一眼レフを買った。もともとは12万円くらいするらしいのだが、中古で4,000円だった。で、買ってからやたらに「これはいいカメラなのか」ということが気になりだした。古道具屋でジャンクとして見つけたカメラがいいカメラだとはどうしても思えなかったのだ。
で、思ったのだが「いいカメラ」って結局何なんだろうか。
もちろん「目の前にある色をそのまま再現できるのが良いカメラなんだよ」という答えがあり得るのだが、これがなかなか難しい問題だ。そもそも、目の知覚というのはきわめて柔軟かつ曖昧なのだ。例えば、画面全域をくっきりと捉えるカメラがよいカメラなのかというと、そういうことはない。対象物だけをくっきりさせたい(これを背景ぼけというそうだ)と思えば、センサーが大きいカメラを使って、明るいレンズを使わなければならない。明るいところと暗いところを両方知覚しようと思えば、その逆にフラット目にする必要がある。なかなか難しい。
そうこう考えていたところ、色の再現性というものが気になり始めた。これが(ちょっと調べただけでも)おかしくなりそうなほど複雑だ。いくつか理由がある。第一に人が思っている色というのは目の前の色とは違っている。これを「記憶色」などと言うそうである。この記憶色に合わせると色合いが派手で輪郭がくっきりした絵になりがちである。しかし、実際の絵というのはそこまで派手ではない。みんな「捏造されたリアル」を知覚しているのだ。このため、よいカメラだと却って物足りなく感じたりすることがあるのだ。キャノンだと複数種類のプロファイルが選べる。派手めのセットとそうでもないセットがついていた。
そもそもなんのために「きれいな色を再現するのだろうか」という問題がある。Yahoo!知恵袋の質問などを見ると、意外とこれを考えていない人が多いみたいだ。例えば、ウェブで使う場合「きれいな色」にはあまり意味がない。モニターによって色が違うからだ。手元には複数のパソコンがある。一応色合わせをしているのだが、モニターの経年変化などにより発色がバラバラで、一つとして同じ発色のモニターはない。よいカメラはsRGBとAdobe RGBが使えるのだが、モニターはsRGBにしか対応していないことが多い。
では、モニターをきっちり設定したらきれいに見えるのかというとそうでもない。目の前にある白は黄色か青に倒れているはずなのだが、たいていの人は気にも留めないだろう。朝と夕方では違って見えるし、蛍光灯と太陽光でも違って見える。日本人はたいてい青色に倒れた白を「白」だと思っていると思うのだが、欧米人は黄色に倒れた白(色温度の低い白)を白だと考える。環境光と知覚の好みは人や文化によって違っているのだ。
どうしたらスマホで撮影した写真をコンビニできれいに印刷できるのかと思い、フジ・ゼロックス(セブンイレブンでサービスを展開している)に聞いてみた。コンビニシステムにはカラーマネージメントはないので、試しに出力してからマッチングしてほしいとのことだ。つまり、一度印刷した上でモニターの色合わせをしろということになる。ちなみにマッキントッシュだと[ディスプレイ環境設定]から[カラー]を選ぶと色のマッチングができる。プロファイルが切り替えできるので、環境にあわせて作業するのも手かもしれない。
市販のプリンターはsRBGにしておくと、カラーマッチングしてくれることが多いようだ。ColorSyncではなく、プリンタードライバー側でカラーマッチングする設定になっていることが多い。それでも特定の色がでなくてがっかりしたという人も多いのではないだろうか。
それでも多くの人は、特定の色の発色具合をそんなに気にしないのではないだろうか。色を絶対的に見ている(絶対色覚)というものはなく、相対的に判断しているからではないかと思う。コントラストをくっきりさせておくと、一般的な需要には耐えられるのだろう。
さて、最初の問題に戻る。どのカメラがよいカメラなのかという問題である。プロユースは別として、結局「どの目的で使うのか」ということが問題になるのではないかと思う。気軽に撮れて記憶色に沿った派手な色合いが好きな人もいるだろうし、思い通りの立体感やぼかし具合が欲しいと思う人もいるだろう。結局「人それぞれ」ということになるわけだが、何がしたいかが分からないと、よいカメラというものは存在しないということになる。
ちなみに今回買ったカメラは、ライブビュー(ファインダー代わりにモニターを使う)ができない。WiFiやGPSもついていない。仕上がりを確認するためにいちいちパソコンにCFカードを差し替えるのは意外に面倒である。さらに筐体がプラスチックでなんとなく安っぽい。発売当時に価格を抑えるためにあえてプラスチックにしたのだそうだ。