DHCの会長が在日朝鮮人を屈辱するような言葉を使って炎上していると言うAFPのニュースをみた。問題になっているのは「使われている言葉」のようである。ネットで叩かれていると書かれていたのだが、実はこの問題を知らなかった。それくらい局所的な争いでありマーケティングにはさほど影響はなさそうだ。ただDHCの経営は大丈夫なのかなとは思った。
記事を読んでみたのだが、広告ではなく自社サイトに書かれた言葉でありなおかつ攻撃されているのは、在日朝鮮人・韓国人ではなくサントリーのようだ。そういえば盛んにテレビコマーシャルでサントリーウエルネスの広告を見る。ハフィントンポストによるとサントリーは金持ち喧嘩せずと言う態度のようである。まあ、これは当然であろう。彼らは満足にビジネスができているので喧嘩する理由がない。
DHCのサイトにはまだ問題のキャンペーンページが残っているので読んでみた。自分たちは安い価格で商品を作っている。安いので売り上げ総額から見るとサントリーに負けているように見える。それが悔しいから調査会社に文句をつけた。それでもおさまらないのでクジのキャンペーンをやることにした。高いにも関わらずサントリーを買うやからが多いのは消費者の一部がバカだからだろう。そんなバカを騙しているのがサントリーで在日朝鮮人を広告に使っている。こう言うことが書かれている。
めちゃくちゃである。
このサイトの一番の問題点はおそらく差別表現ではなく「お客がバカだから自分たちの商品の価値がわからない」と言っているところである。
- 人の気持ちがわからず共感力によって人を動かすことができないが
- 強い序列意識がある
つまり心理的な合理化を測ろうとしたのである。悔しいと思うことはよくあり特に責められるようなことでもない。しかし「一人でやればいいのに」とは思った。何も韓国系日本人や在日の人たちをまきこむような話ではない。
マーケティングの醍醐味は姿の見えないお客さんをいかに可視化する点にある。想像力を働かせて相手のニーズを汲み取った上で見えない相手ではなく具体的にイメージした相手に訴求するメッセージを打ち出す必要がある。共感作業としてはかなり高級である。DHCはこれができていないばかりか自分の苛立ちを客に向けてしまう。おそらく従業員も同じように苛立ちをぶつけられているのではないかとおもってしまった。かわいそうなことだ。
おそらくDHCの会長はこうした複雑さが扱えないので一万円を配れば相手が振り向いてくれるのでは?と思ったのだろう。こうしたインセンティブベースのキャンペーンは何もDHCのものだけではない。Yahoo!もやたらにクジを押し付けてくる。楽天もポイントなどのキャンペーンに頼りがちである。さらに付け加えるとするならば菅政権もポイントが大好きである。マイナンバーカードの普及に利便性の訴求ではなく「ポイント」をつけたがるのもその一例である。またGoToキャンペーンもその一環だ。おそらく客の気持ちを掴めない経営者や政治家は「人はお金になびく」と思ってしまうのだろう。そして、そう言う経営者はポイント目当てのお客を引き寄せる。だからポイントやキャンペーンが終われば客はいなくなってしまう。
もう一つ顕著なのが「ランキング」への異常なこだわりである。矢野総合研究所に文句をつけたそうだ。売上高ベースでは「高いものを売っているサントリーの方がえらい」ということになってしまうのでそれが許せないのだろう。さらに純粋な日本人の方が韓国系の日本人や韓国人よりもえらいという暗黙の前提があるのかもしれない。
共感力のある人は相手のニーズをうまく汲み取り協力関係を構築することができる。ない人はそれができないため序列にこだわりがちだ。つまり「相手の欲しがるものをくれてやる」か「俺の方がえらいから言うことを聞け」ということになってしまうのである。無条件の愛が信じられず条件付きの愛と恫喝に走ってしまうとも言える。
最近SNSでいわゆるネトウヨと言う人の文章を査読してる。だいたい1年半くらいやってわかったのは、彼らが持っている強い序列へのこだわりである。協力関係のような難しいものは理解できないので固定的な序列をもとに世界理解をしがちなのである。その時に細かい情報はスキップされる傾向にある。このため彼らは記事の文脈を切り取ったり原典表示を省略し自分に都合の良い物語を構築しがちである。
なんとなくこう言う人たちを見ると説得したくなってしまうのだがよく考えてみれば協力関係が作れない人たちと交流しても単に時間を無駄にするだけである。
DHCは安いサプリをコンビニで売っている。安いサプリが欲しい人はDHCを買えばいいと思うし、会長が嫌いな人は買うのを控えればいいだろう。単にそれだけのことである。ただ、こうしたニュースが外信に乗って他国に流れるのはすこし恥ずかしいことだなとは思う。