今回は高齢者目線からauの最適プランいついて考える。今回のアドバイスは「プランを理解した上で変更するときは誰かについてきてもらう」というものである。また今回の記事を読むとKDDIがスマホの会社から高齢者のライフサポートカンパニーに移行しようとしている様子もわかる。前回見た楽天とはかなりビジネスモデルが違うことがわかって面白い。
auの契約を見直そうと考えていた。格安のサービスpovoができたからである。povoはカスタマーサポートが受けられない代わりにデータ20GBと5分以内の電話かけ放題がついて2,980円というサービスである。電話かけ放題だと3,480円になる。KDDIグループにはこの他にQUという会社がある。
KDDIはau、povo、UQという三本体制になっている。だいたいこの辺りまでは「知っているよ」という人が多いのではないだろうか。だがこの三本体制が大きな問題を引き起こしてもいる。
最近povoが大々的に宣伝されていて「これに乗り換えたい」という人が増えているのではないかと思う。ところが、スマホを使っていない人の場合データ量によってはauの方がpovoよりも低い料金でスマホが利用できる。月額980円(税別)・2年目以降1980円というサービスがあるのだ。5分以内の電話かけ放題が含まれている。
「格安よりも安いなんてワナがあるに決まっている」と思う人もいるかもしれない。確かにワナはある。povoは20GBのデータがついているがauの最低料金でカバーされるのは1GBだけなのだ。1GBを超えて2GBまでは1,000円が加算される。さらに20GBまで加算が進み最終的には4,980円となる。さらに「かけ放題」をつけるとこれもまた1,000円が加算されることになる。プランがやや複雑である。さらにおなじみの2年縛りもついているが、解約料が1000円になり事実上意味が失われた。
結論から言うとほとんどの月が1GB未満と言う使い方ならauの方がオトクである。実はこれからスマホでデビューしたいが家にはネット環境があり散歩程度しかスマホを持ち歩かないくらいのひとなら1GBは十分なデータ量だ。
若い人であれば「1GBなどとてもギガが足りない」と思うだろう。だが自宅にいることが多くたまに散歩の時にスマホを持ち歩くと言う人は、メールができて、ポイントカードが使えて、たまに調べ物でネットをするくらいしかデータを使わないだろう。おそらくこれくらいの利用であれば1GBも使わないはずだ。ちなみに2GBまで使うと若干auの方が高くなるがこれはほとんど誤差の程度だ。
つまり、現在スマホを使っておらずなおかつ安いサービスを求めているならauに止まった方がトクなのである。
さらに今なら「スマホ切り替え」へのインセンティブとしてスマホの代金を22,000円分補助してもらえる。iPhoneSEが55,270円だそうだがこれが33,270円になる。povoだとおそらくこれは自前で調達してこなければならない。iPhoneSEは高齢者向けというわけではない。この記事を書いている時点では最新のスマホである。家族に評判を聞いてみればよくわかると思う。つまり「みんなと同じスマホ」の最新型なのだ。ただしiPhoneとしては機能と価格が抑えられている。
ではやはり後になって、データは3GBくらい使うようだとなった場合はどうだろうか。auの新プランにはやはり2年縛りがあるの。だが、総務省の意向を受けて解約料が大幅に下がったようである。新しい契約から新規の解約料が適用され1,000円に下がった。つまり、途中で抜けてもさほど困らない程度に解約料が引き下げられたのだ。サービス変更扱いなので転出に必要な手数料なども発生しないようだがまだまだ詳細が決まっていない点も多い。
この他にQUモバイルというサービスがある。
ただ、やはり「現役世代と同じスマホは敷居が高い」と言う人もいるだろう。高齢者同士と家族しかしか知り合いがないと言う場合である。
実際にauのページは「年寄りは孤立しているだろう」と言う前提で書かれているようである。この「auでおトクにスマホスタート!」というページは絶妙にわかりにくいが、要するに電話しかしないような高齢者がスマホを覚えるという前提で書かれている。これも現役世代では思いつかないニーズである。つまり世の中にキャッチャップしたいという人が多いのである。高齢者はみんなと同じがいいのだ。
auの側に高齢者は簡単なスマホを使いたがるに違いないという思い込みがあるのだろう。インターフェイスが単純な簡単スマホに誘導されてしまう。アンドロイドの簡単スマホにすると国内通話が0円と言うサービスがあり安心感はある。確かに高齢者同士は通話中心だろうからこっちの方がいいかもしれない。ただ、使われているアンドロイド端末は機能的には見劣りする。競争力を失いつつある国産の携帯会社はこちらにシフトしているようである。
三ヶ月は相談無料なので良さそうだが実はその後は有料のサポートサービスに誘導されてしまう。つまり「おトク」につられて月々380円のサポートを売りつけられてしまう可能性が高いのだ。380円という価格設定が心憎い。なんか出せそうな範囲ではある。
これはおそらくauに限ったことではないだろうが、人件費の負担を減らすため現役世代はサポートレスへと移行する。その一方で高齢者への窓口サービスは有料サービスにしようとしていることがわかる。だんだんと代理店を「老人介護と啓蒙の場」に変えようとしているのかもしれない。だがこうすることで代理店をコストセンターからプロフィットセンターに転換することはできる。
