものが見当たらない。専門家の間でも意見の相違があるらしく、全ては仮説の域を出ない。
さらに、不思議ものに海原がある。「うなばら」なので、原形は「うね」になりそうだが、実際の原形は「うみ」だ。
普段から普通にしゃべっている日本語だが「これはなぜ」と聞かれると分からないことは意外と多いものだ。