トランプ氏のツイートを見て、いろんな意味でちょっと背筋が凍った気がした。普段は安倍政権に対する文句とゆるいつぶやきで満たされているタイムラインで背筋が凍るような経験をすることはなかなかない。
Many people would like to see @Nigel_Farage represent Great Britain as their Ambassador to the United States. He would do a great job!
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2016年11月22日
このツイートを見ても一瞬意味が分からなかった。ナイジェル・ファラージといえばイギリスがEU離脱を決めた時に「有る事無い事」を吹き込んで離脱派を煽った前科がある人だ。最終的には「もう知らない」と言って党首をやめたのだが、後継者がいないという理由で党首に復帰したようだ。
その人がイギリスの駐米大使になればいいのにと言っている。一瞬「大使が決まったのか」と思ったのだが、そんなニュースはない。つまり、トランプ氏は(認証アカウントとはいえ)プライベートのアカウントから、イギリスに「大使はこの人がいいな」という「ツイッター辞令」を出したことになる。
イギリス人はプロトコルにうるさい国民として知られているわけだし、そもそも内政干渉になりかねない。もし、同じように日本の大使をトランプが指名したらきっと大騒ぎになるだろう。日本人はアメリカの意向を気にするから「向こうからのご指名があるわけだし」という話になりかねない。独立志向が強い(日本はアメリカの属国だからよいとして、イギリスはもともと宗主国なのだ……)イギリス人がこれを許容するとは思えない。
ファラージ氏はいち早くトランプ支持を表明していたという。そういう義理を大切にる人なのだろうということはよく分かる。安倍さんのように後から支持を表明したような人は、外様大名みたいな扱いを受けることだろう。この内と外を分ける感覚はわかりやすく発揮されている。多分、本気で指名しているわけではなく、ファラージ氏を喜ばせるジェスチャー(相手を喜ばす行為)だった可能性はある。
最近共和党の重鎮たちはトランプ氏に対して「ツイッターでの発言を控えるべきだ」と諌めていたようだ。それはアメリカ大統領の発言は国際紛争や金融などに大きな影響を与えるからである。
現に、今朝方ツイッター経由でビデオを発表し、その中にTPPから撤退するという発言が含まれていたために、日本の政治家やマスコミは大騒ぎになっている。これはあらかじめわかっていたことであり「まあ、かわいいな」などと思っていたのだが、同盟国のプライドを平気で踏みにじるようなことをする大統領は早晩大きな問題を起こすに違いない。下手をしたら、Twitter辞令で国際紛争勃発みたいなこともあるかもしれない。