確かにお金を払ってでもスマホサポートを受けたいと言う人はいるだろう。例えば、高齢者同士でこれからスマホを覚えたいがやはり「時間を気にせずにお話ができる電話が一番」という人は通話無料サービスで電話代を浮かせる代わりにサポート代を380円を毎月支払えばいいのだ。
auがオススメする京セラのBASIO4を見てみたが、ガラホ型の限定LINEではなくきちんとビデオ通話もできるLINEのようである。高齢者のスマホはよくわからないがとにかく時代についてゆかねばと言う心情をついた心憎い商品になっている。さらにau payへ誘導しようとしている。KDDIはスマホを売る会社ではなく老人のライフサポートカンパニーに変わろうとしてるのではないかという様子が伺える。マニュアルを見ると「ぎゅっと押す」などと書いてある。高齢者を実際に見て「スマホをタッチ操作するのが苦手だ」ということがわかっているようだ。
整理すると次のようになる。一概に高齢者といってもライフスタイルや家族のサポートの有無によって使い勝手のいい選択肢はちがってくるのだろう。
- 出勤したり外に出かけたりしてデータをたくさん使う人はおそらくpovoがよい。高齢世代でもこういう人はいるだろう。
- 自宅にwi-fiiや固定電話があり、家族に相談できて、散歩や買い物にスマホを持ち出す程度の人はauでスマホ(機種はiPhoneSEかアンドロイドを選べる)がよい。現役世代と同じスマホが安く持てる。
- 高齢者同士で通話を楽しみつつ、サポートも受けたいなら、簡単スマホ+サポートサービスが良いかもしれない。少し年寄りくさいが安心感はえられる。
ここまで明確に整理できたら自分の目的に合わせてプランを選べばいい。だがそれが一筋縄ではゆかない。まず「auを抜けたい」というとKDDIグループ全体で引き止めが始まる。ところが、実はオペレータや代理店の店員たちはインセンティブに縛られている。このため引き止めが成功したとみるや別の人が出てきて彼らが誘導したい割高なサービスへの誘導が始まるのだ。
具体的にはこんな経験をした。まずauが解釈期間だから抜けたいのだといった。この時にUQモバイルの切り替えセンターに電話をしてしまった。おそらくこの時点でUQの潜在顧客としてマークされたのだろう。このあとすべての電話がUQモバイルに誘導されるようになってしまった。
UQモバイルはまずauの格安サービスを勧めてきた。
何回か電話を進めるうちにauでいいやと思うようになってきた。すると今度は電話が別の人に転送された。引き止める人とセールスをする人は別になっていて「いや実はauのサービスにはこんな欠点もある」としてUQモバイルの新しいS/M/Lプランを勧めてきた。ここでまずやんわりと断ったのだがしつこくセールスをしてくる。
引き止め工作をリテンションといいより高いものを売りつけようとすることをアップセル・クロスセルなどという。KDDIはおそらくこの担当者を分けている。つまり「あなたが前に言っていたことと違うではないか」と言えないようにしているのだ。おそらく全体の仕組みをよくわからずにこの仕組みに乗ってしまうと彼らが好むサービスに誘導されてしまうことになる。
以前、LINEモバイルで自分が買ってきたiPhone6sを開通させたことがあるがこんな面倒な「戦い」の必要はなかった。実はMVNOの方が精神的には楽なんだなと思った。だが高齢者はメリットとデメリットを理解した上でデメリットをカバーするような使い方をすることなどできない。ところがKDDIの内部では壮絶な「食い合い」があり入ってきた客は全てこの食い合いに巻き込まれることになる。おそらく獲得してきた客を他の部署が奪わないという彼らなりの紳士協定もあるのだろう。
KDDIが全体で消費者を騙そうとしていることになるのだが、おそらく事情はより複雑である。KDDIは会社全体のことを考えてビジネスプランを立てているのかもしれないのだが、それは上層部の話である。実行部隊は「自分たちに与えられているミッション」が成功すればいいので会社全体のブランド価値については考えない。彼らは自分が売りたいものを売る。このため業界全体が不透明になりユーザーにとっての最適化が進まないのである。
菅総理が本当にユーザー利便性を考えるなら実は上層部に圧力をかけるのではなくこうしたビジネス構造を改革すべきである。だがこのビジネス構造はおそらく小泉・竹中路線によって生まれている。終身雇用が崩れ社員は会社に貢献しなくなった。代わりに非正規の職員たちや代理店やコールセンターの社員がそれぞれの細かな目標を達成するために部分最適化を起こしているのだろう。
今回のケースではUQモバイルのアップセル・クロスセル担当者を怒鳴りつけた。彼は自分の成績に結びつかないことがわかると興味を失い無礼な口調でauキャンペーンセンターというところに電話をつないだ。
auキャンペーンセンターは既存ガラホ客をスマホに誘導するミッションを請け負っていてスムーズに会話は進んだ。機械的に手続きを進めてゆく中であまりにも単語がわかりにくいので「それはどういう意味か?」と聞いたのだが彼女はそれに答えられなかった。おそらく自分が何を説明しているのか彼女はよく理解していないと思う。もちろん客も理解はしていないだろう。つまり、誰もわからないのにただ言葉のやり取りが法令に則り延々と続いているのである。
KDDIが全体として提供しているサービスは必ずしも悪いものではないのだが、中の構造がぐちゃぐちゃになっていてユーザーが理論武装・知識武装した上で挑まなければ対抗できないようになっている。これが今の携帯電話会社の問題のようだ。ただ当初の目的は達成できた。無駄な売り込みが30分ほどあり手続きも30分ほどかかった。通話時間の記録を見たら全部で1時間30分を使っていた。