また、いつもの無益な言い争いが始まった。オスプレイが墜落したらしい。それが「不時着」だと説明されたために、オスプレイ反対派が「あれが不時着だったら、御巣鷹山の事故も不時着だ」と騒ぎ出した。それを聞いて体制に乗って安心したい人たちが「左翼が騒いでいる」と騒ぎ出す。おきまりのコースだ。
死者はなく2名が怪我をしただけだったのだが、政府はことの重大性を認識しているようで、事故原因が究明されるまではオスプレイを飛ばさないようにと要請し、安倍首相は「重大事故」と表現したらしい。
英語のニュースではクラッシュと表現されているので「あれは不時着ではなく……」という非難が出るわけだが、意外なことに英語には不時着に当たる言葉はない。コントロールが利かずに落ちたというか、落ちたがなんとかコントロールしたという説明的な言い方になるようだ。そして、墜落事故でもコントロールが効いていれば日本語では「航空機不時着」と訳すことが多いようだ。中には死者が出ているのに「不時着」と表現されているケースもある、だが、全くコントロールを失って墜落したなら「墜落」で、誰かが落としたなら撃墜となる。大韓航空機はソ連に撃墜された「撃墜事件」と内部から北朝鮮の工作員に爆破された「爆破事件」がある。「爆破事件」は爆破された時点でコントロールを失っているので「墜落した」と表現されるようだ。「ハドソン川の奇跡」はハドソン川に誘導したので「不時着水」とされるようだ。英語版ではクラッシュでなくグライド(滑空)とされている。
現在は原因がわかっていないのだから「不時着」とは言えないことになるのだが、日本語で墜落と言ってしまうと「コントロールがきかずに落ちた」ということになるわけで、それは避けたかったということなのだろう。
不時着した結果として機体がバラバラになるということも考えられるので、必ずしも不時着とバラバラが相反するとも言えない。(その後、不時着を試みたが大破というわけのわからない表現になったテレビ局もある。)
なんとかコントロールできたとすれば海ではなく陸に落ちるのではないかとも考えられるし、逆に周辺に適当な場所がなく(本島南部で落ちたら市街地に突っ込むことになる)わざわざ海に落ちたということもあり得る。だが、それはこれからの調査によるわけだし、そもそもちゃんとした結果が国民に知らされるかはわからない。
こうした混乱が起こるのは、日本語に強力な造語能力があるからだ。見出しには漢字が使われることが多く「オスプレイが落ちた」という見出しは作りにくいのだが、実際に言えるのはそれだけだということになる。
今の時点では「コントロールを失って落ちたに決まっている」という人と「いやコントロールはできていたはずだし、そうあってほしい」という人がいるわけで、どちらもフェイクニュースということになってしまう。