ネットの情報は信頼に値しないガセネタばかりなのか

よく、ネットの情報はガセネタばかりだから気をつけるべきだなどという人がいる。だが、実際にガセネタを流しているのはマスコミの方らしい。いくつかの事例がある。

安倍首相はクルーグマン教授を呼び世界の経済情勢について話を聞いた。話はすべてコンフィデンシャルだとした上で「観測」という形で「消費税増税は延期すべきだという話になった」と漏らしたようだ。マスコミはそれを鵜呑みにして「クルーグマン氏が消費税増税延期を示唆」などと伝えた。TVでは今でもそういっている。

だが、これが正確ではないことはよく知られている。クルーグマン氏本人がやり取りをネットで公表してしまったからだ。クルーグマン氏は「財政再建よりも支出の拡大を」とは訴えているが、消費税増税を延期しろとは言わなかったようだ。だが、記者クラブから排除されているタブロイド紙を除いたマスコミは本人の発表を無視し「クルーグマン氏は消費税増税するなと言った」という話を伝え続けている。

ネットがなければ、クルーグマン氏が独自見解を発表する事はできなかっただろうし、これほどまでに浸透しなかったかもしれない。だが、Twitterのおかげで個人でも簡単に情報を拡散することができるようになったのだ。

週刊誌が乙武氏の不倫疑惑を伝えた。この件について山本一郎氏はこれは松田公太参議院議員の一派がリークしたのだと指摘した。もともと乙武氏は元気会に接近していたのだが、元気会が政党要件を失ったことで見限ったというのだ。これをTwitterで見て「松田さんも裏では姑息なことをやっているなあ」と思った。乙武氏がいなくなれば東京からライバルが一人減るからである。

ところが、松田氏は自身のブログで「法的措置を検討」と息巻いている。法的な対応を考えているとTwitter上で発表した。証拠がないのだから訴えられれば負けるだろうという識者まで出てきた。選挙前になるとこうした情報が錯綜することになる。大抵は町の噂レベルで終るのだが、インターネットが出現した事で、全国が一つの村のようになった。ネットがなければ、この噂が広まることもなかったかもしれないが、双方の意見を聞く事もできなかっただろう。

最後の事例は、意図的な編集である。権力から独立しているべきマスコミがかなり偏重姿勢を強めていることが分かった。

日本テレビは「民進党の岡田代表が消費税増税をスケジュール通りに実施せよと主張している」と伝えた。次の日のネットには「岡田代表は今度の選挙で勝つつもりがないのだ」とか「岡田さんは狂ったに違いない」とのの嘆きの声が渦巻いていた。

ところが、これはテレビ局側の恣意的な編集だったようだ。この発言は「そもそも増税できる環境が整っていない」と続いている。岡田代表は都合良く発言を切り取られないように結論を最初に言うことを心がけるべきだろうが、選挙で不利になるような印象操作をしようという魂胆はあまりにもあからさまだ。ネットがなければ情報が一人歩きしていたかもしれない。

「政治家やマスコミは正しい情報発信を心がけるべきだ」と書いてドヤ顔で閉めたいところなのだが、選挙前になるとどうしてもこうした「怪情報」が一人歩きする。選挙管理委員会は個人が怪情報を出すことに神経質になっているが、実際に発信汚染を作っているのは、政治家本人やマスコミとその関係者たちだ。

「マスコミ」は政治家の発言ををそのまま垂れ流すか、週刊誌の騒ぎを後追いするための装置になっている。そもそも二次情報なので正確さを求めるのは無理というものだろう。

「有権者はメディアリテラシーを持って接するべきである」とも結論づけたいところだ。なんとなく考えて解決したような気分になれるからである。しかし、そもそも元の情報が間違っている(あるいは意図的に切り取られている)わけだから、リテラシーの持ちようがない。

結局、多くの人は信じたいものを信じることになるのだろう。これでは議論がかみ合うわけはない。心或る人が「これではいかんのではないか」などと思わないのだろうか。

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