食品廃棄率の嘘と本当

Twitterで日本は輸入食品の約半分を捨てているというツイートが流れてきた。これを見て「ひどい」と思った。日本は流通が現代化されていないので無駄が多いだろうと思った。業界が自浄能力を発揮できないのなら、廃棄物に税金をかけて廃棄物を減らすべきだ。ところが、朝の頭でもう一度調べなおしてみると、この情報は嘘らしい。

消費者庁が調べたところ、日本の食品生産量は8424トンで、生産・流通段階では641万トンが廃棄されている。意外なことに家庭ではもっと多い1072万トンが廃棄されている。家庭の方がより多くの食品を捨てているのだ。そのうち可食部分は500~800万トンだという。つまり廃棄物には生ゴミも含まれているのだ。

どうも環境派の人たちは数字に弱いらしい。もともとの数値自体は正しいのだが、間違って引用することが多いのだ。これでは「大騒ぎしたいから数字を膨らませているだけ」と言われても仕方がない。多く流布している数字は輸入量が5500万トンで廃棄が1800万トンだというものだ。冷静になって考えるとなぜ輸入と廃棄を比べるのかがよくわからない。

とはいえ、これは放置していい問題とも思えない。消費者は割高な料金を支払っているからだ。特に問題なのはチャンスを逃さないために過剰に発注される可食廃棄物だろう。品切れになると買ってもらえないので多めに発注しておくのである。だが、冷静に考えるとブドウグミがないからといって何も買わないで帰る人がどれくらいいるのだろう。多くの人は(それが廃棄ロスの削減だと知っていれば)文句を言いながらもコーラグミを買って帰るのではないだろうか。また小売にとっては適正な在庫管理をするインセンティブになる。これは政策として取り組んでもよい問題だろう。

一方で、消費者は別のお金を払っている。それがゴミの焼却だ。生ゴミには多くの水分が含まれていて量もかさばる。税収が減少している地方自治体はゴミ焼却炉の維持に苦しんでいるのだが、生ゴミを減らせばその分だけ焼却炉の数を減らせる(あるいは新しいものを建てなくてもすむ)のである。消費者庁のレポートは東京都の数字を引用しているのだが、東京都は家庭ごみを開けて中身を調べたようだ。そこまでやってゴミを減らそうとしているのだろう。

生ゴミを減らすのはなかなか難しい。自治体の中には水分を抜くためのコンポストを推奨しているところもある。コンポストで自然乾燥してから家庭菜園の堆肥などに使うのだが、コンポストの購入に費用がかかる上、土地のない人たちにはあまりメリットがない。

もっと問題なのは、食べられるのに捨てられる食品だ。冷蔵庫の在庫管理システムなどを作ることは技術的には可能(冷蔵庫の食品の賞味期限を一覧表化してスマホなどで閲覧できるようにする)なのだろうが、一般の家庭の主婦が使いこなすのはなかなか難しそう。仮にすべての食費にバーコードをつけたとしても、買い物帰りにすべてチェックインするとしたら膨大な手間がかかるだろう。

「生ゴミに罰金を」などといえば批判を浴びそうだが、実際には多くの自治体がゴミ袋を有料化している。これはゴミを出さない家庭へのインセンティブになっている。

この問題について気になったのは、食品廃棄に反対する人たちのほとんどが「世界的にみて突出している」とか「飢えている人がたくさんいるのに」と言っていることだ。羞恥心や罪悪感で他人を操作しようとしていることになる。なぜ「お金がかかるから無駄をなくそう」といえないのだろうかと思うのだが、本質的に自分の欲求を通すことを禁止しているのだろうと思われる。だが、なぜそうなったのかということに合理的な説明はできそうにない。

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