「バーニングサンゲート」という言葉がある。BIGBANGのV.Iが経営に携わっていたクラブ「バーニング・サン」で起きたスキャンダルを発端にした事件である。これが韓国では連日大きな騒ぎになっていて日本にも飛び火しそうである。詳細は朝鮮日報によくまとまっている。
この事件からわかることは二つある。1つ目は我々はかなり細分化された情報社会を生きているということである。この事件を知ったのはTwitterなので、知っている人はこの問題についてかなり詳しくなっているはずだ。だが、一方で安倍首相批判を繰り返しているだけの人もおり、人によって知っている情報がかなり違ってきていることがわかる。地上波だけを見て知りたい情報だけを捕捉している人と、アンテナを外に向けようとしている人の間にはかなりの格差が開くという社会になりつつある。自分の問題を伝えたいと考える人は「そもそも情報が細分化されている」ということを念頭に置いて話を始めたほうがいい。「NHKが取り上げてくれない」と騒いでいるだけでは事態は変わらないだろう。
もう1つわかるのは日本が経済成長しないことを前提にした定常化社会に入りつつあるということである。韓国は外国からの投資を呼び込んで経済上昇できる社会であり、バラエティー番組を見ていても「投資」の話がよく出てくる。生活を安定させるためにはとにかくお金を稼いで何かに投資することが重要なのだ。日本と生活習慣が似ている点もあるので、こうした違いが人々の生活やマインドセットにどのような影響を与えるのかということがよくわかる。そこから振り返ると私たちの「閉塞感に溢れる社会」のありようも見えてくる。日本の状態だけを見ていても日本の問題を解決する糸口は見えてこない。
BIGBANGは2006年にデビューした有名なアイドルグループだ。スンリ(日本ではV.Iという名前で活動している)はその末っ子(マンネ)であり、他のメンバーが現在徴兵されているなかで一人で芸能活動をしていた。日本語が堪能で日本のバラエティにも度々出ており、通訳なしの早口でダウンタウンとの会話が成り立つほどである。さらに起業家としても知られ、ラーメン屋やクラブなどを経営していた。この顔を利用したバラエティ番組も放送されている。貧しい家からのし上がった「成功者」としてスンリとギャツビーを合成したスンツビーという名前でも知られるという報道もあった。
ところが、2019年2月に経営していたクラブバーニングサンで違法薬物の取引が疑惑が報道され、クラブ代表に薬物の陽性反応が出た。スンリは当初これを「知らない」と否認しており、クラブの代表を降り、電撃入隊を発表する。
ところが程なくして捜査はスンリの性接待疑惑に飛び火した。違法な女性のやり取り(つまり売春斡旋である)が行われているという疑惑である。最初は否定していたスンリだが、非公開のSNS上のやり取りなどの証拠が次々と報道されて炎上状態になった。中央日報の伝えるところによるとかねてから海外での違法賭博容疑などもかけられていたそうだ。2019年3月には芸能界引退を発表したが騒ぎは収まらなかった。SNSのやり取りが公開されると芸能人が次々と巻き込まれていったからである。
スンリが芸能界を引退を発表するのと同時に、女性をやり取りしたり性行為の内容を盗撮してSNSに流した芸能人がいたことがわかってきた。アイドルのファンは女性なので、今度はファンが怒り出す。歌手のチョン・ジュンヨンが盗撮したものを流布したという容疑で警察の調査に応じ、引退を発表する。KBSの日曜日のバラエティーショー「一泊二日」がチョン・ジュンヨン(チョンジュニョンとも)の降板を発表したが騒ぎは収まらず、結局番組が「お蔵入り」になった。KBSは謝罪文を出したがmこれで問題は終わらなかった。一泊二日のプロデューサもグループチャットに参加していたのではという疑惑や出演者の賭けゴルフをほのめかす内容もあり出演者たちが芸能活動の自粛を決める事態に発展している。プロデューサが絡んでいれば番組の打ち切りも決まるかもしれない。
またこの種の動画をチョン・ジュンヨンと共有配布したとしてFTISLANDのチェ・ジョンフンも警察の捜査を受けており、芸能界の引退を表明した。今度はこれが警察に飛び火する。飲酒運転で免許停止処分を受けていたが公にしなかったという疑惑が持たれている。この隠蔽に警察が関わっていたのではというのでは?と囁かれ、騒ぎがさらに拡大した。この警察関係者はチャットの中では「警察総長」と呼ばれている。そのような役職はないのだが、A総警という名前までが出てきており、ついには具体的な名前(氏だけだが)も報道された。現在この人には待機命令が出ているそうだ。
CNBLUEのイ・ジョンヒョンにも関与の疑惑の目が向けられており「グループ脱退間近なのでは」などと言われている。こちらもチェ・ジョンフンとの間の通信記録がある。一連の事件に直接関与したという証拠は上がっていないのだが、やはり「女性をモノのようにやり取りした」ことが不適切だと考えられている。
この事件は日本とはあまり関係がないと思われていたのだが、日本の建設会社も性接待を受けていたという報道がある。まだ匿名扱いだが日本のネットでは名前が特定されている。日本のタレントを家族に持つ社長さんなのだそうだ。
この問題はもともと違法薬物の取引問題が発端になっているのだが、本筋とされているのはスンリさんが韓国の会社と組んで海外投資家からお金を得るために性接待をしていたのではという事件である。そして、その背後には警察の上層部も絡んでいたのではという「癒着」の疑いがかかっている。つまり、官民汚職事件の様相を呈しているのだ。関係者の対応が後手にまわり連日有名アイドルや名物番組の名前が取りざたされることで人々の興味を掻き立て続けている。
さらに国政にも関係するスキャンダルも取りざたされている。バーニングサンゲートは枝葉に過ぎないというのだ。だた、この記事を読むと「私が自殺することはないが」などというほのめかしが書かれており、こうなるともう韓流ドラマの世界である。ネタ元がスポーツ新聞なのでどこまでが本当なのかがわからなくなる。「清潔なイメージで売っていたアイドルが盗撮や女性のやり取りをしていた」という意外性があることからもう何が起きても不思議ではないと思われているのだろう。
ここまで加熱しているバーニングサンゲードだが日本では断片的にしか報道されていない。このためTwitterでこれを断片的に知った人のなかには「何を騒いでいるの?」と不思議がる人もいるようだ。