今日のTwitterネタ。日本では長く車を使っていると税金が高くなるのでけしからんという趣旨のブログ記事を読んだ。「日本は物を大切にしない国になってはいけない」というのだ。
個人的には、日本で車を買う気にはなれない。アメリカで車を持っていた経験があるのだが、そもそも日本は税金が高すぎると思う。アメリカの経費はガスタグ(定期チェックしてナンバーを更新してもらう)と保険だけなのだが、日本ではそれだけでは済まない。アメリカで乗っていた車は1977年製造のビートルである。12万円で買って8万円で売った記憶があるが、途中でマフラーが落ちた。それでもガスタグチェックには引っかからなかった。
日本では車は贅沢品の扱いだ。にも関わらず多くの人が個人の車を所有している。
日本では軽自動車がよく売れているらしいのだが、この傾向が続くかどうかは分からない。軽自動車は政府の政策に左右される側面があり、車メーカーは「軽自動車頼み」にならないようにバランスを取っているそうだ。
では、軽自動車の税金が高くなったら、人はどうするのだろうか。おとなしくもっと高い車を買うのか。実際にはそうならない気がする。
消費者は別の手段で車の購入資金を抑えるのではないだろうか。そもそも国民所得は低くなってきており、社会保障費が上がるという長期的なトレンドがあるのだから、車の購入そのものを手控えることになるだろう。特に都市部ではそれが顕著に現れるはずだ。いわゆる「若者の車離れ」というやつだ。友達が車を持たなくなれば自分も必要がなくなる。顕示消費ができなくなるからである。
仮に車が必要な場所に住んでいたとしても安い車が売れることになるだろう。ではメーカーはどのように車の値段を下げるのか。
軽自動車の会社はシェアを上げるために、新車を買いとって中古市場に流しているそうだ。中古車マーケットは組織化されてきており、オークション形式で値段が付くようになっている。つまり、税金を上げると新車が売れなってしまう。廃棄処分の費用も考えると、適当な年次の車を中古で乗り換えるということになるだろう。
メーカーが維持できなくなった車を廃棄するとは思えない。国内で人件費をかけて廃棄すると高くつくからだ。すると規制のもっと緩やかな国への輸出が始まるだろう。日本車は丈夫なので海外でも立派に走るに違いない。すると新興国の新車需要を押し下げることになる。
この傾向が続くと「若者の地方離れ」が加速するだろう。「車での生活が維持できない」ということになれば、若者は地方に戻れなくなる。東京圏の政令指定都市でも近郊部では車がないと生活ができない地域があるが、真っ先に空洞化するのではないだろうか。これは地方にとって深刻な問題だ。
現在地方自治体の首長が「安い車を売れ」と政府に要求することはない。税金が上がったとはいえ、まだ許容範囲なのだろう。もし、アメリカの要求に従って安い軽自動車が提供できなくなったときには政治問題化するかもしれない。地方にとっては死活問題だ。
現在審議が止まっているTPPが通れば、日本は政策オプションとして軽自動車優遇ができなくなる。小さな車を作るのが不得意なアメリカの自動車メーカーにとって軽自動車は非関税障壁だからである。一方で、軽自動車が売れなくなったからといってフォードやGMのピックアップトラックが売れるということもないだろう。日本の狭苦しい駐車スペースにフォードは駐車できない。
そのうち地方から突き上げられ、アメリカの車も売れないという時代が来るのかもしれない。