韓国語はとても不思議な言語だ。漢字由来の言葉と文法はとても似ている。このためある程度までは勉強がスムーズに進む。だが固有語になると事情が変わる。日本語と全く似ていないのである。特に困るのが固有数詞だ。99まで全く法則性が見えない。いろいろ調べて見たのだがそもそも語源についてはよくわからないことが多いらしい。ハングルが登場するまで読み方を確定する方法がなかったので歴史的な経緯が見えないのである。それほど固有数詞には意識を向けてこなかったのだろう。だが固有数詞は意外と重要だ。年齢は全て固有数詞を使い物の数を数えるときにも固有数詞が使われる。つまり固有数詞が覚えられないと生活に支障が出てきてしまうのである。
韓国語・朝鮮語の固有数詞は次のように書く。ちなみにウムラウトoとウムラウトuは一般的な書き方ではないが混乱を避けるために使用した。
- 1/hana
- 2/dül/sümul
- 3/ses/sölün
- 4/nes/mahün
- 5/dasös/swin
- 6/jösös/jesun
- 7/ilgop/ilhün
- 8/jö,dül,p/jödün
- 9/aho,p/ahün
- 10/jöl
例えば1にあたるものはハナだが10はヨルである。これは日本語のひとつ・とおでも言えることなのでここまでの異論はない。だが2もトゥルだが20はスムルといい、3はセで30はソルンである。法則性が全くない。かろうじて法則性が出てくるのは7以降だ。10の単位はünで表されることが多いがおそらく経年的に変化しているのだろう。例外がいくつかある。ilgünがilhunになっている理由はなんとなく「音の変化なんだろうな」と思う。また60もjösünにしてしまうと80のjödünと紛らわしくなってしまうということなのかもしれない。だがnesünにならずmahünになってしまうとなると意味不明である。
固有語の語尾に着目すると、es,es,sös,sös,p,p,pとなっていてなんとなく法則がありそうななさそうな感じがする。2はdülなのだがこのdülという形が出てくるところがある。それが8だ。つまり6を2つという言い方になるように見える。だが8は6の倍数ではない。こうして「全体的になんとなく法則がありそうななさそうな」感じに崩れているので結局全部覚えるしかない。
朝鮮半島には固有語を表す方法がなかった上、学問の対象ともみなされなかった。中国からの学問の消化に忙しく固有語に注意を払う人はあまりいなかったのかもしれない。
日本語は韓国語に比べれば整理されている。ただやはり「固有語特有に崩れたんだろうな」というところはある。
- ひとつ/ hitotu
- ふたつ・はた(じ)=はたち/ hutatu/hatadi
- みっつ・みそ(じ)/mittu/misodi
- よっつ・よそ(じ)/yottu/yosodi
- いつつ・いそ(じ)/itutu/isodi
- むっつ・むそ(じ)/muttu/musodi
- ななつ・ななそ(じ)/nanatu/nanasoji
- やっつ・やそ(じ)/yattu/yasodi
- ここのつ・ここのそ(じ)/kokonotu/kokonosodi
- とお/to
二十をはたちと読むのは不思議な気がする。おそらく法則を当てはめると元々の形は「はたぢ」だったのだろう。アルファベットで書くとHu,tatsu/Hatadiであり母音が整理されているだけということもわかる。単純な母音調和が起こっているわけではなく「とぅつ」という言い方が嫌われて母音が分散していることもうかがえる。こうした整理がされているのは「う・う」だけであり「お・お」や「あ・あ」では整理されないことから比較的に「喉の奥の発音」である「う」の重なるのが嫌われていたらしいという気がする。日本語は後舌母音が脱落気味の言語なのだそうだ。例えば日本語には後舌の「あ」はない。
だがこれが他の固有語にも言えることなのかまではわからない。日本語も早くからかな表記と発音の間にはずれが生じていた。つまり日本語には「音の記録」はあまり残っていないのだ。
満州語についても調べて見た。日本語では資料がないので英語の説明を探してきた。3までは共通点がなく4で一度共通のd〜uという形が出てくる。5で一度形が崩れて6からはめでたく基本形が現れる。
つまり韓国語と満州語にも共通性がない。ちなみに満州語の15はtofohonという固有なのだそうだ。5に特別の思い入れがある言語なのかもしれない。
- 1/em
- 2/juwe/orin
- 3/ilan/gvsin
- 4/duin/dehu
- 5/sunja/susai
- 6/ninggun/ninju
- 7/nadan/nadanju
- 8/jakvn/jakvnju
- 9/uyun/uyunju
- 10/juwan
10進法というのは比較的新しい概念のため口語的に用いられれば用いられるほど固有数詞にはイレギュラーな形が残る。英語のeleven(oneteenではない)などは12進法の名残だと言われているようだ。フランス語の80以降の特殊な数え方(4つの20と1とか4つの20と11などと数える)なども有名だ。
それにしても韓国語の数は覚えにくい。なんとか数字を覚えることができたとしてもとっさに言われるとよくわからないという人も多いようである。