Twitterで生活保護についての情報が流れてきた。持ち家があっても利用できるのだという。将来、持ち家を持っているせいで生活保護をもらえない下流老人が増えるだろうという観測をテレビかなにかで聞いたことがあったのでびっくりした。
もし、持ち家がとても豪華なら「売れ」といわれるそうだが、平均の家の場合にはそのようなことは言われないのだそうだ。ただし、ローンがある家の場合には受け付けられない。また65歳以上の高齢者はリバースモーゲッジを組めといわれるそうである。これは2007年から始まった制度だそうだ。高齢者で生活保護を受けるということは扶養してもらえないということだ。相続人がいないわけで、どっちみち家は国のものになる。だから、まあこれは仕方のないことかもしれない。
生活保護は役所の窓口でブロックされるという話をよく聞く。この場合、弁護士や地域の法律家ネットワークに助けを求めることができる。弁護士を頼んでも依頼人に費用はかからないのだという。「日弁連委託援助業務」というものがあるらしい。
法律家ネットワークの話によると「事前にアドバイスを貰うだけ」で問題が解決する場合も多いそうだ。何よりも「いざとなったら相談するところがある」ということを知るだけで安心感が増すという声も多いのだという。ただし、逆に弁護士がついたからといってすべての問題が解決するというわけでもないらしい。中には「がっかりした」という相談者もいるそうだ。法律家のネットワークは手弁当らしいので「がっかりした」と言われては心外だろうなと思う。
当座の困窮者の問題は解決しそうだが、問題も多い。現在の生活保護カバー率は20%程度だという話がある。現在の生活保護支出額は4兆円に届かないくらいだが、資格者全員にいきわたると20兆円くらいになってしまう。地方財政は直ちに破綻するだろう。
非正規雇用が40%を超えたということなので、近い将来国民年金の受給者が増えることが予想される。国民年金は月5~6万円だから、働けなくなった高齢者のほとんどが生活保護の有資格者ということになる。年金を増やしたいのは山々だが、これも国庫支出が大きな割合を占めるものだ。どっちみち国家財政は破綻する。
生活保護は健康保険と連動している。生活保護が増えると国民健康保険や介護保険の被受給者は減るので、保険料は高騰するだろう。すると、保険料をまかなえない人が出てきてさらに生活保護への移行が進むことが予想される。
リバースモーゲッジで家を担保にすることはできる。しかし、人口が減りつつあるので、地方に売れない家の在庫が増えることは容易に予想される。金融会社は地方から手を引くだろう。これを地方自治体が引き受ければ、地方自治体は空き家を大量に抱えることになる。これを金に換えるためには更地に戻さなければならないが、家の解体には数百万円の費用が必要になる。更地にしたからといて売れないかもしれない。今でも空き家問題は地方(といっても、東京近郊にも空き家に悩む地域は多い)にとって深刻な問題なので、これがさらに深化することを意味している。
将来的には問題がある一方で、生活保護制度を正しく運用することで防げる問題も多い。最近も亡くなった夫のなきがらを放置したままで「死体遺棄」と「年金不正受給」の罪に問われた妻がいた。もし生活保護が受けられることを知っていればそんなことにはならなかっただろう。高齢になった子供が亡くなった親を放置したままにして年金を受け取ったという事件もある。生活保護への認知が広がればこうした事件は防げる。
インターネットがあれば「生活保護は誰でも受けられる」という知識を得るのは難しくない。しかし、たいていの場合はネットもPCもぜいたく品だろう。知り合いの数が限られるに違いない。こうした知識からの孤立の方が貧困よりも大きな問題なのかもしれない。